日本の調味料といえば何といってもお醤油。案外、スーパーで何気なく買っていることも多いのでは?
醤油は製法や素材でその味は千差万別。人気料理家の宮川順子さんに毎日使いたい美味しい醤油と醤油の選び方などを教えてもらいました。
使わない日はない調味料、醤油。醤油の味がよいと素材の味が引き立ち、料理がぐっと美味しくなります。
料理家で「(社)MIIKU日本味育協会」代表の宮川順子さんの著書『料理嫌いだった私が「365日×15年」毎日台所に立ち続けた理由』では、昔ながらの製法でつくったこだわり醤油や調味料がいくつか紹介されています。
「料理に大切なのは、いい食材と調味料。塩、醤油、みりんだけは良質なものを揃えておくといい」と話す宮川さん。今回は、宮川さんに料理に醤油を使う際の注意点とおすすめの美味しい醤油をお聞きしました。
料理は食材から。良質の調味料でシンプルに
冷蔵庫の中にずらっと並ぶドレッシングやソース、市販の麺つゆなど調味料…。こういう家庭は少なくないはず。しかし、料理をするにはいろいろ調味料を揃えなければ、というのはちょっと違っているんです。
15年に渡って、無添加・手作り料理を作り続けている宮川さんは、「料理は食材選びから。なるべく無農薬、無肥料の野菜を。そしてもう一つ大事なのが調味料。みりんと醤油、塩は少し値段が高くても手間暇をかけた昔づくりのものを選びたいものです」と話します。
宮川さんが無添加100%の料理をするようになったのは、アトピー性皮膚炎を持つ息子さんの治療のため。医師から食事を通じて体質を変えることがたった一つの方法だといわれ、15年に渡って、息子さんのために料理をし続けました。その結果、高校を卒業するころにはほとんど治っていたのだそうです。
美味しい醤油選びはラベルチェックから!
おいしい醤油の条件、その一つはすばり原料。
「主な材料は大豆ですが、大豆が丸いのは当たり前で、丸大豆とは丸ごと大豆、大豆から油を取り除いたものが脱脂大豆という意味です。できれば有機栽培、国産なら安心ですね」と宮川さん。ラベルで「脱脂大豆」ではなく「大豆」であることをチェック!
次に、「醸造はタンクなのか樽なのかも大切。樽には長年受け継がれた無数の菌類が住み着いていて、微妙な空気の出入りがあります。菌類は樽ばかりでなく、その樽が置かれている室内にも多く存在しますので、それらの菌類の往来などによりタンク仕込みでは得られない独特の複雑な風味が醸し出されます」(宮川さん)。
静置発酵の期間は最低でも数か月、長いものだと2~3年です。静かにゆっくり熟成したものは、やはり味に違いがでるのだそう。
また通常の濃口醤油は、大豆と小麦でどろどろのもろ味を作り、そこに塩水を加えて熟成させたものですが、「塩水の代わりに醤油を加えて熟成させたものが再仕込み、二段仕込み、甘露などと呼ばれる醤油で、少ない量で濃厚な風味が特徴です」(宮川さん)。
魚と塩で作った魚醤もあり、鮎醤、鮭醤、海老醤、鮪醤など種類も豊富。「魚醤は動物性ならではの、うま味と風味が料理のコクを引き出すのに役立ちます」(宮川さん)。
こだわりが生む美味しい醤油5選
それではさっそく宮川さんおすすめの美味しい醤油をご紹介します。
1、フンドーキン 吉野杉樽 天然醸造醤油
名前のとおり、吉野杉で作った樽に、厳選された国産大豆、国産小麦、天日塩を仕込み、自然の温度でじっくり発酵させる。まろやかなうま味がある。
2、日東醸造 三河 しろたまり
愛知県産小麦と伊豆大島の伝統海塩が原料の薄口醤油。化学調味料・保存料を一切使わないのはもちろん、製造過程で火にかけない生の醤油。強いコクとほのかな甘みがよい。
3、ミツル醤油 生成り 濃口
福岡県糸島市の小さな醤油蔵。大豆、小麦、塩の全ての原料が九州産で、木桶で2年間熟成させた天然醸造醤油。シンプルな醤油造りに挑戦する若き造り手の渾身の一滴。
4、石孫本店 みそたまり
天然醸造の味噌を基に、米麹・天日塩を原料とした再結晶塩を加えて再仕込した、甘さを抑えてコクのある上品な味。醤油と同じようにおひたしや納豆にもよく合い、お吸い物、うどんのつゆにも。
5、丸綜 まぐろ魚醤 ぎょ
日本有数の漁港である鳥取県・境港産の天然本マグロと天日塩・麹にこだわり、マグロの内臓を独自の製法で発酵させ、旨味が凝縮させた魚醤。火を通すと香ばしく、煮込むと風味とコクが増す。
昔ながらの醤油は製法、素材へのこだわりが味の違いを生んでいます。宮川さんは、まずは卵かけご飯や豆腐などにかけて色々な醤油を試してみて、と話します。一滴の味の違いでも日本人の醤油への味覚は敏感。きっとその美味しさを実感するはずです。
【参考書籍】
宮川順子著『料理嫌いだった私が「365日×15年」毎日台所に立ち続けた理由』(ぴあ) 販売価格 1,512円