発酵通信 in ベトナム【魚醤「ニョク・マム」編】

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ベトナムから現地の発酵情報をお届け!
今回は、日本でもおなじみのベトナムの魚醤「ニョク・マム」について、ベトナム市場に特化したマーケットリサーチ企業『B&Company』社の現地スタッフ、アンさんに教えていただきました。


Q:ニョク・マムとはどんな調味料なのですか?

A:ニョク・マムは、魚に塩を加えて発酵させた、塩味で魚の風味がする半透明の液体

ニョク・マムは、魚に塩を加えて発酵させた、塩味で魚の風味がする半透明の液体

ニョク・マムは、魚に塩を加えて発酵させたもの。塩味で魚の風味がする半透明の液体です。
伝統的なニョク・マムは、2つの材料で作られます。魚と塩です。
魚は新鮮であれば、1匹丸ごとでも、切り身でもどちらでも構いません。魚は、イワシ、アジ、ニシン、サバなどさまざまなです。今では、工場でつくられたニョク・マムが一般的になっています。
伝統的なニョク・マムの作り方は、以下の通りです。

1)魚と塩を混ぜる
新鮮な魚と塩を3:1の比率で混ぜます。それらを容器に入れます。伝統的な作り方では、容器は籐の縄で補強された木製の桶が使われます。

2)発酵
12〜15カ月間、冷所で発酵させ、浸出液を分離したものがニョク・マムです。発酵期間は、概ね12カ月ですが、容器の大きさ、天候、魚の種類などによって異なります。

木製の桶で発酵させる
木製の桶で発酵させる

商品として販売されているニョク・マムは、伝統的なニョク・マムを水で5〜7倍に希釈した後、砂糖や唐辛子、ニンニクなどが加えられます。
ベトナムには、フーコック島、ファンティエットなど、全国各地にニョク・マムの名産地があります。

ベトナムのニョク・マムとタイのナンプラーは似て非なるもの

ベトナムのニョク・マムと、タイのナンプラーは作り方が似ていますが、塩味と風味がかなり異なります。ナンプラーは、より塩味が強く、匂いも強いです。

ニョク・マム
ベトナムのニョク・マム

ナンプラー
タイのナンプラー

Q:ニョク・マムの食べ方を教えてください

A:ニョク・マムは、調味料として、または、「ニョク・チャム」のベースとして使用

ニョク・マムは、調理の際に味付けに使ったり、万能つけたれ「ニョク・チャム」のベースとして使います。

ニョク・マムは、調理の際に味付けに使ったり、万能つけたれ「ニョク・チャム」のベースとして使います。
ニョク・マムはベトナム料理の代表的な調味料で、揚げ物から煮物やスープなど様々な料理に使われます。ニョク・マムを調理に使う際のポイントをご紹介します。

ニョク・マムの使い方

✓肉を漬け込まない
肉が硬く、パサパサになってしまいます。

✓長時間火を加えない
調理の際、最初からニョク・マムを加えると、香りが飛んでしまいます。また熱によってビタミンが壊れてしまいます。

✓料理の仕上げに
炒め物と煮物では、他の調味料と同様に、食べ物の仕上げに加えてください。キッチンから食卓に運ぶ直前に加えて、香りをつけるのがポイントです。

Q:ニョク・マムの選び方を教えてください

伝統的な製法で作られたものと、工場で生産されたものを区別する

伝統的な製法で作られたニョク・マムと、工場で生産されたニョク・マムを区別するために、消費者はタンパク質の含有量に着目しています。タンパク質を多く含む方が良いと見なされています。

2014年8月に行われた調査によると、ベトナムの消費者はニョク・マムを選ぶ際には、味、価格、品質、ブランドで検討しています。
伝統的な製法で作られたニョク・マムと、工場で生産されたニョク・マムを区別するために、消費者はタンパク質の含有量に着目しています。タンパク質を多く含む方が良いと見なされています。
また贈り物としても好まれ、特に年齢の高い、高所得者層は品質にこだります。原料、ブランド、評判、そして高いタンパク質含有量や豪華なパッケージが重要です。一般的に、伝統的な製法で作られたニョク・マムが好まれています。

良いニョク・マムは、タンパク質の含有量が多いもの

良いニョク・マムは、タンパク質の含有量が多いもの

良いニョク・マムを選ぶポイントは以下2点です。

✓タンパク質の度数
ニョク・マムに関するベトナムの基準によると、ニョク・マムはタンパク質が豊富で、栄養価も高いとされています。最高級品質のものは、タンパク質の度数が48度もあります。高級品は40度以上、1級品は24度以上、2級品は16度以上とされています。つまり、度数が25度以上のものを選ぶと良いのです。

