アフリカ・サハラ砂漠以南の地域には、古くから発酵食品がありました。厳しい自然条件のなか、食料の収穫と貯蔵は生きていくうえで重大な問題だったからです。たとえば狩猟のために長期間移動するには、持ち運びできて、栄養価の高い食品が必要でした。
この地域での発酵食品づくりは、ヨーロッパのような細かい手法を取りません。精巧な道具や技術、設備は不要。手早く、簡単で、実用的です。
ただ、果物や野菜の発酵食品をつくるのには素晴らしいやり方なのですが、魚や肉を発酵させるのには向いていません。食品を安全に保存するには、発酵のほかには燻製や塩漬けが適しています。しかし仮住まいや貧しい街では都市基盤が整っておらず、塩もしばしば屋外に山積みにされ、清潔とは言えません。そして肉を乾燥させるために吊るして干しておく設備もなく、地面に平らに置いてあります。
飲みものからお粥、パンまで、穀物はアフリカの発酵食品によく使われています
アフリカの発酵食品の原料として、もっとも使われているのはトウモロコシとキビです。ただしトウモロコシは、北米やヨーロッパ、日本で栽培されている甘くて柔らかく、粒の小さな種類ではなく、より大きな粒で、甘くなく、白っぽいのトウモロコシが使われています。
キビはいろいろな植物のタネで、アフリカ大陸の南部で育つ500種類以上の植物のタネがブレンドされて売られています。乾燥と害虫に強く、1年間に2回収穫できるため、この地域に広く根付いています。
一方、キビは動脈硬化を予防する働きがあるなど健康食品として注目され、また最近では流行りのグルテンフリー食に使われるようになり、欧米ではこれまでは家畜の飼料として使われていたのですが、小麦粉の代用食として、消費量が急速に増えています。
クーコ、アクマ、オジ、ウジなどと呼ばれるアフリカの発酵粥
穀物を煮てお粥を作ることは、新石器時代に人類が穀物を焼くようになる前から広く行われていました。お粥には様々な呼び方がありますが、ガーナの「クーコ」、ナイジェリアの「アクマ」「オジ」、ケニアの「ウジ」は同じものです。乾燥トウモロコシまたは乾燥キビを細かく挽き、2〜3日間、水に浸して室温で発酵させます。濾して、水分の多い生地にし、さらに発酵させます。これを水で溶いてかき混ぜ、濃い粥にします。トウモロコシとキビを両方使ったり、香料を加えるなど、地域によって異なりますが、朝食の定番です。子供向けには水を多めにします。ハチミツとシナモンを加えた甘いものや、ショウガ、クローブ、唐辛子を入れたスパイシーなものもあります。
Mahewu、南アフリカの発酵飲料は”アフリカン甘酒”!?
Mahewu、Mageu、またはamaRhewuは、暑い季節に飲む、トウモロコシと水で作られた爽やかな発酵飲料です。炭水化物が多いのでエネルギー源となり、ビタミンB群も豊富です。南アフリカでは非常に一般的な飲み物で、最近までは家で作られていました。今では食料品店で販売され、いろいろな味の商品があります。ビタミンやミネラルを追加し、粉末状にしたものもあります。
Mahewuは、トウモロコシのお粥から作るのが最も一般的です。お粥に水を加え、鍋にいれて一晩置けばできあがります。Mahewuは”アフリカン甘酒”とも言えるかもしれませんね。
アマシ、ズールー族の伝統的なヨーグルト
アマシは南アフリカで人気があります。牛乳を発酵させてつくるので、カッテージチーズやリコッタに似ていますが、ヨーグルトのような風味があります。以前は、中をくり抜いて乾燥させたかぼちゃやひょうたんの中に入れて作られていました。これらの容器に牛乳を入れ、牛乳が固まるまで、時々静かに振って発酵させます。容器の下の方には穴が空けられており、上澄み液はそこからお粥にかけます。容器は洗わずに使い回します。容器に残った菌が、発酵に欠かせないからです。
ダワダワ、西アフリカの味噌? 納豆?
スンバラ、ダワダワと呼ばれる発酵食品で、イナゴマメで作ります。ネレ、ビッグロボローザともとも呼ばれます。ガーナが代表的ですが、西アフリカで広く作られています。イナゴマメは、雨季に収穫します。最近では、森林の減少とともにイナゴマメも減っており、代わりの豆が使われることもあります。
イナゴマメは鞘から取り出し、洗って乾かします。もう一度洗ってから煮ます。煮た豆を取り出して広げ、布で覆って数日間放置した後、もう一度煮たあと、叩いて砕き、容器に入れて発酵させます。最後に、それらを小さなボール状に丸めて乾燥させます。完成すると、チーズのような強烈な匂いがします。ダワダワは通常スープやシチューに加えますが、米と調理したり、肉や魚料理の味付けに使うこともできます。
日本の納豆に近い匂い、との評もありますが、調理方法などは味噌のほうが近いようです。
この記事は、ガーナの「The Wulomei Dance Company」の曲を聴きながら書きました。寒い雨の朝でしたが、明るい気分になりました。ではまた次回。
元記事/Simply African Fermentation
翻訳/haccola編集部