世界一固い発酵食品「かつお節」の種類や作り方、栄養成分や美容・健康効果、使い方・食べ方、保存法をチェック

1.9K

日本人の食生活に欠かせない「かつお節」は、世界一固い発酵食品であることをご存じでしたか?かつお節は、製造中に「発酵食品である」かつお節と、「発酵食品でない」かつお節に分かれます。そのポイントはどこなのでしょうか。

また、かつお節ができたのはいつ頃?その栄養成分や、健康・美容効果は?どんな料理に合うのか、使い方や食べ方、そして、適切な保存方法は?など、かつお節のいろいろについて解説します。

発酵の力を手軽に利用できる「かつお節」を知って、日々の食事に効果的に取り入れましょう!

目次

かつお節の発酵食品としてのメリット

かつお節は、室町時代に薪などを燃やし、煙を利用して乾燥させる方法で作られてから、多くの改良がなされ、昭和以降には、コウジカビを付着させて発酵させる現在の方法が生まれました。

この「発酵」により、うまみが増すだけでなく、香りも上品になり、さらに、付着した微生物が水分を吸い取るため、保存が効くようになります。発酵は、生のカツオをより長く持たせる知恵であり、おいしく食べるための工夫でもあるのです。

かつお節の起源

縄文時代には食べられていたカツオ。たくさん獲れても傷みやすいため、食べきれない分を干して乾物に加工し、保存していました。室町時代には、薪などを燃やし、煙を利用して乾燥する「焙乾」(ばいかん)という技術が導入され、現在のかつお節に近いものが作られるようになります。

江戸時代になると、一面に良質なカビを付着させて悪カビの発生を防ぐという改良なども加わり、以前よりカビが生えにくくなります。その後、徹底した焙乾と3~6回のカビ付けを行うようになり、昭和以降には、コウジカビの一種「カツオブシカビ」を純正培養させて噴射する技術が生まれ、現在に至っています。

かつお節の種類

かつお節は、大きく分けて「荒節」(あらぶし)と「枯節」(かれぶし)という二種類があります。

荒節

カツオを煮熟(しゃじゅく)して焙乾(ばいかん)したもの

枯節

荒節の表面を削り、汚れを取り除いた後、カワキコウジカビ、またはカツオブシコウジカビという良性のカビを表面に繁殖させたもの

枯節は、カビ付け作業を繰り返す間に微生物が水分を吸い取るため、荒節よりも長期間保存が可能になります。

枯節に用いるカワキコウジカビ、またはカツオブシコウジカビは麹カビの一種で、この麹カビが付着することによって、枯節は発酵食品に分類されています。

かつお節の作り方

かつお節はどのように作られるのでしょうか。生のカツオから枯節になるまでの製造工程を見てみましょう。

かつお節の製造工程

かつお節の製造工程
かつお節の製造工程

「枯節」が作られる工程の中で、「荒節」ができます。「枯節」は、荒節に「カビ付け」(発酵)「日乾」「カビ払い落し」を繰り返して行うことで、発酵食品になるのです。

カツオは、その死後、酵素反応によりイノシン酸が生成されます。しかし、時間の経過とともにイノシン酸は分解されて減少するため、タイミングを見計らって煮熟することが必要です。

そして、骨抜き、水切り焙乾、焙乾、あん蒸、削り、カビ付けと進みます。

カビ付け=発酵では、うまみ以外の酸味、雑味、渋味がそぎ落とされ、うまみが前に出てきます。発酵によりさらに水分が飛ぶと、そのうまみが凝縮されるとも考えられます。

なお、「荒節」「枯節」の水分量は、製造前の生のカツオと比べると15~25%程度になります。

世界一固い発酵食品・かつお節の発酵ポイント(まとめ)

世界一固い発酵食品・かつお節の発酵ポイント(まとめ)
世界一固い発酵食品・かつお節の発酵ポイント(まとめ)

