発酵愛好家のバイブル!『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』発売

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発酵食品の歴史の解説書として、または、発酵食品の辞書として、さらに、最新レシピ集としても大活躍! 世界中の発酵食品を網羅した、発酵愛好家のバイブル『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』(パイ インターナショナル)が発売されました。

『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』(パイ インターナショナル)

『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-(株式会社パイ インターナショナル)』
『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-(株式会社パイ インターナショナル)』

著者は、2018年に日本語訳版『サンダー・キャッツの発酵教室』を出版した、マイクロ出版社/編集ユニットのferment booksさんと、麹料理研究家・イラストレーターのおのみささん。
今回は、『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』の発売を記念して、ferment booksのワダヨシさんとおのみささんにお話を伺いました。

ferment books

発酵や食の本を中心に手がけるワダヨシ、和田侑子からなるマイクロ出版社/編集ユニット。『サンダー・キャッツの発酵教室』 『味の形 迫川尚子インタビュー』を出版。『台湾レトロ氷菓店』(グラフィック社)『クラフトビール革命』(DU BOOKS)などの翻訳、編集も担当する。社名のferment は発酵する/沸き立つの意味。
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おのみさ

麹料理研究家・イラストレーター。味噌づくりをきっかけに麹菌のおもしろさに目覚め、2010年に『からだに「いいこと」たくさん 麹のレシピ』(池田書店)を発刊。その後『麹巡礼 おいしい麹と出会う9つの旅(集英社 2013年)』など、麹関係の本を計5冊発刊している。最近は麹菌だけではなく、乳酸菌、酵母菌、酢酸菌なども研究中。ブログ【糀園】にてコミックエッセイ『ゆる菌活』を連載中。
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『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』出版のきっかけ

どのような想いや経緯で出版に至ったのかを教えてください。

著者の出会いは、全米ロングセラー「天然発酵の世界(Wild Fermentation)」の著者であり、発酵食ブームの火付け役、サンダー・E. キャッツ氏のワークショップ

ワダヨシさん(以降、ワダ):大豆に限らないさまざまな材料(ヒヨコ豆、キドニービーンズ、小豆、おから、パンなど)と麹、塩をジッパー付き食品保存袋に入れて作る、手軽で自由なホームメイド味噌にハマって、ワークショップまで開いたことがありました。
同時期に、東京で開催されたサンダー・キャッツさんのザワークラウト・ワークショップに参加したら、質疑応答で味噌づくりの話になったんです。キャッツさんも大豆に限らない様々な豆類でお味噌を作ると言っていました。
さらに、ゲスト登壇者の生江史伸シェフ(レフェルヴェソンス)は、柚子を絞った残りの皮を麹と塩で発酵させているそうで、発酵の実験は面白い!と再認識しました。
これが書籍の企画にならないかと思いつき、自由な発想で作るホームメイド発酵食品のレシピを掲載した書籍の企画を提案するため、材料を携え実際に出版社の編集部まで出向いて担当者にデモンストレーションしたんです。残念ながら、その企画はボツになりましたが、それが縁で発酵本の企画が別の方向に発展し、今回のかたちでの出版に至ったんです。

おのみささん(以降、おの):ワダさんとは、サンダー・キャッツさんのザワークラウト・ワークショップで知り合いました。以来、マニアックな発酵話で盛り上がって急速に仲良くなり、その流れの中でこの本の企画の話をいただき、「おもしろそう!」と思い、参加しました。

乳酸菌の基礎知識(『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』より)
乳酸菌の基礎知識(『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』より)

『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』の内容(目次・構成)

一般的な食品関連の辞典や書籍の場合、調味料、肉、魚、など、食品ジャンルを基に構成されているものが多いように思います。そのような中で、『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』では、世界や日本の発酵食品、麹、発酵職人の仕事現場、世界年表、レシピなど、発酵食品について知りたいこと(いや、もはやそれ以上のこと)が網羅されていて、辞典や歴史の解説書、レシピ集や読み物としても大いに楽しむことができました。
「麹」の紹介や、発酵職人の「仕事現場」に大きくページを割いた理由や、一般的な辞典の形に縛られない構成となった理由を教えてください。

