【ザワークラウトの作り方】発酵のニューリーダー、サンダー・E. キャッツさん初来日!

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全米で出版後、ロングセラーとなった「天然発酵の世界(Wild Fermentation)」の著者であり、発酵食ブームの火付け役として世界各地でワークショップを開催するサンダー・E. キャッツさんが初来日!
渋谷の人気カフェ「デイライトキッチン」で行われた、サンダーさんによるザワークラウト作りのワークショップ&トークイベントに編集部がお邪魔しました。

デイライトキッチンでザワークラウトの作り方を教えるサンダー・E. キャッツさん

発酵界のレジェンド、サンダー・E. キャッツさんからザワークラウト作りを習おう!

サンダー・E. キャッツさんといえば知る人ぞ知る発酵界のレジェンド。著書は日本語でも「発酵の技法 ―世界の発酵食品と発酵文化の探求」や「天然発酵の世界」などが発売されています。

デイライトキッチンで開催されたザワークラウトワークショップで販売されていた発酵関連の本

世界各地で講演やワークショップをしているサンダーさん、意外なことに来日は今回が初めてとのこと。
「24年間も味噌や漬物をたくさん作ってきたけど、やっと日本に来ることができました」と嬉しそうに話してくれました。

会場は「デイライトキッチン」@渋谷

会場となったのは渋谷の人気オーガニックレストラン「デイライトキッチン」。

デイライトキッチンの外観(夜)

雰囲気のある古材を使ったインテリアは、どんな人にも落ち着きを与えてくれる上にとってもおしゃれ。ワークショップなどで食についての様々な情報を発信したり、企業の社員食堂をプロデュースしたりなど、唯一無二なお店です。

国際的に食文化を伝えているナンシー・シングルトン・八須さんも登場!

サンダーさんと一緒にトークゲストとしてイベントを盛り上げていたのは、やはり国際的に食文化を伝えているナンシー・シングルトン・八須さん。

デイライトキッチンでザワークラウトの作り方を教えてくれたナンシー シングルトン 八須さん

1988年に来日し、日本の伝統的な農家における食事や暮らしを世界に発信している、食のパイオニアのお一人です。ナンシーさんの著書「Japanese Farm Food」と「Preserving the Japanese Way」も発売以降たくさんの人に愛されているロングセラー。現在は英語やフランス語の出版だけですが、写真やデザインを眺めるだけでも一見の価値があり、どちらもオススメです。
日本語の著作には、「スタンフォードの花嫁、日本の農家のこころに学ぶ」があり、こちらもナンシーさんの半生やライフスタイルが書かれており、大変興味深い一冊となっています。

いよいよザワークラウト作り!レシピはとってもシンプル

ザワークラウトを作るためのキャベツの千切り

ザワークラウトのことで事前にサンダーさんから説明された注意点は「キャベツから出た水分にキャベツを全て漬け込む」という点のみ。
なんともシンプルです。

水分に漬け込む理由は、空気に触れているとカビが発生しやすくなり、それも発酵のひとつではあるものの、乳酸菌など優先したい微生物の働きを邪魔しにくくするため。カビなどが発生しないためにも野菜から十分に水分を引き出し、その水分に全ての野菜を押し込むことが大切とのこと。

今回、イベント参加者の一人ひとりに用意された材料は、ナンシーさんのお友達の農家さんで作られた有機栽培のキャベツ、約1キロ分。それを刻み、約20gの天然塩を揉みこんで、1リットル瓶に詰めたら完成です。
とってもシンプル!

さらに野菜の切り方について、サンダーさんは「千切りじゃなくても良い」と言います。
大きく刻んだ野菜のザワークラウトも味わいがあるそうで「細い千切りにしなきゃいけないという発想に捉われないで」との言葉に、自由な発想と多様性を大切にするお人柄が感じられました。

デイライトキッチンでザワークラウトの作り方を楽しむ参加者
自由な発想に刺激され、初めて言葉を交わす参加者たちも一気に和気あいあい。

ザワークラウトを作るためにキャベツをまぜる手
両手でしっかり揉みこむことで十分な水分を引き出します。

ザワークラウトを瓶に詰める手
瓶に移したら上からギュッと押し込んで水分の中へ

一つ残したキャベツの芯をザワークラウトと蓋との間にかませることで押し込みをキープします
最後は外葉を蓋のようにかぶせて、一つ残したキャベツの芯を蓋との間にかませることで押し込みをキープします。

会場は発酵ファンからの質問が止まらない!