かつお節が発酵食品として優れている理由は3つあります。

ポイント1.うまみが増す

発酵により、かつお節のうまみ以外の酸味、雑味、渋味がそぎ落とされ、かつお節のうまみが引き立ちます。

ポイント2.上品な香りが生まれる

ゆっくりと時間をかけて発酵することにより、水分が出て乾燥が進み、酵素の働きも手伝って、優しく上品な香りになります。

ポイント3.長期間の保存が可能

微生物が水分を吸い取るため、より日持ちがします。

かつお節の栄養成分

かつお節には、多くの栄養成分があります。そのうちのアミノ酸は、エネルギーを作る大事な栄養素の一つです。

人の体は20種類のアミノ酸からできていますが、体内で充分な量を合成できず、栄養素として摂取しなければならないアミノ酸があります。これを、必須アミノ酸と言います。種類は全部で9つ。かつお節には、この9種類全てが含まれた優れた食品なのです。

ここでは、主な7つの栄養素と、必須アミノ酸9種類をご紹介し、体にどのような影響を及ぼすのかを見ていきます。

主な栄養素

①たんぱく質

筋肉や内臓、爪、肌、髪などを作る栄養素。

➤不足すると…筋肉量の減少や、免疫力の低下、肌や髪のトラブルなどを引き起こします。

②カリウム

ナトリウムを排出し、塩分の摂り過ぎを調整する栄養素。

➤不足すると…脱力感・食欲不振・不整脈などの症状がみられることがあります。

③カルシウム

骨や歯を形成する栄養素。

➤不足すると…骨粗鬆症の原因になります。ビタミンDが不足すると、カルシウムが吸収しにくくなります。

④マグネシウム

骨を形成する他、体内のさまざまな代謝を助ける栄養素。

➤不足すると…骨の形成に影響が出るほか、不整脈や虚血性心疾患、高血圧を引き起こします。

⑤ビタミンB1

皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素。

➤不足すると…糖質がうまくエネルギーにならないため、食欲不振、疲れやすい、だるいなどの症状が現れます。

⑥ビタミンB2

主に皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素。

➤不足すると…発育・成長が妨げられる他、口角炎など、皮膚や粘膜に炎症が起こりやすくなります。

⑦ビタミンD

カルシウムの吸収や骨の成長を促し、丈夫な骨を作る栄養素。

➤不足すると…カルシウム吸収が不十分となり、骨軟化症を引き起こします。

かつお節の栄養素には、健康でいるために欠かせない重要なものばかりです。毎日上手に摂って、不足しないように注意したいものです。

必須アミノ酸

①イソロイシン

筋肉を強化したり、疲労を回復させたりする効果があります。また、神経の働きを向上させます。

②ロイシン

たんぱく質の合成を活性化させ、分解を抑えるアミノ酸。骨格筋の量や運動機能の改善に効果があるとされています。

③バリン

ロイシン同様に、たんぱく質の合成を活性化させます。筋肉を強化し、疲労を回復します。

④リジン

免疫力を上げ、肝機能を強化したりすることが期待されています。

⑤メチオニン

肝機能を高め、アレルギーの原因となるヒスタミンを抑える働きがあります。

⑥フェニルアラニン

肝臓でチロシンというアミノ酸に変換され、ドーパミン(喜び、快楽など)やノルアドレナリン(恐怖、驚きなど)の興奮性の神経伝達物質を作り出します。

⑦トリプトファン

精神を安定させ、鎮痛作用を持つ神経伝達物質の原料となります。体内でセロトニンというアミノ酸を生成し、メラトニン(睡眠・覚醒リズムを整える)というアミノ酸へ変換されます。

⑧ヒスチジン

体内で成長に関与し、神経機能を補助します。体内でヒスタミンというアミノ酸に変わり、満腹中枢に作用し、食欲を抑える働きがあります。

⑨スレオニン

消化吸収を助け、成長を促進し、肝臓に脂肪が蓄積するのを抑制する効果があります。

栄養素として摂取しなければならない必須アミノ酸。かつお節は、全ての必須アミノ酸を効率よく摂取できる食品なのです。

かつお節のうまみ成分、イノシン酸について

かつお節に含まれるイノシン酸は、グルタミン酸、グアニル酸と共に3大うまみ成分と呼ばれています。イノシン酸は、さまざまな料理にうまみを出すだけでなく、グルタミン酸と掛け合わせることで相乗効果をもたらします。

