継往開来を重ねる窯元、山源陶苑『TOKONAME』の甕(かめ)がある発酵生活

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微生物をこよなく愛する発酵料理研究家で、カメラマンでもある、茉莉花Groenさん。アムステルダム在住の茉莉花さんは、発酵文化などを通じて世界と日本の橋渡しをする活動を行っています。今回は、発酵食を仕込む容器として愛され続ける、常滑焼の「甕(かめ)」について、茉莉花さんに紹介してもらいます。


常滑焼の窯元「山源陶苑(やまげんとうえん)」のブランド『TOKONAME(とこなめ)』の甕で仕込んだ味噌
常滑焼の窯元「山源陶苑(やまげんとうえん)」のブランド『TOKONAME(とこなめ)』の甕で仕込んだ味噌

日本六古窯(にほんろっこよう)のひとつ、常滑窯(とこなめよう)の「常滑焼(とこなめやき)」

平安時代末期から安土桃山時代を代表する6つの窯業地「日本六古窯」。その中でも最大級の規模と言われる常滑窯の「常滑焼」は、愛知県常滑市とその周辺を含む知多半島内で作られています。

発酵食を仕込む容器として愛され続ける、常滑焼の「甕(かめ)」

900年を越える歴史を持つその素材と製法で作られる常滑焼の甕(かめ)は、あらゆる発酵食、保存食を仕込む容器として、時代を越えて長い間愛されてきました。
常滑焼が飛ぶように売れたという高度経済成長期も終末を迎え、今では甕を作る窯元は大幅に減ってしまいました。しかしそんな現代でも、創業当時から50年間、ひたむきに変わらない甕を作り続けている窯元があります。それが、「山源陶苑(やまげんとうえん)」です。

常滑焼の窯元「山源陶苑(やまげんとうえん)」のブランド『TOKONAME(とこなめ)』

「山源陶苑」とは、愛知県知多半島西側、伊勢湾を眺める常滑市でこつこつとその伝統を守り続けながらも、革新的なアプローチで常滑焼に息を吹き込む、まさに継往開来を重ねる窯元です。
山源陶苑の3代目陶主である鯉江優次(こいえ ゆうじ)さんは、デザイナーやフォトグラファーなどのクリエイターと共に常滑焼の伝統と職人の技術の更新にチャレンジする「TOKONAME(とこなめ)プロジェクト」の発起人でもあります。また、常滑市原松町に『TOKONAME STORE』を展開し、山源陶苑のブランド『TOKONAME』と『MOM kitchen』の製品販売や、器づくり体験のワークショップなども行っています。
今回は、『TOKONAME』ブランドの甕についてご紹介させていただきます。

『TOKONAME』の甕との出会い

そもそも私とこの甕との出会いは「発酵」でした。私はオランダのアムステルダムで、『Malicafe Organic Vegan Food』を運営しています。小さな台所から暮らしの発酵を取り戻したいという思いで、数年前から味噌の仕込みをはじめとした様々な発酵食、保存食、常備食を学ぶワークショップを開催しています。
山源陶苑の鯉江さんと出会ったのは、年に一度オランダで開催される「MONO JAPAN – Japanese Craft & Design」という日本のクラフトやデザインプロダクトに特化した展示・即売会でした。このイベントで、芸術性の高い日用雑貨と海外を繋げるサポートを行う『たくみクラフトワークス(Takumi Craftworks)』さんと私は、土鍋を使って炊くご飯、お味噌汁、麹由来の発酵食、お漬物のワークショップを行いました。その際に使用させて頂いたプロダクトの中に、『TOKONAME』のティーポットを中心とした「ティーファミリー」シリーズのカップがあったのです。

たティーファミリーのTOKONAMEカップ
「MONO JAPAN」での和食ワークショップの様子。お茶飲みに使用した『TOKONAME』の「ティーファミリー」シリーズのカップ

そして、その展示販売会場に販売用ではなくサンプルとして鯉江さんが持ってきていたのが、この『TOKONAME』の甕だったのでした。

常滑焼の『TOKONAME』の甕が、発酵食作りに適していると知る

『TOKONAME』の甕
『TOKONAME』の甕

出会った時は、とにかくその洗練されたデザイン、ただその形と色、艶、大きさに魅了され、なでなですりすりと触っていたのですが、よくよく話を聞くとこの甕が発酵に最適だということが分かってきました。