ワークショップ中、会場内をまわって気軽に質問を受けてくれるサンダーさん。あちこちから作り方や注意点などに関する質問が飛び交いました。

ザワークラウトワークショップの参加者からの質問に答えるサンダー E キャッツさんとナンシー シングルトン 八須さん

Q:作る前に手や瓶の洗浄はどのくらいしたら良いですか?
A:「今日の瓶はデイライトキッチンのスタッフが熱湯で洗ってくれました。気になる人は事前に手を洗いに行くと良いでしょう。でも石鹸や消毒を使う必要はないと思います。それぞれの手には常在菌と呼ばれる微生物たちが生息しており、それこそが手作りの発酵を独創的でおいしいものに変化させてくれるからです。」

Q:キャベツ以外にどんな野菜を使うのが良いでしょうか?
A:「季節の美味しい野菜はなんでも良いと思いますよ。わたしはいつも、人参やきゅうりを丸ごと漬けたり、スライスしたりんごを入れるのもお気に入りです。」

Q:ハーブなどを入れても良いでしょうか?
A:「ハーブやスパイスをザワークラウトに入れると一段と素晴らしいものに仕上がります。好みのものを使うと良いと思います。キャラウェイシードやローレル、刻んだ生姜などを入れる人も多いですし、わたし自身はガーリックや唐辛子を少し入れる場合が多いです。
入れるタイミングは塩と一緒に入れて揉みこんで大丈夫です。あ、唐辛子を使う場合は最後に入れるようにしてくださいね、決して素手で揉み込まないことをオススメしますよ。」

Q:作って何日くらいから食べられますか?
A:「わたしは4日目くらいから食べることが多いですが、人によっては”3日目が良い”、”7日目がベスト”など、好みは様々です。大切なことは、発酵の過程を見守り、日々変化していく野菜の状態を感じることだと思います。」

Q:以前作った時にカビが生えました。今度そうなったらどうしたら良いでしょうか?
A:「カビのような胞子が見られた場合も慌てる必要はありません。ましてや丸ごと捨てたりせずに、その部分を取り除けば大丈夫。引き続き水分にきちんと浸かるようにしてあげましょう。」

当日限定!特製サンドイッチは全て発酵食で作られていた

サワードウから焼いたパンで作った発酵食サンドイッチを提供する「ガーデンハウス クラフツ」のKATYさん

それぞれのザワークラウトが瓶に収まってきた頃を見計らって、このイベント限定の軽食が配られました。
それも発酵食の食材を使ったスペシャルなホットサンド。

サワードウから焼いたパン、ザワークラウト、グリュイエールチーズ、ハム、ピクルス入りのソースの発酵食サンドイッチ

材料は、当日サンダーさん、ナンシーさんのサポートに来ていた生江さん(レフェルヴェッソンス)が信頼されていらっしゃる「ガーデンハウス クラフツ」のKATYさんがサワードウから焼いたパン。それに、サンダーさんのザワークラウト、グリュイエールチーズ、ハム(コンビーフを使ったルーベンサンドイッチも相性が良いそう)、ナンシーさんお手製ピクルス入りのソース。

代官山「ガーデンハウス クラフツ」のKATYさん
「ガーデンハウス クラフツ」のKATYさん。お店は代官山にあるそう。

情熱的なトークは、発酵にまつわるあれこれの結晶

サンダーさん、ナンシーさん、生江さん(レフェルヴェッソンス)がザワークラウトのワークショップに登壇しました。

サンドイッチをいただきながらのトークショーでは、会場から様々な質問が飛び出しましたがどれに対しても誠実に回答されるサンダーさん。

中でも「一番好きな発酵食品はなんですか?」という質問には
「それは最もひどい、最悪な質問ですね」
と即答されて会場も盛り上がりました。
ワークショップを開くたびに各地で同じ質問をされて困ってるんだとか。
「もちろん漬物やザワークラウトなどには特別な思い入れがありますが、他にも大好きなコーヒー、チョコレート、それからワインやパンも。世界中で愛される美味しいものはたいてい発酵食品ですから、一つだけを選ぶのはとってもむつかしいです」