麹は日本の国菌。麹が日本の食文化におけるキーアイテムであることを伝えたかった

ワダ:麹を独立した章で扱うことで、麹が日本の食文化におけるキーアイテムであることを読者に印象づけたかったんです。
また、共著者の麹料理研究家・おのみささんは、日本中で塩麹ブームが盛り上がった時期に、『からだに「いいこと」たくさん 麹のレシピ』や『毎日がたのしくなる 塩麹のおかず』などを出版され、それらが多くの方に読まれていたこともあり、大きくページを割いて紹介しました。
発酵職人の「仕事現場」については、辞典的な解説では触れることのできない、つくり手の存在感や、醸造所の光景や雰囲気を紹介することで、発酵食文化のリアリティを表現したかったので、これも独立させた一章として設けました。

おの:最初は「麹だけでこんなにたくさん書けるかな?」と思いましたが、麹は日本の国菌ということもあり、ストーリーがたくさんあるので、存分にアピールできました。麹も喜んでいると思います。

『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』の装丁

書店や自宅の本棚でも目を引く大きめのサイズで、とても見やすく、手触りも気持ちがいいので、何度でも手に取って開きたくなります。装丁のこだわりなどを教えてください。

素敵な装丁はもちろん、中面も自由なデザインやレイアウトで構成されていて、とても見やすく、楽しいつくりに

ワダ:版元のパイ インターナショナルから『ワインは楽しい!』『コーヒーは楽しい!』などの「イラストで読む」シリーズの翻訳書が出版されており、同シリーズと書店で並べて置いてもらえるような仕上がりを目指しています。

おの:単調なレイアウトにならないように心がけました。サイズが大きいので麹菌のイラストをドンと大きくしたり、酢の紹介ページでは大きな酢の瓶を描いてもらったりと、いろいろ遊べたのも楽しかったです。

麹のプロフィール(『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』より)
麹のプロフィール(『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』より)

『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』のイラストやデザイン

麹料理研究家であり、イラストレーターでもある、著者のおのみささんを始め、『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』では、複数人のイラストレーターさんがイラストを描かれています。(ものすごくかわいいです)
イラストのテーマや、デザインのポリシーなどについて教えてください。

おのさんを含め、作画担当者全員、食べることが大好き!「イラストがかわいい上に、美味しそうに見える」と評判

ワダ:今回の本は、おのさんを含む複数名のイラストレーターが作画を担当しており、イラストのテイストが一冊の中でブレないよう、作画上の技術的なすり合わせをしています。
また、おのさんを含め作画担当者全員、「食べることが大好き!」ということで一致していて、その思い入れがイラストのディテールに影響しているような気もします。実際、「イラストがかわいい上に、美味しそうに見える!」と言ってくれる読者の方が何人もいました。

おの:今回は、「複数人のイラストレーターがテイストをそろえていく」という作業となったので、最初は「目指すイラストの法則」のようなものが共有できるまで苦労しましたが、それがわかってしまえば、後はとても楽しい作業になりました。
描いている最中は、その対象物に気持ちが入り込んでしまうので、食べ物を描いているときはその味を思い出して、本当にお腹がすいていました(笑)。

『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』の制作において大切にしていたこと

『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』にかかった制作期間や、制作中に気を付けていたこと、大切にしていたものを教えてください。

発酵食品ビギナーの方にはわかりやすく、上級者の方にも発見があるようなマニアックな内容も盛り込む

ワダ:先ほど話に出た、出版社での味噌づくりデモから数えると、出版まで2年近くかかっています。長期間かかったのは、いろいろな事情がありまして、話すと長くなるので割愛しますが(笑)、発酵食品の初歩的な内容がビギナーにもわかりやすく書かれ、かつ、マニアックな内容も随所に盛り込むことで、上級者にも発見があるような編集を心掛けたつもりです。