かつお節の健康効果

さまざまな栄養素とアミノ酸を含むかつお節。かつお節を食べることでどのような健康効果があるのでしょうか。

1.疲労回復

かつおだしに含まれるアンセリン、カルシノンは、疲労を回復する効果があります。動物に激しい運動をさせた後で、かつおだしを与えると、水やアンセリン、カルシノンをそれぞれ単体で与えた場合に比べて、自発的に運動するエネルギー源が残っていることが分かっています。

2.生活習慣病予防

生魚のカツオのたんぱく質は、重量のおよそ25%ですが、かつお節は水分が抜けて約70%になります。また、脂質は、100グラム当たり約3グラムと低く、その脂質には悪玉コレステロール(LDL)を減らす働きがあると言われている多価不飽和脂肪酸が多く含まれています。かつお節は、高たんぱく・低脂質で生活習慣病の予防になります。

3.元気な体を作る

かつお節に含まれるアミノ酸は、必須アミノ酸を含めて30種になります。その中には、乳幼児の成長に欠かせないヒスチジンや、血中のコレステロールを下げ、血圧を正常に保つタウリンも含まれています。かつお節は子どもから高齢者まで、成長や健康を助ける優れた食品なのです。

4.お腹に優しい

かつお節は消化も良いため、食欲がない時や、子どもや高齢者など消化力の弱い方にもおすすめできます。

かつお節の美容効果

栄養価の高いかつお節には、たんぱく質をはじめ、アミノ酸の働きもあり、美容に良い作用が期待できます。

1.美肌効果

かつお節には、たんぱく質が多いだけでなく、肌にハリと潤いを与える必須アミノ酸のメチオニンが多く含まれており、美肌づくりに役立ちます。また、ビタミンB2には、肌の新陳代謝を促進し、脂質をエネルギーに変換して脂を抑える働きもあり、ニキビ、肌荒れ、抜け毛などに効果的です。

2.肥満防止

かつお節に含まれる乳酸やヒスチジン、イノシン酸には、疲労回復や血流の改善効果が認められています。また、胃の働きを促進して満腹感を高めてくれるため、食事の際には、かつおだしの汁物から食べれば、食べ過ぎを防ぐことが期待できます。

3.アンチエイジング

かつお節のうまみ成分であるイノシン酸は、新しい細胞を作るために欠かせない成分です。イノシン酸は体内で作ることができますが、年齢とともに合成能力が衰えていきます。かつお節でイノシン酸を補うことで、細胞の生まれ変わりを助け、老化を防止します。

かつお節の使い方やコツ

かつお節の使い方やコツ
かつお節の使い方やコツ

かつお節には、「枯節」「荒節」の種類の違いだけでなく、「削り方」にもさまざまあります。

「種類」と「削り方」のそれぞれの特徴を知った上で、かつお節を活用するのがポイントです。

■かつお節の種類で異なる特徴や用途

種 類 特 徴 主な用途

枯節

豊かな香りと上品な味わいで、うまみが強い。
素材を引き立てる料理に向く。
・お吸い物
・おひたし
・上品な薄味の煮物や茶碗蒸し
・おもてなし料理

荒節

魚本来の風味や燻した香りが強い、濃厚な味わい。
醤油との相性が良い。
・煮物
・うどん、そばなどのつゆ
・みそ汁

■かつお節の削り方で異なる特徴や用途

削り方 特 徴 主な用途

薄削り

香りを楽しむ。
加熱するなら短時間で、または水だしで。
・お吸い物のだし

厚削り

濃厚なだしをとるのに向く。 ・麺つゆ
・煮付け

ソフト削り

薄くて軟らかいので、料理に使いやすい。 ・料理のトッピング
・だし

糸削り

ふりかけには、砕片、ソフト、マイルドが良い。
飾りには糸削り。
・添え物
・お好み焼き
・ふりかけ

かつお節の保存法やコツ

かつお節をいつでもおいしく食べるためには、適切に保存することが大切です。そのために、必ず守りたいポイントと、かつお節の種類別の保管方法、その他の注意事項を見ていきましょう。

