醸し場

2017年03月07日

工場見学が100倍楽しくなる巡り方:“しょうゆの花房”の醤油工場はこう見て回った!

兵庫県豊岡市にて、醤油や味噌などの発酵食品の開発・製造・販売を行っている「花房商店」さん。今回は、オリジナル商品を作っている工場へ行ってきたよレポートです。

兵庫県豊岡市にて、醤油や味噌などの発酵食品の開発・製造・販売を行っている「花房商店」さん。今回は、オリジナル商品を作っている工場へ行ってきたよレポートです。
香ばしい香りの中、丁寧に丁寧に行っている製造過程をお伺いしてきましたよ。

もともとは糀屋から始まって、昭和2年から但馬地方で醤油を作っているという「しょうゆの花房」さん。麹の扱いはお手のもの。
インタビュー中に出してもらった甘酒は自然の甘みが濃いのにさっぱり、苦手な人もごくごく飲めるさわやかさ。そして試食させていただいた話題の発酵調味料”HANAFUSA”シリーズの『するめ糀漬』は、素材の風味が濃厚で豊かな香り立ちで、あとを引くおいしさ。試食なのに「もう少し食べてもいいですか………」と手を出してしまうほど!

インタビューの際、出してもらった甘酒。濃厚なのにさらっとしている。
インタビューの際、出してもらった甘酒。濃厚なのにさらっとしている。


発酵食品を数々と企画・製造している花房商店さんですが、やはり基本の商品は「醤油」。

発酵食品を数々と企画・製造している花房商店さんですが、やはり基本の商品は「醤油」。
そこで我々取材班は、醤油工場の見学をさせていただくことに。

醤油ができるまでの流れを追ってみた

醤油ができるまでの流れを追ってみた

花房さん:醤油の原料は大豆と小麦と塩です。作り方にもバリエーションがありますが、うちの醤油は、大豆をそのまま使っています。

ハッコラ編集部:なるほど、100%国産大豆を使っているからこそできる製法ですね。

花房さん:豊岡市はコウノトリの野生復帰を進めています。ご存じの通り、コウノトリは特別天然記念物。そのため、豊岡市では「コウノトリと共生するまち」をスローガンに掲げています。農薬をできるだけ使わない畑で作物をつくると、ミミズや他の虫などが豊富になります。それらを求めてコウノトリがやってくる。コウノトリにやさしい畑で採れた野菜は人間にもやさしい、安心・安全な野菜となります。

ハッコラ編集部:コウノトリ育む農法、聞いたことがあります。それで地方の特性を生かしたブランドになるんですよね。

花房さん:はい。うちの工場ではこのコウノトリ育む農法の大豆も使っています。ただ残念なことに収穫量が少ないので、他の産地の大豆も使用していますが、なるべく近隣のものを使うようにしています。兵庫県内はもちろん、島根、鳥取、広島、佐賀…遠くて富山付近くらいまで。そして、小麦はすべて兵庫県のものです。

ハッコラ編集部:量の問題を考えるとどうしても輸入に頼らざるを得ませんから、”100%国産大豆”で商品を作るには、花房さんのような地域に根ざした小さな蔵でしかできないことなのですね。

では、工場見学スタート!

簡単な予習をして、さっそく工場を案内してもらいます。
レッツゴー!

室(むろ)で菌を増やす

花房さん:これが室(むろ)です。この中は大きなプールみたいになっています。この中に丸2日間置き、菌を増やして醤油麹を作るんです。

ハッコラ編集部:温度管理が自動でできて、近代的ですね!

でも、やはり毎日微妙に変化するので、最終的には人間が見てあげなければいけません。

花房さん:でも、やはり毎日微妙に変化するので、最終的には人間が見てあげなければいけません。ほんのちょっとしたことで、味や色、香りなどが変化してしまいますから。

醤油麹と塩水を混ぜ、タンクで発酵させる

まずは1階から見るタンク。想像以上に大きいです。
さりげなく音楽が聞こえます……。
「モーツァルトを聴かせて熟成させています」

醤油麹と塩水を混ぜ、タンクで発酵させる

ハッコラ編集部:ここで仕込まれて、発酵していくんですね!