おの:この10年くらいでたくさんの発酵関係の書籍が出版されているので、基本的なこと以外は、できるだけ、他の書籍にはあまり載っていないようなことを書こうと思いました。
例えば落語に出てくる「覚弥の香々(かくやのこうこ)」というぬか漬けや、みりんからつくられた「柳陰(やなぎかげ)」というお酒のことなど、この本ならではの情報も盛り込んでいこうと考えながらつくりました。

『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』の制作過程で大変だったこと、うれしかったこと

世界の魚醤(『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』より
世界の魚醤(『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』より)

『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』の制作過程で大変だったこと、うれしかったことを教えてください。

ワダ:資料の調査などで図書館に毎日通ったりしていたので、大変でしたが、楽しくもある作業でした。また、味噌蔵、ビールのブルワリー、ワイナリー、ナンプラー工場への取材も素晴らしい経験でした。
特に、ナンプラー工場への取材は、別の切り口でリトルプレスの『ナンプラーマン 魚醤男』としても発表することができました。タイのナンプラー工場について、『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』では図解として、『ナンプラーマン 魚醤男』では見学記の体裁でまとめました。両方読むと楽しいと思います!

また、僕が運営しているferment booksから出版した『サンダー・キャッツの発酵教室』の制作過程で知り合い、同書に日本語版特別記事を執筆いただいたおのみささんと、共著というかたちで再びコラボレーションできたことも良かったと思っています。

おの:私も、いつも図書館に、資料となる書籍を予約して、借りまくって読んでいました。と同時に、家の台所では、色んな発酵食品を仕込んでは発酵させる(失敗もたくさんしてる)という、発酵三昧の日々でした。
そんな中で、ferment booksさんから送られてくる原稿がまた面白く、とても刺激になりました。私にとっても、きっと読者の方々にとっても、今回のコラボレーションが良い作用をもたらしてくれると思っています。
また、山梨にある味噌蔵、ビールのブルワリー、ワイナリーの取材には、私の(原稿)担当ではないのに、お願いして同行させてもらいました。現地に行かないと感じられない雰囲気や香りや味も体験できて、それもとても楽しかったです。

『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』制作過程での気付き

『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』の制作過程での意外な発見や新たな気付きを教えてください。

人類の先祖は微生物。「菌に国境はない!」言葉は通じなくても世界中の発酵マニアと話ができるかも

ワダ:本書には「発酵ブックレビュー」の章があるのですが、そこで紹介している小泉武夫さん著『発酵』の冒頭には、発酵をつかさどる微生物が人類の登場のはるか以前、今から35億年も前に地球上に現れたことが強調されています。
また、サンダー・キャッツさんの『発酵の技法』には、「人類が発酵を発明したわけではなく、発酵こそが人類を生んだのだ」という意味の一節があります。
人類の先祖は微生物と言えるわけで、地球上の生命としては人間を含む動物などより微生物のほうが全然先輩なんです。この二冊の響きあう部分が印象的だったので、『発酵はおいしい!』掲載の「発酵世界年表」は「35億年前 地球上に微生物が登場」から始めることにしました。最後は「2019年 『発酵はおいしい!』が発刊」です(笑)。

発酵世界年表(『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』より)
発酵世界年表(『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』より)

おの:発酵食品というと、麹を使った日本の調味料などを思い浮かべていましたが、ferment booksさんが書かれていた世界の発酵食品の話を読んで、私の中の発酵の世界がぐんと広がりました。
よく「音楽に国境はない」と言いますが、「菌に国境はない!」と思います。言葉は通じなくても世界中の発酵マニアと話ができそうな気がしています。

『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』の反響

ワダ:『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』掲載の発酵レシピを実際につくってインスタに写真をアップしてくれる方や、イラストがかわいくて内容も面白いと言ってくださる方、子どもに読ませたいと言ってくださる方、また本を読んでferment booksの活動に興味を持ってくれた方など様々です。
また、本屋さんが『サンダー・キャッツの発酵教室』や『ナンプラーマン』と並べて展開してくれ、SNSなどにもその様子をポストしてくれるなど、本を売る人の反応にも感謝しています。

発酵シロップの作り方(『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』より)
発酵シロップの作り方(『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』より)

おの:イラストでの展開が、多くの方に親しまれたように思います。また、知り合いの編集者さんが「オレがこの本をつくりたかった!」と言って悔しがっていた、というのを聞いて、ちょっと嬉しかったです(笑)。

『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』の活用法

『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』の活用法には、どのようなものがあるのでしょうか?