常滑焼の『TOKONAME』の甕が、発酵食作りに適している理由

甕に施された釉薬(ゆうやく)が、乳酸菌や酵母菌をカビ菌などから守る

釉薬とは、陶磁器の表面に光沢を出し、液体が染み込むのを防ぐために用いるガラス質の粉末のことで、「うわぐすり」とも呼ばれます。甕には、この釉薬が施してあり、内側外側の消毒がしやすく、主役の菌である「乳酸菌」「酵母菌」をカビ菌などから守ります。

甕内の温度を一定に保つことができる

暖められにくく冷めにくい性質をもっているので、温度を一定に保つことができ、菌が嫌う急激な温度変化から守ってくれます。

酸や塩分への耐久性に優れている

酸や塩分にとても強く、漬物・味噌・梅干し・ぬか漬けなどを作るのに最適です。

自然から取れる原料を使用し、釉薬も科学有害物質とは無縁で安心の『TOKONAME』の甕

『TOKONAME』の甕に使われている常滑の赤土には、粘土分が多く含まれており、しっかり焼き締まる性質があります。土は自然から取れる原料を使用しており、釉薬も環境ホルモンなどの科学有害物質とは無縁で安心。
焼成は750℃で素焼き、1200℃で本焼成。8時間かけてゆっくり1200℃に上げていくのだそうです。

デザインが今の暮らしによりフィットしているというだけではなく、きちんと発酵に向いていると納得のいく背景があり、安心して使えるところがとても魅力的です。

アムステルダムで、『TOKONAME』の甕で味噌を仕込む会を開催

私はさっそく頂いたこの『TOKONAME』の甕で2月に黒豆味噌を仕込んだのですが、秋には旨味も乗って、とてもおいしく出来上がりました。私が運営する『Malicafe Organic Vegan Food』の発酵塾に来てくださる皆さんも、うちに置いてあるこの甕が何なのか知りたがり、「これは広めるしかない!」と思い立ちました。そして、正式に『たくみクラフトワークス(Takumi Craftworks)』さんの助けを借りて、アムステルダムでこの甕に仕込む味噌の会を開催することとなりました。そのお約束を交わしたのが今年の4月。とんとん拍子で決まった話ですが、これには訳がありました。

作り手・伝え手・使い手が一緒になって、その土地の伝統を受け継ぎ、文化を共有していく『TOKONAME』ブランド

常滑焼を絶えず、また正しく認知してもらうためには、デザインだけでなく、流通の改革も必要である、と信じる鯉江さん。そんな彼が重きを置いているのは「伝えていく形」。昔のように「職人は作るだけで売るのは問屋」という分業制ではなく、作り手が売ることで、製品の本当の良さを直接発信していくこと。
都心の問屋にも勤めていた鯉江さんが必要だと考えるのは、限りなく消費者に近い位置に自分たちを置くこと。そして、職人と問屋と消費者のギャップを埋め、自分たちが良いと思うものを、自分たちで発信していくことでした。
私も使い手の一人として鯉江さんの考え方に感銘を受け、このワークショップを開催する運びとなったのでした。

『TOKONAME』の甕で味噌を手作り!「常滑焼の甕で味噌を仕込む会」inアムステルダム

「常滑焼の甕で味噌を仕込む会」inアムステルダム

こうしたご縁のお陰で、2017年の11月26日、『Malicafe Organic Vegan Food』の発酵塾で「常滑焼の甕で味噌を仕込む会」を開催させて頂きました。常滑から鯉江さんも駆けつけてくださり、オランダらしい荒れ狂った天候の中でもワイワイと賑やかな集まりとなりました。

当日、まずお味噌がどうやってできているのか、というお話から始まり、日本各地でどのようなお味噌が食されているのかをいくつか例にあげ、試食を挟みながら皆さんとお話していきました。

