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2017年04月19日

モンゴルを支える「白い食べ物(乳製品)」が生みだす、ナチュラルチーズの作り方

広大な草原で移動式住居「ゲル」に暮らす遊牧民と馬の美しい姿…。モンゴルと聞くとそのようなシーンを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか? また、ハッコラ編集部としては、モンゴルの伝統的な牧畜業による豊かな乳製品とそれらの発酵食品にも思いを馳せてしまいます。

広大な草原で移動式住居「ゲル」に暮らす遊牧民と馬の美しい姿…。モンゴルと聞くとそのようなシーンを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか? また、ハッコラ編集部としては、モンゴルの伝統的な牧畜業による豊かな乳製品とそれらの発酵食品にも思いを馳せてしまいます。

今回は、東京都渋谷区のバー「Li-Po(リポ)」で開催された『モンゴルのナチュラルチーズを味わう会』に参加させていただき、モンゴルでナチュラルチーズを手作りしている「サント・ミルクの泉」社の重田アリカさんに、モンゴルの風景や遊牧民の暮らしとともに、ナチュラルチーズの作り方についてのお話を伺いました。

遊牧民の暮らしを支援するために、ミルクの販路拡大としてチーズづくりに取り組む

「サント・ミルクの泉」社が提供するナチュラルチーズブランド『サント草原の恵み』は、モンゴルの首都ウランバートルから北西に300kmほどの場所にある小さな村・サント村で作られています。ウランバートルへは成田空港から5時間半くらい。モンゴルの面積は日本の約4倍。ご存知のように、その大半を草原地帯が占めています。

「サント・ミルクの泉」社が提供するナチュラルチーズブランド『サント草原の恵み』は、モンゴルの首都ウランバートルから北西に300kmほどの場所にある小さな村・サント村で作られています。

ラクダ・馬・牛・羊・ヤギが人間の20倍以上もいる国、モンゴル

『サント草原の恵み』はその名の通り、モンゴルの広い草原に自生する30種類ほどの牧草を食べる牛のミルクを使ってつくられたチーズです。
モンゴルは、ラクダ・馬・牛・羊・ヤギが、人間の20倍以上もいる国。サント村のある地域は、モンゴルの中では比較的降水量の多い地域で、豊かな草原が広がっています。

搾りたてのミルクをチーズにして遠くまで運ぶ

重田さんは、モンゴルの遊牧民の暮らしと市場がリンクし、持続的な発展ができるよう支援するNGO活動に、2003年より携わってきました。ですが、物流や冷蔵設備が未整備なモンゴルでは、せっかくの搾りたてのミルクをウランバートルなどの遠くの市場に送り出すことはできません。
そこでサント村では、2006年から4年間、日本の技術者の指導を受けてチーズづくりをスタートしました。チーズに加工することによって、村から遠く離れた場所まで出荷できるようになるからです。2013年には会社「サント・ミルクの泉」を設立して、チーズの製造・販売に取り組んでいます。

モンゴル生まれのナチュラルチーズ『サント草原の恵み』を、モンゴルを旅した気分で味わう

渋谷にあるバー「Li-Po(リポ)」。オーナーの伊藤美恵子さんは、パルコや山本寛斎事務所に勤めた後、2008年にこのお店をオープン。お店には音楽や映画、編集者などが集い、毎週、ほぼ何かのイベントが開催されています。

この日の会場は、渋谷にあるバー「Li-Po(リポ)」。オーナーの伊藤美恵子さんは、パルコや山本寛斎事務所に勤めた後、2008年にこのお店をオープン。お店には音楽や映画、編集者などが集い、毎週、ほぼ何かのイベントが開催されています。

会場には『サント草原の恵み』のナチュラルチーズに合わせたおつまみが並べられました。

会場には『サント草原の恵み』のナチュラルチーズに合わせたおつまみが並べられました。
日本ではまだめったに食べることができないモンゴル産のナチュラルチーズ、そして美味しいおつまみとお酒を味わいつつ、いよいよ重田さんのお話がスタートです。

