【発酵祭 in大阪】アツい「醸し場」での1日を完全レポート!

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haccolaでもご案内しておりました「発酵祭 in 大阪」が去る5月4日に開催されました。100人以上もの発酵マニアが国境を越えて集結。賑やかで心地よい学び時間となった当日の様子をお届けします。

主催・ナビゲーターは麹文化研究家の、なかじ(南 智征)さん
主催・ナビゲーターは麹文化研究家の、なかじ(南 智征)さん

第2回目となる「発酵祭」の会場は大阪、レンガ造りがひときわ趣を感じさせる歴史的建築物の大阪市中央公会堂。
各地から集まった参加者のみなさんも口々にその雰囲気を絶賛するほど素敵な場所でした。

大阪市中央公会堂
大阪市中央公会堂

会場は100人を超える参加者でいっぱいに!
会場は100人を超える参加者でいっぱいに!

「発酵祭 in大阪」、個性が光るトークゲストの”発酵人”は4名

発酵について学びを深める発酵祭は、各業界それぞれの立場で発酵した生き方をする「発酵人」がゲストとなり、約1時間ずつのトークで進行していきます。

トークゲスト、お一人目は京都の老舗”もやし屋”、菱六(ひしろく)代表の助野彰彦さん

京都の老舗

トークおひとりめは、京都の老舗”もやし屋”、菱六(ひしろく)代表の助野彰彦さん。
ご自身が一体なん代目の店主か定かではないというほど歴史ある菱六の歴史から始まり、たくさんのスライド写真と共に聞き応えたっぷりのお話を聞かせてくださいました。

“もやし”とは、麹をつくる元となる種麹のこと。
少し緑がかった様子を新緑に例えた先人たちが「新緑に萌える」ことから名付けられたと言われています。

歴史は想像以上に古く、なんと8世紀初期の「播磨国風土記」にはすでに、神へお供えしたご飯にカビが生えたこと、そこからお酒を作って神様に献上し、後日みんなで宴会をしたことが書かれているんだとか。

平安時代になると京都の碁盤の中だけで300軒以上もの酒蔵が存在し、それら全てが麹を購入する麹屋も増加。「麹座」と呼ばれるほどたくさんの麹屋が存在し、切磋琢磨していたといいます。

同じく京都で古くに種麹屋をしていたのが「近藤家」。そこに残された360年前の方伝書には、なんと菱六をライバル視した記述があるそうで、それによりいかに菱六の歴史が古いか、そして当時の環境の中でいかに職人たちが麹作りに真剣だったかを感じさせてくれました。

時代の変化のなかで酒蔵は減少、それに伴い、もやし屋も廃業が続き、現在稼動しているもやし屋は全国にわずか6軒ほど。菱六は京都で唯一のもやし屋として、全国に種麹を卸しているそうです。

東京農業大学で醸造を学ばれた助野さんのお話は、麹についてより専門的で本格的。スライドには顕微鏡でみる様々な麹の状態が映し出され、分かりやすい言葉で解説くださいました。

また、麹とひとことで言ってもその種類はかなり幅広く、蔵ごとのオリジナルを作ったり、新たな種類を製品化させたりと、菱六では現在60種類以上もの種麹を扱っていらっしゃるんだとか。

トーク後の休憩時間には、菱六の麹で作られた豆乳甘酒が全参加者に振舞われました。
甘酒のおいしさから、周囲と談笑される方も目立ってきた会場内。いい感じにほぐされてきたのが感じられつつ、続くゲストスピーカーは、以前「クラフトビールについて語ろう! 発酵男子のCOZY TALK vol.6 レポート」の記事でもご紹介した発酵デザイナーの小倉ヒラクさんの登場です。

また、トーク後の休憩時間には、菱六の麹で作られた豆乳甘酒が全参加者に振舞われました。

トークゲスト、お二人目は発酵デザイナーの小倉ヒラクさん

トーク開始早々、発酵醸造文化の認知拡大を目的に制作されたアニメーション「こうじのうた」を紹介。

トークゲスト、お二人目は発酵デザイナーの小倉ヒラクさん

さらになんと「今ここで、みんなで一緒に踊ってみましょう!」という展開へ!

