日本の大切な食文化である発酵食品。そのベースにあるものが「麹」です。“こうじ”の漢字表記は「麹」と「糀」の2つありますが、その使い分けや意味合いはどう違うのでしょうか? 今回は、5月4日(木祝)の「糀の日」に『発酵祭 in 大阪』を開催される、麹文化研究家のなかじさんにお話を伺いました。
「麹」と「糀」の違いは何ですか?
それぞれの表記となった背景には食文化の違いがあるそうです。
「麹」とは?
「麦偏に菊と書く“麹”は、麦の粉を水で練って団子にしたものに菌を培養していたことから生まれた漢字。これは東アジア、主に中国大陸の作り方で『餅麹(もちこうじ)』と呼ばれています。このとき繁殖される菌は〝クモノスカビ〟という菌で、実は日本の麹菌とは菌の種類そのものが違うものなのです」。(なかじさん)
なるほど、「麹」は中国から伝わった大陸文化だったのですね。
「糀」とは?
「米偏に花と書きますね。これは、蒸したお米の粒に麹菌を培養したことを表したもの。一粒一粒に麹の菌糸や胞子が成長し、モフモフ&フワフワとした様子は現在でも『花を咲かせる』と表現されますが、麹カビを花に例えた、まさに日本的感覚によって生み出された漢字なのです」。(なかじさん)
麹菌が広がるあのモフモフ感をお花の開花に捉えるとは!
先人たちの感性に感動を覚えますね。
「麹」と「糀」の違いは、大陸と日本の主食の違い?
また、「麹」と「糀」の違いには、各国の主食の違いも現れているそう。
「麦を丸めた団子状の餅麹だった大陸の主食は、小麦粉を団子、麺、饅頭などにした“麦の粉食”文化。
対して日本は、お米の粒を蒸したり炊いたりする“お米の粒食”文化です。これらはそのまま麹の発酵法にも発展し、日本ではお米一粒一粒に麹菌を培養した作り方が定着しました。
麹とは、食文化を背景とし、その国の民たちが“何を食べるのか?”を元に生成発展の道を歩んできたと言えるでしょう」。(なかじさん)
先人たちの食習慣と住環境のおかげさま
なぜ日本は“お米の粒食”文化が定着したのでしょうか?
日本には稲がもっとも適した栽培作物
「大陸の乾燥した大地には麦が最も適した栽培作物であるのに対して、山河が入り組み温暖湿潤な日本には稲が最も適した栽培作物だった。それぞれの風土によって、主要栽培作物が確立します。
そして、以来お米が日本や日本人に与えた影響は多方面に渡り、切っても切り離せない大切なものとなりました」。(なかじさん)
和食文化とは発酵食文化
「和食はその多様性と自然との共生性から、ユネスコ世界無形文化遺産に登録されました。また、『さ・し・す・せ・そ』と呼ばれる和食の基本調味料(酒、塩、酢、醤油、味噌)は、海水から作る塩以外すべて発酵食品。つまり和食文化とは、発酵と風土から産みだされた『発酵食文化』と言えるのです」。(なかじさん)
「糀」は日本文化を象徴する大切な字
「日本は四季がはっきりと存在し、南北に長く、温暖湿潤で、森と水が豊かな島です。そんな島で育まれた“糀”は、日本文化を象徴的に表す要素が結晶化された、私たちにとってかけがえのない大切な字の一つと言えます」。(なかじさん)
そして、発酵スペシャリストが大阪に集結!
麹文化研究家のなかじさんが昨年から企画運営されているのが、ゲストと共に世の中のことから社会や家庭といった人生に至るヒントを、「発酵」をキーワードにして語りあう、その名も『発酵祭』!
2回目となる今年は、5月4日(木祝)の「糀の日」に大阪で開催されます。
「今回は”麹・糀”に焦点を当て、一般的な麹の作り方から、プロの裏話まで語り合います。種麹、豆味噌、豆麹の話などなど、麹の話をとことんお話ししようと思います」。(なかじさん)
これは! 発酵ファンには見逃せませんね!
ゴールデンウィークのご予定に、どうぞ追加ください。
「糀を知ることは日本を知ること」。と言うなかじさん。
糀を知ることで見えてくるものが、それぞれの胸の中で咲きますように。
イベント詳細
発酵祭 in 大阪
日時:2017年5月4日(木祝)
開演:11:00~16:00(開場 10:30)
場所:大阪市中央公会堂 小会議室
トークゲスト:
助野彰彦(京都老舗種糀屋 株式会社 菱六代表)
小倉ヒラク(発酵デザイナー)
本地猛(東海醸造)
佐藤大輔(ゆめのたね放送局)
詳細&お申込み:https://hakkoudaigaku.wixsite.com/fermentationfestival
イベント主宰・教えてくれた方
なかじ(南 智征)
発酵冒険家・麹文化研究家・瞑想家・みなみ屋主宰。
ブログ:腸と発酵とココロとカラダ。 なかじの発酵と冒険の日々
みなみ屋:https://minamiyasun.jimdo.com/