1.重要なポイントは、「高温多湿を避ける」

かつお節は、湿気にとても弱い食品です。かつお節が水分を含むと風味が落ち、悪性のカビが発生しやすくなります。

2.種類別の保存方法

種類 未開封 開封後

枯節

冷暗所で保存 ラップで包み冷蔵庫で保存
※結露により悪性カビが生えないように注意。

荒節

冷暗所で保存 冷蔵庫で保存

3.その他の注意

  • 冷蔵庫で保管する場合、野菜室は湿度が高めに設定されているため、かつお節の保存には適していません。
  • 「荒節」の開封後は、香りが飛びやすいので、なるべく早く使い切ってしまいましょう。
  • 使い切れない時は、空気を抜いてしっかりと密閉した上で、冷蔵庫で保管しましょう。
  • 冷凍庫から出した後、そのままにしておくと、結露が発生して悪性のカビの原因になります。頻繁に出し入れするような場合は、十分に注意しましょう。

かつお節の効率的な食べ方

かつお節を食べるなら、かつお節が持つ力を十分に生かした食べ方をしたい!その3つの方法をご紹介します。

その1.油と一緒に

かつお節に含まれるビタミンDは脂溶性のため、油と一緒に摂取することで、体の吸収が良くなります。

その2.ホウレンソウやタケノコと一緒に

シュウ酸を多く含む、ホウレンソウやタケノコを食べる時には、かつお節のカルシウムと一緒に食べるのが有効です。シュウ酸とカルシウムが結合して、便として排出され、尿中にシュウ酸が増えないことから、結石の予防になります。

その3.牛乳やチーズと一緒に

牛乳やチーズなどに豊富に含まれるカルシウムは、かつお節に含まれるビタミンDと組み合わせることで吸収率が上がります。

栄養、健康効果、美容効果のある「かつお節」を活用しよう!(まとめ)

かつお節の中でも、カビ付けされた「枯節」は、熟成させていくことで、うまみ成分が作り出される発酵食品です。ゆっくりと発酵することにより、優しく上品な香りを引き出すだけでなく、水分が出て、より長く保存ができるというメリットも。

また、かつお節には、豊富な栄養素と、9種類全ての必須アミノ酸が含まれている、優秀な食品です。その栄養パワーから、疲労回復や美肌効果も期待できます。

枯節や荒節の使い分けや、削り方によって用途を変えるなど、かつお節には、さまざまな使い方があります。ご紹介した使い方や保存法などを参考に、今日から「かつお節」を楽しみましょう!

監修者

杉本恵子(すぎもとけいこ)先生

監修者 杉本恵子(すぎもとけいこ)先生
監修者 杉本恵子(すぎもとけいこ)先生

管理栄養士
ヘルスケアトレーナー
産業栄養指導者
心理相談員
株式会社ヘルシーピット代表取締役

健康にとって本当に必要なものは何かを考え、『⾷事』『運動』『休養』の3つの観点から、ひとりひとりに適した健康作りを提案・実施・サポートしている。

資格
管理栄養士(厚生労働省公認国家資格)
ヘルスケアトレーナー、産業栄養指導者
心理相談員

受賞歴
東京都知事賞受賞、厚生大臣賞受賞

略歴
相模女子大学食物科を卒業後、大手百貨店の健康管理室に勤務。
栄養士として従業員の栄養相談・食事指導をしながら「健康プラザ」という売場づくりを成功へと導く。
1991年、個人の健康管理の全体像を踏まえたトータルなウエルネス管理<健康意識への育成>を行うべく、株式会社ヘルシーピットを設立し代表取締役に就任。健康にとって本当に必要な事は何なのかを考え、「食事」「運動」「休養」の3点から、1人ひとりに適したパーソナルな健康づくりを提唱し実践している。その活動は、企業・健康保険組合が行う社員の健康づくりのコンサルティングやサポートを中心に、出版・新聞・雑誌などの執筆活動、全国各地での講演活動、ラジオ・テレビ出演など多岐にわたり活躍中。その中でも特に、子供からお年寄りまで、誰でもが簡単に毎日実行できる栄養バランスのとり方を分りやすく解説した「杉本恵子の食材5色バランス健康法」が多くの方々から支持を獲得。また、1人でも多くの人がより健康で明るく生き生きと生活できる社会を目指し、全国の管理栄養士・栄養士の育成活動を推進している。

株式会社ヘルシーピット

Close
Copyright © haccola. All Rights Reserved.
Close