✓色と透明度
濃い茶色または黄色がかった茶色で、濁りがなく、食べると舌の先で塩味を感じ、喉ごしは甘くなり、特徴的な香りがあります。美味しいニョク・マムは、最初から最後まで塩辛いわけではありません。

Q:B&Companyアンさんに聞いた、オススメのニョク・マム3つ

手軽に手に入る、工場で作られたニョク・マム

大手メーカーは、マサン・コンシューマー・グループ、ハング・ティン・リミテッド、リアン・タイン・カンパニーです。中でもマサン・グループは、3つの主要製品で、65%のシェアを占めています。

『Chin-su』
イワシから作られた、サーモン風味の純粋ニョク・マム。価格は、1リットルあたり約65,000ベトナム・ドン(約320円)。

Chin-su
Chin-su

『Nam Ngư』
イワシから作られたニョク・マムで、健康のための「4つのノー(no 4)」で知られています。つまり、「有害な尿素を含まない」「香りを変化させる細菌がいない」「食中毒を起こす細菌がいない」「カビや酵母がいない」の4つ。価格は、1リットルあたり約40,000ベトナム・ドン(約200円)。

Nam Ngư
Nam Ngư

『Đê Nhi』
イワシから作られたニョク・マム。価格は、1リットルあたり約20,000ベトナム・ドン(約100円)。
Đê Nhi

伝統的なニョク・マム

3つの有名な産地があります。
1)フーコック島(キエンザン省)

フーコック島(キエンザン省)

フーコック島では、200年にわたってニョク・マムが作らています。古くから、フーコック島はたくさんのいわしが取れることで知られていました。
フーコック島のニョク・マムの原料は、生のイワシのみ。新鮮なものを手早く塩と混ぜて発酵させます。フーコック島のニョク・マムは、タンパク質を豊富に含み、匂いはさほどありません。
現在、フーコック島には、100種類くらいのニョク・マムのブランドがあります。中でも『Khai Hoan Phu Quoc』が最も人気です。価格は1リットルあたり195.000ベトナム・ドン(約960円)です。

ONG KY(Khai Hoan Phu Quocの製品)
ONG KYKhai Hoan Phu Quocの製品)

2)ハイフォン

ハイフォン

20世紀に入ってから知られるようになったハイフォンは、トンキン湾に面し、良好な漁場に恵まれています。ハイフォンのニョク・マムは、ムロアジが原料。落としぶたを使う圧搾製法ではなく、発酵中に定期的に水を加える撹拌製法で作られます。そのため香りはより軽やかになります。
今では30あまりのブランドがあり、価格は1リットルあたり90,000ベトナム・ドン(約440円)です。

ハイフォンのニョク・マム
ハイフォンのニョク・マム

3)ファンティエット

ファンティエット

ベトナム南部にあるファンティエットでのニョク・マムづくりは、1809年から始まりました。原料はいわしとムロアジです。色が特徴的で、いわしで作られたニョク・マムは麦わら色、あじで作られたニョク・マムは明るい茶色になります。
価格は1リットルあたり90,000ベトナム・ドン(約440円)です。

Q:最近出てきた新しいニョク・マムはありますか?

A:乾燥ニョク・マムやクリーム状やキューブ状のニョク・マムなど

一般的にニョク・マムは液体状で、ガラスやプラスチックの容器に詰められています。ですが、特別な用途のニョク・マムもあります。乾燥させたニョク・マムは、軍向けです。輸送や保存がしやすいからです。また現在では、クリーム状やキューブ状のニョク・マムが、海外旅行に行く人や海外で暮らす人向けに小規模ですが作られています。こうしたニョク・マムは便利ですが、栄養や風味が損なわれてしまいます。

ニョク・マムに関するベトナムのあれこれ

ニョク・マムを初めて学問的に取り上げた「the complete history of Dai Viet」

ベトナム王朝が中国の皇帝にニョク・マムを献上したため、中国の皇帝もニョク・マムの匂いを嗅いだ

歴史的に見て、最初にニョク・マムを学問的に取り上げたのは、「the complete history of Dai Viet」(1679)だと思われます。この本では、997年までにベトナム人はニョク・マムの製法と使用方用を知っていたとされています。またベトナム王朝が中国の皇帝にニョク・マムを献上したため、中国の皇帝もニョク・マムの匂いを嗅いだ、と言われていました。
中国の学者が編纂した「Oriental cultural customs dictionary」は、ベトナムの典型的な料理トップ4を紹介しており、ニョク・マムは第1位にあげられています。またこの辞書ではニョク・マムは、魚からの抽出液という意味で「南魚露露」と書かれています。