花房さん:はい。自動車や船体にも使われるFRPという樹脂を使っています。軽いうえに腐食しにくくて、金属よりも強度が高いんです。

ハッコラ編集部:ここに書いてあるのは、仕込みの時期ですか?

花房さん:はい。昨年の秋くらいに仕込んだ若いものもあれば、1年経っているものもあります。
今は寒いので発酵はゆっくりですが、夏場は発酵が進むので、タンクに耳をあてると「プツプツ」と小さな発酵の音が聞こえますよ。

ハッコラ編集部:へえ! 菌が働いている音が!
攪拌はどのようにして行うのですか? まさか…手でかき混ぜるわけにはいきませんよね?

花房さん:人力では難しいですね(笑)。では、上から見てみましょうか。

夏場は発酵が進むので、タンクに耳をあてると「プツプツ」と小さな発酵の音が聞こえますよ。

ハッコラ編集部:ここは、タンクの上です。板張りになっています。ちょっとこわい!ギシギシ言っています! 落ちませんか? 落ちませんか??

花房さん:今まで落ちた人はいません(笑)。攪拌は、空気の力でかき混ぜます。スイッチを押すと……。

ゴゴゴゴゴゴ………!!! どこからか大地を揺るがす音が聞こえる………!!!

ハッコラ編集部:な、なんですか、この地鳴りは!!??

花房さん:これが空気の音です。下から空気を出して、攪拌しています。見てみてください。

これが空気の音です。下から空気を出して、攪拌しています。見てみてください。

ハッコラ編集部:本当だ!!! 噴火しているみたいです!!!

花房さん:これを冬は様子を見ながら、だいたい1週間に1回。夏は毎日行います。

ハッコラ編集部:その「様子を見ながら」というのが、経験がものをいうところですね。

もろみを絞って重ね、プレス

花房さん:プレスしてできたものが、生の醤油です。

ハッコラ編集部:おおお!醤油色!!

花房さん:プレスしてできたものが、生の醤油です。

花房さん:味噌は”米糀“から作りますが、醤油は”醤油麹”で作ります。麹菌の種類が違うんです。色は大豆の色なので、米糀のようなふんわりした白い菌ではありません。

ハッコラ編集部:醤油は黒いですものね。もともとは黄土色というか、大豆の色なのですね。

花房さん:仕込んだ頃は黄土色から茶色っぽい感じで、それから1年かけて発酵していき、だんだん色が濃く、赤ワインのような色になっていきます。

ハッコラ編集部:こっちの、絞った後のものはどうするんですか? 食べられそうですよね??

花房さん:成分的にはもちろん食べられますが、ほとんど絞りきってしまうので水分がなくパサパサですし、うちは小麦の皮ごとつかっているので、その皮の部分の舌触りがあまり良くないんですよ。ザラザラと食感が良くないので、食べ物に加工はしづらくて。

ハッコラ編集部:じゃあ、捨ててしまうのですか?

花房さん:以前は産業廃棄物として処分していましたが、今は但馬牛の餌として100%リサイクルしています。2箇所の牧場で牛がこれを食べています。牛もおいしいみたいで、食いつきがいいそうです。

以前は産業廃棄物として処分していましたが、今は但馬牛の餌として100%リサイクルしています。

ハッコラ編集部:へええ! ……(ちょっと味見してみる)たしかにおいしいですもの! お酒を飲みたくなります!

花房さん:でしょう(笑)。なので、うちはすごくゴミが少ない工場なんですよ。主な廃棄物がこの絞りカスなんですが、捨てなくなったので。もう家庭のゴミくらいの量しか出ないんです。

ハッコラ編集部:素晴らしいですね! コウノトリにも人にもやさしいお醤油は、地球にもやさしいんですね!