発酵醸造文化の認知拡大を目的に制作されたアニメーション「こうじのうた」

ヒラクさんからサビ部分の振り付け指導を経て、繰り返しサビを踊る参加者のみなさん。一気に笑顔が弾ける和やかなムードに変わりました。
麹の特性や素晴らしさを、体の動きをもって理解できる「こうじのうた」、お子さんたちを含めたたくさんの人たちに伝わる素晴らしいツールですね。

ヒラクさんのお話は、「ブログやメディアで読む文章は論理的なんだけど、実際に聞く話は感情豊かだね」となかじさんがおっしゃっていた通り、発酵にまつわる幅広い知識をユーモラスにシェアしてくれました。

特に印象的だったのは、もともとデザイナーであり、今も日本で唯一の”発酵デザイナー”として、「発酵とデザインの共通点は秩序を作り出すこと」だとおっしゃっていたことでした。
人にとって役立つための秩序を考えて、一見ムリと思えることまでも作り出すことができるのは、発酵もデザインも同じこと。
全国で講演などをしていると、「自然と人間の関係を見いだす発酵文化」がコミュニティデザインという観点からも見直されていることがわかるそうです。こういった視点は、ヒラクさんならではですね。

トークゲスト、三人目は東海醸造の本地猛さん

3人目のゲストスピーカーは、江戸時代から続く愛知県の伊勢街道沿いにある東海醸造の本地猛さん。

3人目のゲストスピーカーは、江戸時代から続く愛知県の伊勢街道沿いにある東海醸造の本地猛さん。

一般的にお味噌の大きな3分類として、米味噌、麦味噌、豆味噌が挙げられますが、東海醸造が作っているのは「豆味噌」。愛知県を代表する食文化とも言える豆味噌は、米麹などを使わず、大豆そのものを麹にして塩と混ぜて長期熟成するのが特徴です。さらにその製造過程で取れるたまり醤油も東海醸造の人気商品。
7名の従業員さんでいずれも手作り。決して大きくはない蔵の東海醸造が丁寧に、そして真摯に味噌作りに向き合っているかを感じるお話が続きました。

通常でも2年は熟成させる豆味噌ですが、東海醸造ではなんと3年半も熟成させるんだとか。
「夏を3回経験させる」という長期間熟成があの濃い色合いと独特の風味をもたらす秘訣だそう。編集部も試食させていただきましたが、今まで食べた八丁味噌とはまったく違う、しょっぱ過ぎず、まるでうまみの塊のような大変おいしいお味噌でした。

さらに印象深かったのは、木樽のお話。
味噌を長期間熟成させるために欠かせない木樽は、熟成に必要な菌たちの宝庫。「作り手の命」とも言えるほどに大切なものだとおっしゃっていました。
現在、東海醸造では大正時代に作られた木樽を使っていらっしゃるそうですが、近年では全国的に職人たちが減少し、木樽のメンテナンスが問題になっているそうです。
木樽を止めている箍(たが)が緩んでしまうと、熟成期間の間に隙間から塩水が抜け出てしまい、良いお味噌ができないことにもなりかねません。
木樽職人の若手育成は、味噌蔵や発酵醸造界でも直近の課題といえるようです。

トークゲスト、四人目はラジオ放送局「ゆめのたね」代表の佐藤大輔さん

最後のゲストスピーカーは、直前までなかじさんと一緒に司会進行をしていたこちらの男性、ラジオ放送局「ゆめのたね」代表でプロデューサーでもある佐藤大輔さんです。

最後のゲストスピーカーは、直前までなかじさんと一緒に司会進行をしていたこちらの男性。ラジオ放送局「ゆめのたね」代表でプロデューサーでもある佐藤大輔さんです。

「ゆめのたね」は全国6箇所のスタジオで、400以上もの番組で構成されるインターネットラジオ。市民発信型の無料放送メディアでありながら、無借金経営であることや、開業1年でリスナー3万人、それに伴い業績も右肩上がりであることなどが話題の、ニュータイプなラジオ放送局です。