日本ではまだめったに食べることができないモンゴル産のナチュラルチーズ、そして美味しいおつまみとお酒を味わいつつ、いよいよ重田さんのお話がスタートです。

お料理は、ピリカタントの西野優さんが担当。書籍の編集者から「旅と料理」をテーマとした書店を開いたのち、現在は出張料理やレシピ提案など、幅広く活躍されています。
お料理は、ピリカタントの西野優さんが担当。書籍の編集者から「旅と料理」をテーマとした書店を開いたのち、現在は出張料理やレシピ提案など、幅広く活躍されています

雄大なモンゴルの暮らしに思いを馳せる

重田さんが撮影されたモンゴルの写真を見ながら、モンゴルでのくらしについて伺いました。

重田さんが撮影されたモンゴルの写真を見ながら、モンゴルでのくらしについて伺いました。

モンゴルの乳牛は1年中ミルクを出さない

日本では、乳牛は1年中ミルクを出しますが、モンゴルではすべて自然のサイクルに合わせて進みます。
つまり、牛は春に子牛を生み、春から夏にかけて子牛にミルクを与えます。遊牧民たちは、まず子牛にしっかりミルクを飲ませ、子牛たちがある程度の大きさに育ってから、ミルクを母牛から「おすそ分け」してもらうのです。

重田さんが撮影されたモンゴルの写真を見ながら、モンゴルでのくらしについて伺いました。

モンゴルの食事は「白い食べ物(乳製品)」と「赤い食べ物(肉)」に支えられている

モンゴルの食事は「赤い食べ物」と「白い食べ物」に支えられていると言われています。「赤い食べ物」とは、家畜の肉。そして「白い食べ物」は乳製品です。モンゴルの遊牧民にとってミルクは飲み物ではなく、肉と並ぶ食べ物であり、数十種類の乳製品があるそうです。

5月頃に遊牧民さんの家に、チーズづくりに必要なミルクの買い付けの相談に行きます。その前から電話などで相談していますが、会いに行くのが楽しみなんです。チャイやボーブという揚げ菓子がとっても美味しいんですよ

「5月頃に遊牧民さんの家に、チーズづくりに必要なミルクの買い付けの相談に行きます。その前から電話などで相談していますが、会いに行くのが楽しみなんです。チャイやボーブという揚げ菓子がとっても美味しいんですよ」。(重田さん)

こちらの家のご主人は、チーズづくりに賛同してくれて、とても良心的な値段でミルクを分けてくれています。素敵な方で、ついたくさん写真を撮ってしまいました

「こちらの家のご主人は、チーズづくりに賛同してくれて、とても良心的な値段でミルクを分けてくれています。素敵な方で、ついたくさん写真を撮ってしまいました」。(重田さん)

夏は遊牧民にとってもっとも過ごしやすく、草原も美しい季節

夏は、春先に生まれた子牛も大きくなり、母牛が一番ミルクを出す季節。重田さんのチーズづくりも本格化する時期です。

夏は、春先に生まれた子牛も大きくなり、母牛が一番ミルクを出す季節。重田さんのチーズづくりも本格化する時期です。

「サント村の周辺は農業も盛んなので、夏の間、牛たちはより高度の高い山の方へ移動します。そうしないと牛が畑に入ってしまうからです。モンゴルの牛は、もともといた在来種、スイスから来たシンメンタール種、カザフスタンのホワイトヘッド種の血を引いています。広い草原を歩き回るのに適した牛です」。(重田さん)

子牛は、ずっと母牛と一緒にいるとミルクをどんどん飲んでしまうので、ある程度大きくなると、草原の別の場所で放牧します。夏は、遊牧民にとっても過ごしやすい季節で、牛を放牧しながら、果物を摘んで食べたりして、のんびり過ごせる時期です。昔は、馬に乗って牛を追っていましたが、最近ではバイクに乗る人が増えています