花房さん:火入れ、濾過してからボトルにつめて、商品になります。

花房さん:火入れ、濾過してからボトルにつめて、商品になります。

ハッコラ編集部:”火入れ”は、これ以上発酵を進めないために、殺菌目的で行うものですよね。火入れを行っていないものは食べられないんですか?

花房さん:もちろん、食用にできますよ。ただ、「醤油」としては販売できません。発酵調味料として別の名前で販売しているメーカーさんもあるでしょうね。今のところ、うちでは販売していませんが。

春から販売予定のかわいい新ボトル

こちらは、新発売に向けて準備中のニューボトル醤油。従来のペットボトルと比べて、小さくてかわいく(1本150ml)、高級感があります。
左から、「丸大豆(濃口)醤油」「さしみ醤油」「再仕込醤油」。

こちらは、新発売に向けて準備中のニューボトル醤油。従来のペットボトルと比べて、小さくてかわいく(1本150ml)、高級感があります。

向かって左の「丸大豆醤油」はベーシックなお醤油です。向かって右の「再仕込醤油」は、醤油の原料となる塩水の代わりに、1年かけて醸造した「醤油」を使うそうです。2年がかりで作り上げる、なんと贅沢な一品じゃないですか!
真ん中の「さしみ醤油」は、お砂糖を煮詰めて作ったカラメルで甘みととろみをつけたお醤油。花房商店さんのさしみ醤油は「再仕込」仕上げ。「白イカの刺身には最適ですよ!」(花房さん)だそうで、豊かな旨味のある自信作だとか。

「うちの醤油は、「さしみ醤油」「再仕込醤油」のように、濃厚な香り・味わいが特徴です。刺身や冷奴など直接使っていただくとその差がわかると思います。また、ステーキなどジュッと焼く料理に使うと、香ばしい香りが立ち食欲をそそりますし、料理の下味に使っても深く豊かなプロの味わいになりますよ。ぜひいろいろ試していただきたいです」(花房さん)

調味料には地域性があり、それがその土地の食文化につながります。竹野浜の豊かな自然の恵みを受けて「但馬の味」に仕立てる醤油工場、花房商店さん。その真摯な仕事っぷりに、醤油への愛情が感じられました。

そして、帰り際にはHANAFUSAシリーズ各種、米糀(1kg!)、醤油麹(1kg!)……と、あれもこれもと買い求め、スーツケースが閉まらないほどになってしまった取材班の2人。コロコロが付いているのになかなか進まないスーツケース。どういうことなの。
「オンラインショップがあったじゃないか!」と気付いたのは、帰りの電車の中でした。お互いに2kg強の幸せの重みを抱えながら、帰路へとついたのでした。

花房さん、お世話になりました!
買い残したさしみ醤油はオンラインショップで買いますね!!!

有限会社花房商店 代表取締役 花房靖裕さん

有限会社花房商店 代表取締役 花房靖裕さん

兵庫県生まれ。京都芸術短期大学映像コース卒業後、大阪のCGプロダクションにてCGデザイナー/テクニカルディレクターとして勤務。2004年に、実家「有限会社花房商店」を継ぐべく故郷に戻り、2014年に代表取締役就任。「味噌ソムリエ」の資格も持つ。
現在7代目当主として、伝統的手法を守りながら、醤油や味噌の可能性をさまざまなメディアで発信している。

■しょうゆの花房

有限会社花房商店
住所:〒669-6201 兵庫県豊岡市竹野町竹野375
TEL:0796-47-0003  FAX:0796-47-0004
定休日:土曜・日曜・祝日
オンラインショップ:http://www.syouyuhanafusa.co.jp/html/syo/syo_shopping.htm
しょうゆの花房公式サイト:http://www.syouyuhanafusa.co.jp

いしだわかこ

いしだわかこ

ライター・編集者・マンガ家。雑誌編集者、制作会社、少女マンガ誌連載などを経てフリーに。インタビュー取材をメインに、紙・Web問わず活動中。最近では、電子書籍編集や企業・行政広報誌の制作ディレクションなども行っている。 ウェブサイト

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