発酵DIYを楽しんだり、興味のあるジャンルを見つけて専門的な本を読み込んだりなど、発酵沼にハマってほしい

ワダ:『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』掲載のレシピを参考に発酵DIYを楽しんでいただくのもよいですし、この本から興味のあるジャンルを見つけて、さらに専門的な本を読み込んでいくなど、活用法は読者の方一人ひとりにとって、さまざまにあると思っています。

おの:どこから読んでもいい本なので、気が向いた時にパラパラとページをめくって読み始め、気付いたらどっぷりと発酵の世界にハマっていた…というのも楽しいと思います。さらに「これならつくれそう!」と思えるレシピがあればチャレンジしてみて、さらに発酵沼にハマっていく…という感じが理想でしょうか(笑)。

『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』に興味を持ってくれた方や、ハッコラユーザへのメッセージ

ワダ:発酵、と一口に言っても、各地の文化、料理、科学、歴史、あるいは発酵食品を求めて行く旅の楽しみなど、さまざまな領域へつながっていく要素を持っています。そういった発酵の懐の深さを感じてもらえたらうれしいです。

おの:発酵食品というと「つくるのが難しそう!」と思っている方や、「体に良いから食べなきゃいけない!」という堅苦しい使命感を感じている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、落語に出てくるぬか漬けのように、もっと日常的に、気楽に付き合っていけたらいいなと思っています。その気楽さを持って、世界の発酵食品ともつながることができたら、とても素敵な事だと思います。

発酵愛好家のバイブル!『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』

『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-(株式会社パイ インターナショナル)』
『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-(株式会社パイ インターナショナル)』

書名:『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』
著者:ferment books/おのみさ
仕様:B5判変型(240×190mm)/ソフトカバー/196Pages(Full Color)
定価:本体2,400円+税
I S B N:978-4-7562-5112-1 C0077
発売日:2019年12月18日
発売元:パイ インターナショナル

発酵愛好家のバイブル!『発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-』目次

納豆や味噌、ワインにビール、そしてチョコレート! 身近なものから、意外なものまで、世界は美味しい発酵食品であふれています。パンや酒などの身近な食品から、アジア各国で作られている様々な魚醤やイヌイットのつくるキビヤックなど、世界中の発酵食品約250点をイラストで解説。家庭で簡単に「醸せる」レシピも約60種類掲載。この1冊で発酵生活が最高に楽しくなる!

Chapter0 発酵ってなんだろう?

Chapter1 世界の発酵食品

酒、乳製品、酢、漬物、世界の納豆と味噌、魚醤、茶、チョコレート、コーヒー、肉の発酵食品、くさい発酵食品など。

Chapter2 日本の発酵食品

日本酒、味噌、醤油、鰹節など身近な発酵食品から、碁石茶、かんずり、ふぐの子の糠漬けなど地方特産発酵食品まで。

Chapter3 麹はたからもの

日本発酵文化のシンボル「麹」の働きを解説。

Chapter4 発酵の仕事場拝見

味噌、ビール、ワイン、ナンプラーの醸造所を訪問。

Chapter5 発酵世界年表

紀元前から現代まで。人類が醸してきた発酵の歴史。

Chapter6 つくろう!発酵食品と発酵料理

パン、漬物、酢、ソーダ、味噌など家庭で手軽にできる16レシピ

Chapter7 発酵ブックガイド

文化、料理、科学、歴史と深くかかわる発酵関連書籍を紹介。

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