先日、中嶋マコトさんとhaccola編集部で訪問させていただいた「伊勢半本店 紅ミュージアム」 。
紅が発酵を経て作られていることも驚きだったのですが、実はあのお歯黒も発酵していたということを「伊勢半本店 紅ミュージアム」で学ぶことができました。今回はそんなお歯黒について注目してみたいと思います。
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あのお歯黒も発酵コスメだった!
お歯黒の化粧をする女性(『今風化粧鏡』、五渡亭国貞画)
江戸時代の化粧に使われた色彩は三色だけで、その色は紅の赤、おしろいの白、眉墨とお歯黒の黒のみだったということは前回の記事「すごく使える!発酵コスメ『紅』こそ忙しい女性にオススメ【中嶋マコトの発酵コスメビューティ】」でもご紹介させていただきました。中でもお歯黒は時代劇や浮世絵などでもお馴染みで、とても印象的ですよね。そんなお歯黒も実は発酵が関係しています。
お歯黒はどうやってできるの?
お歯黒道具 伊勢半本店 紅ミュージアム蔵
お歯黒は、以下の2つを交互に歯に塗りつけて歯を黒く染めるものです。とても苦いので最後にうがいをします。
・ふしのこ:うるし科の「ヌルデ」と言う木の若葉などに虫の刺激で出来た虫こぶを砕いて粉にしたもの。
・お歯黒水:お米のとぎ汁の中に錆びた釘や折れた針などの古鉄を入れて、酸性の酢や酒などを入れてかまどの近くで1ヶ月ほど発酵させたもの
お歯黒は「鉄漿」とも書きますが、「漿(ショウ)」とは「米を煮た汁、おもゆ」を指します。“鉄の入ったおもゆ”は、読んで字のごとく「鉄漿(おはぐろ)」と呼ばれていたのですね。
また、このお歯黒水は、1ヶ月も発酵させたものなのでとても臭かったそうです。
歯周病や虫歯の予防にもなったお歯黒
「江戸姿八契」(部分) ・香蝶楼国貞画 国立国会図書館蔵
お歯黒は歯周病や虫歯の予防にもなったそうです。お歯黒水に含まれる酢酸第一鉄と、ふしのこのタンニン酸が歯や歯肉に作用し、虫歯の予防になるのだとか。お歯黒は、見た目だけではなく口内のトラブル予防という意味で理にかなった部分もあったと言います。また、お歯黒が持つ期間は、口の中のことなので個人差があり、毎日塗り替える人もいれば1週間に1度の人もいたのだとか。身分の高い人は夫が起きてくる前に身だしなみを整えるという意味でも毎日お歯黒をしていたそうです。ただし、いずれにしても取れてきて白い歯が見えるというのはだらしないことで、そうなる前に塗り直すというのがマナーだったのだとか。
お歯黒をして半元服、眉をそり落として本元服
結婚が決まるとはじめてお歯黒をして、そして出産をすると眉毛をそり落とすというのが昔の風習でした。お歯黒には忠義や貞節という意味があり、お嫁にきてその家に染まったら他の色には染まり変わらないという意味の表れでもあったそうです。
ミュージアムで見せていただいた浮世絵でも、結婚前の女性は目弾きといって、目の縁に紅をひき、眉毛もきれいにあり、華やかな髪飾りを付けていました。
「当世美人合踊師匠」・香蝶楼国貞画 国立国会図書館蔵
反対に結婚出産後の女性は髪飾りもシンプル、べっこうのかんざしだけ。眉毛もそり落としているため、いわば現代の男性の髭剃りあとのように青い感じでした。
このように髪型やお化粧で身分や年齢、未婚か既婚かなどが昔はわかったのです。
「当世美人合 かこゐ」(部分)・歌川国貞画 山口県立萩美術館・浦上記念館
紅やお歯黒など、江戸時代の化粧品にこんなにも発酵が関連していたとは驚きました。
江戸時代も現代も、美しくなりたい女性の想いは変わらない
『都風俗化粧伝』顔面之部より「鼻の低きを高う見する伝」・文化10年(1813)刊行 伊勢半本店 紅ミュージアム蔵
伊勢半本店 紅ミュージアムには江戸時代末期から大正まで約100年間大ベストセラーになったとされる「都風俗化粧(けわい)伝」という本も展示されており、鼻を高く見せる方法や顔の形に似合う結髪の方法、手足のケアなどまで載っており、コンプレックスを解消してきれいに見せたいという女性の心理は昔も現代も変わらないということをまじまじと感じることができました。
貴重な紅をさしてもらいにいきつつ、江戸時代の女性の美意識に触れるのもなかなか素敵な時間ですよ。「伊勢半本店 紅ミュージアム」、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
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©Ryoichi Toyama
伊勢半本店 紅ミュージアム
所在地:〒107-0062 東京都港区南青山6-6-20 K’s南青山ビル1F
TEL:03-5467-3735
開館時間 :10:00~18:00(入館は17:30まで)
※ただし、企画展開催中は開館時間に変更が生じる場合があります。
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日または振替休日の場合は、翌日休館)、年末年始
http://www.isehanhonten.co.jp/index.html