ワイン

2018年03月07日

商店街にワイナリーが出現!秋田県鹿角市(かづのし)の「ワイナリーこのはな」

日本の中でも、醸造文化が豊かに続く東北地方。東北発信の味噌、醤油、日本酒などが全国や海外に広まるなか、実はワインも盛んに作られています。今回は秋田県で、なんと商店街の中心地にあるという「ワイナリーこのはな」へお邪魔してきました。

秋田県鹿角市(かづのし)の商店街にある「ワイナリーこのはな」

秋田県鹿角市(かづのし)の商店街にある「ワイナリーこのはな」

秋田、青森、岩手の三県と県境を共にする秋田北東部の鹿角市(かづのし)。同市の商店街で「ワイナリーこのはな」と販売店を経営されている三ケ田 一彌(みかだ かずや)さん、奥様の美香子(みかこ)さんにお話をうかがいました。

「ワイナリーこのはな」三ケ田 一彌(みかだ かずや)さん
「ワイナリーこのはな」三ケ田 一彌(みかだ かずや)さん

「日本ワイン」と「国産ワイン」の違いは?

三ケ田さんたちは、「日本ワイン」のワイナリー。
日本で作られるワインは、2018年10月より施行される新ルールのなかで、

・外国の材料を使い国内で製造する「国産ワイン」
・国産のブドウ100%で日本国内で醸造された「日本ワイン」

として定義されています。

「ワイナリーこのはな」のはじまりは、パソコン教室!?

以前は同じ場所でパソコン教室を経営されていたという三ケ田ご夫妻。あるとき受講生からのリクエストでネットショップの作り方をパソコン教室の内容に含めることにしました。そのために自らネットショップの運営経験を積むことを決め、地元の名産品の販売を始めたことにより、ブドウ農家との運命的な出会いに繋がります。

ブドウ栽培が盛んな秋田県鹿角市の小坂町のブドウは、他県のワインメーカーに消費されていた

三ケ田さんがブドウ農家さんと出会ったのは市の中心地からほど近い小坂町(こさかまち)。ここでは30年以上も昔からブドウ栽培が盛んだったそうですが、鹿角で生まれ育った三ケ田さんでさえブドウが栽培されていたことを初めて知ったそうです。それは、ブドウを出荷するワイナリーがすべて他県に存在するため。小坂町産のブドウはすべて他県のワインメーカーによって消費され、鹿角の人たちはブドウのおいしさだけでなく近くでブドウが栽培されていた事実すら知ることがなかったのです。

出荷制限で余ってしまったブドウの使い道がないことや、ブドウ栽培の後継ぎ不足などの現状を知る

さらに三ケ田さんは、たくさん採れたブドウに出荷制限がかかり、余剰の行き場に困っている農家さんの現状も知ることになりました。また、農家の高齢化と後継ぎ不足はここでも例外ではなく、「このままではこのブドウも農家も続かなかくなってしまう」と直感的に感じられたと言います。

「ブドウを無駄にせず、農家のためになりたい」。秋田県鹿角市で「ワイナリーこのはな」をスタート

「ブドウを無駄にせず、農家のためになりたい」。秋田県鹿角市で「ワイナリーこのはな」をスタート

「他県ではなく、ここ秋田県鹿角市にワインメーカーさえあれば、このブドウを無駄にせず、農家さんのためにもなる」
そう考えた三ケ田さんご夫妻はパソコン教室からの事業転換を決意。地元農産物を活かし、地元に新たな名産を生み出すべく、2010年から「ワイナリーこのはな」として、畑の土地名でもある『鴇(ときと)』と名付けたワインの製造販売をスタートさせました。

「ワイナリーこのはな」の『鴇(ときと)』赤ワイン
「ワイナリーこのはな」の『鴇(ときと)』赤ワイン

「ワイナリーこのはな」の『鴇(ときと)』白ワイン
「ワイナリーこのはな」の『鴇(ときと)』白ワイン

商店街にあるワイナリー「ワイナリーこのはな」で、出荷までの全オペレーションが行われる

現在、0.5ヘクタールの専用畑で収穫されたブドウは、“商店街”へ出荷。ここはなんと、かつてパチンコ店と金融機関だったという跡地を再利用したワイナリーなのです。正面の一部はガラス越しのため、商店街を歩く人と目が合うこともあるというアットホームさで、さながら“街なかワイナリー”といったところでしょうか。出荷までの全オペレーションがこの場で行われています。

