チーズは製造方法の違いにより、ナチュラルチーズとプロセスチーズに分類されるのをご存知でしたか?
今回は『チーズの科学 ミルクの力、発酵・熟成の神秘』の著者である齋藤忠夫先生に、ナチュラルチーズとプロセスチーズ、それぞれの特徴と健康的に食べるコツを教えていただきました。
科学的なアプローチからだけでなく、チーズをもっと楽しむためのエッセンスも満載です!
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乳酸菌が生きている!「ナチュラルチーズ」
「乳酸発酵をした後に高温での加熱処理をしていないチーズをナチュラルチーズといいます。チーズ中に乳酸菌が生きているため、時間と共に風味が変化するのが特徴であり魅力です」(齋藤先生)。
つまり、ナチュラルチーズを食べれば、生きたままの乳酸菌を体に取り入れることができるということですね! ということは、ナチュラルチーズは加熱しない方が良いのでしょうか? 乳酸菌が死んでしまっては健康効果が薄れるのでは?
乳酸菌が死んでしまっては健康効果が薄れるのでは?
「そんなことはありません。乳酸菌は死んでいてもその細胞壁の成分は壊れませんので、保健効果は生きています。また、チーズ中の乳酸菌の量はヨーグルトと比較すると、それほど多くはありません。
それから、基本的に、チーズに含まれるタンパク質や脂肪の栄養成分は、煮たり焼いたり……、通常の調理における加熱反応により分解したり散逸したりする心配はありません。何より、ほとんどのチーズは加熱調理した方が美味しくなります。せっかくなら、美味しくいただきたいですよね」(齋藤先生)。
「フレッシュタイプ」と「熟成タイプ」を美味しく&健康的に食べる方法とは?
世界には1000種類を超えるナチュラルチーズがあり、これらはさらに2種類に分類されるそうです。ぞれぞれ、どんな特徴があり、どうやって食べるのがおすすめか齋藤先生に伺いしました。
1つは、作ってすぐに食べられるフレッシュタイプです。
「瑞々しくあっさりとしていて、新鮮な乳の風味がするのが特徴ですね。カッテージやクリームチーズ、モッツァレラが代表的です。その他、フランスの学校給食で毎日出る、ヨーグルトにそっくりのフロマージュ・ブラン、ティラミスの素材として欠かせないマスカルポーネフレッシュタイプですね
低温でも高温で加熱しても栄養価は変わりませんから、お好みで美味しく召し上がってください。
フレッシュタイプチーズの食べ方
カッテージはサラダとして新鮮な野菜とともに、クリームチーズはクラッカーに載せていただくのが定番でしょう。モッツアレラは薄切りして真っ赤なトマトを交互に挟んだカプレーゼでよく食べられますが、加熱すると糸引き性となりますので、また新しい食感が楽しめます」(齋藤先生)。
もう1つは、寝かせてから食べる熟成タイプ。
「深みのある味わいが特徴で、乳酸菌やカビの組み合わせによって無数の味を作り出すことができます。代表的なのは、チェダー、ゴーダ、パルメザン、カマンベール、ブルーチーズが代表的です。
熟成期間にたくさんのペプチドや乳酸菌やカビによる生産物がチーズ中に増加していきます。したがって、美味しさだけでなく多くの保健効果が生まれます。
熟成タイプチーズの食べ方
日本ではこれらのチーズを切っておつまみとして食べるのが一般的ですが、手軽にチーズフォンデュなどで楽しんでみてはいかがでしょうか? 加熱すると溶けるチーズにコーンスターチなどを加えて少しずつ加熱して溶かし、そこにお好きなアイテム(パン、野菜、ソーセージやハムなど)をつけて召し上がってみてください。日頃日本人が不足しがちな、カルシウムの給源としては最高だと思います」。(齋藤先生)。
栄養を効率的に摂るなら「プロセスチーズ」
「プロセスチーズとは、ゴーダやチェダーなどのナチュラルチーズを原料に、乳化剤を加えて加熱・溶解させてから冷やして固めたものです。加熱殺菌により乳酸菌や各種の酵素は活性を失っているため、美味しさや香りが変わらない状態での長期保存が可能になります。
良質のタンパク質やカルシウム等の栄養成分が豊富に含まれています。実際、プロセスチーズは、戦地の兵士が栄養価の高い食品を安定して摂るために開発・利用されたといわれています」(齋藤先生)。
プロセスチーズの乳化剤は避けるべき?
「プロセスチーズは乳化剤を使っているので避けるべき!」なんて話も耳にしますが、乳化剤は安全なリン酸ナトリウムなどの塩類ですので全く心配は要らないとのこと。チーズは、ナチュラルであってもプロセスであっても、高い栄養成分を効率的に摂るのには適しているんですね。
チーズはどのくらい食べるのが体にいいの?
栄養のあるチーズですが、やっぱり食べ過ぎはNG? 1日あたりの摂取量の目安は、ナチュラルチーズとプロセスチーズ、それぞれどのくらいなのでしょうか?
「ナチュラルチーズもプロセスチーズも原料は牛乳ですので、基本的には、食べ過ぎても健康に影響はありません。ただし、何事にも常識的な量はありますよね。
食べ過ぎは軽い便秘症に?
私の場合は毎食ポーションタイプのチーズを一切れ(10~20g程度)食べていますが、健康効果を得るには十分だと思います。ただし、カルシウムについてのみいえば、『日本人の食事摂取基準』にある許容上限量の1日2300mg以上摂取すると、軽い便秘症になる方もいるかもしれません」(齋藤先生)。
ナチュラルチーズとプロセスチーズ、どちらも許容量がないのであれば、家でゆっくり楽しみたい時はナチュラルチーズ、会社など出先で摂るにはプロセスチーズなど、使い分けるのも良いでしょう。
生きた乳酸菌が取り込めるナチュラルチーズに、手軽さが魅力のプロセスチーズ。気分やライフスタイルに合わせてチョイスして、チーズライフを楽しんでみてはいかがでしょうか?
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