試食の味噌。左から、米糀味噌、ひよこ豆味噌、黒豆味噌、白甘味噌
試食の味噌。左から、米糀味噌、ひよこ豆味噌、黒豆味噌、白甘味噌

手作り味噌作り。まずは「塩切り麹」を作って大豆を潰す

お話のあとは、早速麹と塩を合わせて「塩切り麹」をつくり、大豆を潰していきます。今回は、3キロの味噌仕込みとあって、皆さん潰すのに結構苦労されていました。持ち物としてポテトマッシャーを持ってきて頂いているのですが、忘れた人は手で直接潰しており、その感触がまたとても気持ちいいと楽しんでおられました。

手作り味噌作り。次は「味噌球」を丸めて作る

手作り味噌作り。次は「味噌球」を丸めて作る

豆が全部が潰れたら、塩切り麹とよく混ぜて「味噌玉」を作っていきます。味噌玉を作る際に重要なことは中の空気をできるだけ抜くことなので、そこを注意して頂きました。空気の介入を減らすことで、カビの増殖が防げます。初めて味噌を仕込むと言いながら、とても器用に丸めていらっしゃる参加者の方も多く、たくさん積み上げられたキレイな味噌玉の光景は、素晴らしい眺めでした。

手作り味噌作り。いよいよ『TOKONAME』の甕に味噌玉を投げ入れる

手作り味噌作り。いよいよ『TOKONAME』の甕に味噌玉を投げ入れる

味噌玉ができると、今度はいよいよTOKONAMEの甕に味噌玉を投げ入れていきます。ここでも、空気を抜くようにぎゅっぎゅっと押し込むことがポイントになります。

手作り味噌作り。仕上げは、表面をならして塩を撒く

味噌玉を全部詰め終えたら、表面をならして塩を撒きます。今回は麹の量を多めに仕込んだので短期熟成で出来上がるお味噌なのですが、塩分濃度が低いため、持ち帰ったあとは冷暗所に保管し、時々カビが生えてないかチェックしていただくようにお願いしました。

手作り味噌作り。最後は発酵食の試食タイム

小豆味噌で作る南瓜のいとこ煮、白人参の杏味噌和え、根菜の味噌粕漬け、白菜のべったら風、ヴィーガンキムチ、ビーツの味噌煮、セロリの杏味醂和え、水キムチ

味噌の仕込みが終わったら、発酵食の試食タイム。今回は、小豆味噌で作る南瓜のいとこ煮、白人参の杏味噌和え、根菜の味噌粕漬け、白菜のべったら風、ヴィーガンキムチ、ビーツの味噌煮、セロリの杏味醂和え、水キムチをみんなで頂きました。

手作り発酵食に適した容器

ここまで紹介させていただいたTOKONAMEの甕ですが、もちろん他の容器でも発酵食品は作れます。容器には、それぞれの良いところがあり、その時々のニーズに最も合ったものを選択すればよいのだと思います。

ホーロー容器は、耐塩性・耐酸性に優れ、冷蔵庫での管理もラク

例えば、遮光、遮熱の点では陶器が一番ですが、ホーローもガラス質の釉薬を高温で焼き付けたコーティングで、耐塩性、耐酸性に優れています。温度が伝わりやすい、という点が漬物を作る際の弱点になることもありますが、冷蔵庫で楽に管理をする、といった場合には向いているといえます。

ガラス容器は、中の様子が見えやすいので初心者向けに〇

また、ガラス容器は、遮光・遮熱の点では陶器に劣りますが、中身が見える=発酵の様子が観察しやすいといった点で、初心者にも扱いやすく便利です。

日常の選択肢のひとつとしての『TOKONAME』

『TOKONAME』の甕の作り手である鯉江さんが「この『TOKONAME』が選択肢のひとつになればいい」とおっしゃるように、色々な用途に合わせて容器を選ぶといいですね。
私は、この甕でキムチを漬けましたが、匂い移りもなく、サイズ的にもすごくちょうどよく、冬に常温で野菜を漬けるのにぴったりだなと感じました。来年の夏は、毎年漬けている杏で作る梅干しをこの甕で漬けてみるつもりです。
みなさんも『TOKONAME』を発酵生活の仲間に取り入れてみてはいかがでしょうか?

↓『TOKONAME』の甕の購入はこちらから↓
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山源陶苑『TOKONAME』

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たくみクラフトワークス(Takumi Craftworks)

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MONO JAPAN – Japanese Craft & Design

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