まずはブドウの選別や洗浄、そして大きな機会で圧搾後、発酵のプロセスに進み、安定した後には濾過、熟成、ブレンド等の仕上げを経て、瓶詰めとラベル貼付というスタイリングがされたあとに貯蔵庫へ。静かに出荷の時を待ちます。

金融機関だったときの金庫室
出荷待ち中の一部が保存されているのは、金融機関だったときの金庫室!まさに室(むろ)のように温度が安定しているんだそう。

「ワイナリーこのはな」では、ワインの熟成時に最高のジャズを!

「ワイナリーこのはな」では、ワインの熟成時には最高のジャズを!

ワイナリーを案内してくださった三ケ田さん。「足もと気をつけてね」と言って細い階段を上がり2階を見せてくださいました。すると、2階は広々としたひと間になっており、その一番奥には巨大スピーカーを両脇に置いた立派なオーディオセットが鎮座していました。

レコードのコレクションを広げた三ケ田さんが針を合わせると、一気に老舗のジャズバーのような雰囲気に! 目を閉じれば、ここがどんな場所かを忘れてしまいそうになります。『鴇(ときと)』のスタイリッシュなテイストは、熟成時に吹き込まれるのかもしれませんね。

「ワイナリーこのはな」の『鴇(ときと)』は、幅広いマッチングで郷土料理とも楽しめる

「ワイナリーこのはな」の『鴇(ときと)』は、幅広いマッチングで郷土料理とも楽しめる

ワイン用に栽培されたブドウですが、生食でもおいしいとされる小坂町産の山ブドウ。その雄大なボディを味わえる赤ワインは、果実そのものの爽やかさも残し、まるで白ワインのようなすっきりさを兼ね備えたおいしさに仕上がります。定番のお肉料理だけでなく、秋田名産のきりたんぽや新鮮なお刺身といった和食との相性も良いのが特徴。さすがは地元産です。

「ワイナリーこのはな」の『小公子』は、「TRAIN SUITE 四季島(トランスイート しきしま)」に採用

また、『小公子』と名付けられた辛口の赤ワインは、2017年の春から、JR東日本の超豪華列車「TRAIN SUITE 四季島(トランスイート しきしま)」に採用されました。上野〜北海道まで旅をするみなさんに、秋田の新しい魅力をお知らせできる素晴らしい機会となっているようです。

「ワイナリーこのはな」では、鹿角産リンゴを使った『かづのシードル』も発売

「ワイナリーこのはな」では、鹿角産リンゴを使った『かづのシードル』も発売

昨年からは、さらにワイナリーに近い地元産のリンゴを使い、爽やかな酸味を楽しめるリンゴシードルも開発。小さな傷などが原因で規格外にされてしまったリンゴを中心に農家から集めているため、リンゴの季節のお楽しみになりそうです。スパークリングタイプと非発泡のスティルタイプが揃っているのも嬉しいバリエーションです。

リンゴそのものを口にしているかのような、ほのかな酸味と安心する甘みが飲みやすいリンゴシードルはどんな場にも合いそうで、贈り物にも最適。三ケ田さんの地元愛が具現化されたような、新しい鹿角の名産品となることでしょう。

「ワイナリーこのはな」の、鹿角産リンゴを使った『かづのシードル』
「ワイナリーこのはな」の、鹿角産リンゴを使った『かづのシードル』

環境条件のため2月頃に新酒の時期を迎える秋田の日本ワイン。どうぞお気に入りの一本を見つけてみてください。

ワイナリーこのはな

ワイナリーこのはな

写真・取材ご協力:ワイナリーこのはな

やなぎさわ まどか

やなぎさわ まどか

フリーライター/ 通訳翻訳コーディネーター。10代後半から20代前半の海外生活後、英会話学校のマネージメントやコンサルティング企業に勤務。2011年3月の震災を機に、兼ねてから興味のあった農的な暮らしへの移行を求めて退職。現在はフリーランスにてライターやマネージメントの活動をしつつ、自然との繋がりを深める暮らしの実践中。心はいつでも旅人のままであり、自由と安定のバランスを模索する日々。 Instagram

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