ラジオ局を立ち上げられるまでの経歴をリズミカルに、そしてユーモアたっぷりにお話くださる佐藤さんに、会場中がどんどん引き寄せられていくのがよくわかりました。
「人」に光を当てること、その人の「活動」や「伝えたいこと」を全力で応援するという熱いコミットにまつわるエピソードの数々。そこには常に、佐藤さんのまっすぐな思いと、信頼するご家族やお友達の支えがあったそうです。

心を豊かにするために「その時わくわくすることにトライする」、
自分がどんな人間かを知るために「表現の場を持つ」、
世界が循環するために「するべきことをちゃんとやる」「感謝する」等、
佐藤さんがご経験から学ばれた、社会を良くするためにすぐにでも実践できることを具体的に紹介くださいました。

なかじさんが佐藤さんのことを「生き方が発酵している」と表現されていたのも納得。まさに「発酵し発光する人生」のお話でした。

「発酵祭 in大阪」、物販コーナーもアツい!

ヒラクさんのご著書やTシャツ、東海醸造の商品、クッキーなどなど、物販も充実!休憩のたびに賑わっていました。

「発酵祭 in大阪」、物販コーナーもアツい!

ヒラクさんのご著書やTシャツ、東海醸造の商品、クッキーなどなど、物販も充実!休憩のたびに賑わっていました。

「発酵祭 in大阪」、会場からのQ&Aタイムはハイレベルな質問のオンパレード!

「発酵祭 in大阪」、会場からのQ&Aタイムはハイレベルな質問のオンパレード!

最後はゲストピーカーに向けて会場からの質疑と、登壇者同士のクロストークの時間へ。

待ってましたとばかりに会場からは次々に手が挙がります。どれもゲストが唸るほど専門的で、発酵マニアたちから飛んでくるマニアックな質問の数々。

・小麦を麹にすることを聞かないのはなぜだと思うか?
・味噌の表面に厚手の膜ができたが、一体何だと思うか?
・かつて広島に大豆を使わない味噌があったと聞いたが、大豆を使わず作れると思うか?
・(ヒラクさんの講演に出てきた)紅茶につくカビとはどんなカビだったのか?
・豆味噌に適した大豆の品種は?
・酒蔵で使っていた木樽をつかって味噌を仕込むことができるのか?

などなど。

小倉ヒラク

本地猛

ひとつひとつ丁寧に回答くださるゲストの皆さん。時間いっぱいまでQAが続いた後は、登壇者同士のクロストークへ。

最近の日本酒の菌のトレンドは何か?

・最近の日本酒の菌のトレンドは何か?
・豆味噌の味噌玉に使う種麹などんな菌か?

などなど、こちらも盛り上がります。参加者の皆さんもメモを取っている姿がたくさん見られました。

京都の老舗”もやし屋”、菱六(ひしろく)代表の助野彰彦さん

朝11時から始まった発酵祭も終盤へ。最後の感想では、なかじさんからこんなまとめの言葉も。

主催・ナビゲーターは麹文化研究家の、なかじ(南 智征)さん

「人にとっての酵素は”感情”。
 横にいる人、周りにいる人と影響しあって生きていけたら良い。
 発酵して、それをまた社会に還元することで良い世界になると思う。」

最後まで熱い発酵祭も閉幕。次回は『発酵祭 in 札幌』の開催を予定されているそうです。引き続き目が離せませんね。

最後まで熱い発酵祭も閉幕。次回は北海道開催を予定されているそうです。引き続き目が離せませんね。

イベント振り返り

発酵祭 in 大阪
日時:2017年5月4日(木祝)
開演:11:00~16:00(開場 10:30)
場所:大阪市中央公会堂 小会議室
 ※イベントは終了いたしました
【イベント主宰】
なかじ(南 智征)
発酵冒険家・麹文化研究家・瞑想家・みなみ屋主宰。
・ブログ:腸と発酵とココロとカラダ。 なかじの発酵と冒険の日々
・みなみ屋:https://minamiyasun.jimdo.com/
【トークゲスト】
助野彰彦(京都老舗種糀屋 株式会社 菱六代表)
小倉ヒラク(発酵デザイナー)
本地猛(東海醸造)
佐藤大輔(ゆめのたね放送局)
【イベント詳細】
https://hakkoudaigaku.wixsite.com/fermentationfestival
【イベント予定】
発酵祭 in 札幌

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