映画「The Scent of fish sauce」(ニョク・マムの香り)

2014年の映画「The Scent of fish sauce」(ニョク・マムの香り)は、韓国のブチョン国際ファンタスティック映画祭(BiFan 2015)で評判となりました。ニョク・マムのエキゾチックな香りに合わせて、このショートフィルムはベトナム人の看護師と若いアメリカ人男性患者のロマンスを描いています。ベトナム人の看護師のマイは、負傷したアメリカ人男性の世話をするために雇われますが、彼がベトナム料理の美味しさに目覚めると、マイのロマンスは奇妙な方向に向かっていく…というストーリーです。

「fish-sauce foreign man」と呼ばれるシェフ、ディディエ・コーロウ氏

ハノイに5軒の有名レストランのオーナーで、以前はハノイの最高級ホテル「ソフィテル レジェンド メトロポール」のシェフとして腕を奮っていたディディエ・コーロウ氏の夢は、ニョク・マムの博物館を建てること。
ディディエ・コーロウ氏は、ホテルを訪れた世界的な著名人に料理を振るまった元フランス料理シェフとしてベトナムでは有名で、ニョク・マムに情熱を注ぎ、「Ong Tay nuoc mam(fish-sauce foreign man)」とも呼ばれています。「私は、ほとんどの料理にニョク・マム、それも伝統的なニョク・マムだけを使う。言い換えればニョク・マムは、私を情熱的に、クリエイティブにしてくれる材料です」と語っています。彼にとってニョク・マムは、海のエッセンスを集めた「花」のようなものです。彼の夢は、ニョク・マムの博物館を建て、ベトナムの若い世代が、ベトナムが誇る素晴らしい調味料であるニョク・マムについて学ぶことができるようにすることです。


B&Company

B&Company

「B&Company」は、ベトナム市場に特化したマーケットリサーチ企業です
「ベトナムで自社の商品やサービスを広めたい!」といった企業・個人の方々を “市場調査・現地パートナー探索・規制調査” 等を通じてサポートしています。

「B&Company」ならではの市場調査とは?
例えば、「ベトナムで味噌を販売したい」といった場合、“ベトナム人は味噌を食べる習慣があるのか?”、“ベトナムの味噌は日本の物と違うのか?”、“どの程度・頻度で、どこで購入するのか?価格帯はいくらくらいなのか?”、“輸出販売(現地で製造販売)する場合は、どのような手続きが必要なのか?”等、様々な情報を集め、事業として成立するかどうかの検討が必要となります。B&Companyは、強力なベトナム内外のネットワークを駆使し、リアルな現地情報を元に市場調査を行う会社です。

「B&Company」の強み
ベトナムに現地法人を構え9年超、様々な業種分野で100件以上の実績を持つマーケットリサーチ企業です。市場調査やコンサルティング、ビジネスサポート等のサービスはもちろん、f/s調査から法人設立までワンストップで支援しています。特に市場調査に関しては、B2B、B2C共に豊富な経験を持ち、予算・目的に応じた最適な調査設計が可能です。オンラインでのアンケートシステムを自社保有し、オフライン調査と組み合わせて、安価かつ効果的な調査を実施しています。

WEBSITEFacebooktwitter(B&Company代表による投稿)
問い合わせ: (mail) info@b-company.jp / (Tel) 03-5829-4006

参考リンク

http://vov.vn/kinh-te/quy-trinh-san-xuat-nuoc-mam-nguyen-chat-sieu-ti-mi-561519.vov#p3
http://www.thekitchn.com/whats-the-difference-between-thai-and-vietnamese-fish-sauce-230348
https://m.vietnambreakingnews.com/2016/11/the-french-man-who-dreams-of-building-a-fish-sauce-museum/
https://meovat9.com/meo-su-dung-mam-khi-nau-an-dung-cach-nhat.html
http://giaitri.vnexpress.net/tin-tuc/phim/sau-man-anh/phim-ngan-viet-ve-nuoc-mam-gay-chu-y-o-lhp-cua-han-quoc-3254388.html

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