「子牛は、ずっと母牛と一緒にいるとミルクをどんどん飲んでしまうので、ある程度大きくなると、草原の別の場所で放牧します。夏は、遊牧民にとっても過ごしやすい季節で、牛を放牧しながら、果物を摘んで食べたりして、のんびり過ごせる時期です。昔は、馬に乗って牛を追っていましたが、最近ではバイクに乗る人が増えています」。(重田さん)

モンゴルの草原の恵みが詰まった手づくりチーズ

モンゴルの草原の恵みが詰まった手づくりチーズ

この日の会には去年つくったチーズのほかに、一昨年につくり、熟成させたチーズも出されていました。一昨年は干ばつでミルクの出が悪く、チーズづくりも苦労したそうですが、熟成させることでより風味が増しています。

重田さんのチーズで作ったラクレットも振る舞われました
重田さんのチーズで作ったラクレットも振る舞われました

ナチュラルチーズの作り方

「チーズづくりには、1日300リットルのミルクを使います。トラックで運ばれてきたミルクを湯煎して殺菌することからスタートするのですが、30リットルの鍋で湯煎するので、10回、繰り返します」。(重田さん)

チーズづくりには、1日300リットルのミルクを使います。トラックで運ばれてきたミルクを湯煎して殺菌することからスタートするのですが、30リットルの鍋で湯煎するので、10回、繰り返します

「その後、適温まで冷まして、乳酸菌添加→凝乳酵素添加→カードカット→ホエー抜き→型詰め→脱水→塩漬け、とひとつひとつ丁寧に作業を進めます。
最後に地下の熟成庫で6カ月以上、何度も表面を拭き、上下をひっくり返して熟成を進めます」。(重田さん)

適温まで冷まして、乳酸菌添加→凝乳酵素添加→カードカット→ホエー抜き→型詰め→脱水→塩漬け、とひとつひとつ丁寧に作業を進めます。

適温まで冷まして、乳酸菌添加→凝乳酵素添加→カードカット→ホエー抜き→型詰め→脱水→塩漬け、とひとつひとつ丁寧に作業を進めます。

地下の熟成庫で6カ月以上、何度も表面を拭き、上下をひっくり返して熟成を進めます

モンゴルの草原に自生した牧草のみを食べる牛のミルクはおいしい

参加者からは、モンゴルのチーズの特長について質問も出ました。

「ミルクの味は、牛が食べた草の味で決まります。チーズづくりが盛んなフランスやスイスでも山の上の方では、牛たちは自然に生えた草しか食べていないと思いますが、ほとんどが栽培された牧草や飼料を食べています。ですが、サント村の牛たちは、モンゴルの草原に自然に生えた草しか食べていません。そして、ヨーロッパの草とモンゴルの草は違います。モンゴルの草で育まれたミルクを活かしたチーズを作っていきたいと思っています」。(重田さん)

重田さんと、この回を主催した編集者の菅野和子さん
重田さんと、この回を主催した編集者の菅野和子さん

「サント・ミルクの泉」社では、モンゴルでのチーズづくりを応援してくれる「友の会」会員を募集しています。気になった方は、ぜひ入会なさって、来年できるチーズを予約してみてください。

詳細

サント草原の恵み友の会

サント草原の恵み友の会
●一口5,000円(送料込)
●1年以上熟成したチーズ(2016年産)300g(1200円/100g)
●6カ月以上熟成したチーズ(2017年産)300g(750円/100g)
●メールやFacebookの非公開グループでの近況報告 など。チーズは来年1月頃に送付の予定。
○連作先:arica@max.hi-ho.ne.jp

教えてくれた方

「サント・ミルクの泉」社代表 重田アリカ
モンゴルの小さな村・サント村で、雄大な草地で放牧されている牛のミルクを使い、ナチュラルチーズブランド『サント草原の恵み』のチーズを手作りしている。

haccola編集部

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