デイライトキッチンでザワークラウトの作り方を教えるサンダー・E. キャッツさん

お味噌に関する質問もたくさん出ていました。
中でも面白かったのは「大豆以外になんの豆でお味噌を仕込みますか?」という質問に、なんと
「24年間でたくさんの味噌を作ったけど、実は大豆を使ったことの方が少ないくらいだよ」
とのこと。
「ひよこ豆や小豆、中東の方でよく食べられている豆など、様々な食材を使って味噌を作っています。お味噌は、麹の量や塩との組み合わせ、または熟成期間など、大豆という材料以外にも様々な側面から作られることを忘れてはいけません。」

そして大豆以外のお味噌も、熟成期間を経て完成するととても味わい深く、大豆のお味噌と差がわからないほどにしっかりとした”味噌”が作れるよ、と教えてくれました。

「発酵が伝統食である日本ではもしかしたら、昔からの材料や作り方に従わなくてはいけないと感じやすいかもしれませんが、自由な発想の元で、色んなことにチャレンジしてみることも大切な経験になるでしょう」

また、「発酵のリスクはなんでしょうか?」という質問には一段と丁寧に回答されていたように思います。

「発酵とは微生物による食品の変容です。基本的にとても簡単で、栄養素を高め、誰のことも攻撃しない、安全なもの。
リスクは無いと言えますが、あえて言うならば、動物性のものを発酵させるときでしょうか。魚などを発酵させようとするときは、最終的にどのようなものを、どのような工程で作るのか、という明確なビジョンを持つ方が良いと思います。
わたしが野菜の発酵食を好むのは、誰でも30分もあれば必要な情報が手に入り、あっという間に実行できるからですが、動物性食品の発酵はもう少ししっかりと事前情報を用意しましょう」

参加者にイベントの感想を聞いてみました

都内近郊でヨガ教室「オアシスヨガプレイス」を主宰されている武井悠桂さんは、普段から豆乳ヨーグルトを自家製されるなど、発酵食品が身近な存在ではあるものの、ザワークラウトはこのワークショップで「初めて作った」と教えてくれました。

大量の野菜が、少しのお塩だけで1リットル瓶に納まる程しなやかになったことにとても感動されたそうです。
「密閉された瓶の中で、私たちの体に良い菌たちが育つと聞いたとき、野菜の生命すべて役立つように変換されているんだと感じて、ありがたく思いました」

サンダーさんが発する言葉の端々に学びがあったそうで、特に”海外での味噌作りのお話が興味深かった”と教えてくれました。大豆以外の材料で作る味噌など、
「その土地にふさわしい材料で作る味噌に、発酵食品の自由さを感じました」とのこと。

また、消毒や滅菌など“悪い菌を殺すことを優先”するよりも、良い菌を生かすことで全てが解決する”というお話は、食以外のことにも共通する考え方だと感じられたそうです。

「私たちは”元に戻すプロセス”の時代を生きています」

サンダー・E. キャッツ

サンダーさんのお話に会場中が引き込まれ、時間を忘れて盛り上がりました。
最後に”発酵食品を食べることと、社会変革の関係性は?”という質問に、こんなおもしろいお話を聞かせてくれました。

「英語におけるfermentation(発酵)は元々、ラテン語の「沸騰する」という意味から派生した英語で、発酵そのものの他に、political ferment(政治的混乱)やsocial ferment(社会的混乱)などといった言い回しがあります。
沸騰から派生したのは、発酵時に起こる泡や盛り上がる様子が当てはまるからだと考えられます。つまり、人がエキサイトし、人から人へ伝わることこそが「発酵」の意味だと言えるのです。
そうしたことから私自身は、発酵食を日常的に取り入れるライフスタイルは”社会変革を起こすエンジンになる”と考えています。」

“伝統的な真理を大切にしながら、自由な発想を是とする“
サンダーさんのワークショップは、そんなことまで気づかせてくれました。

「発酵とは何か?」をいつも説いているサンダーさんは、現代社会における私たちが「様々なことを元に戻していかないといけないプロセスにいる」と表現していました。
それは、西洋医学やサプリメントを否定する前に、まずは伝統的な食事に戻そう、というメッセージ。
これならすぐにでも取り組めることがたくさんありそうですね。

サンダー・E. キャッツ氏
http://www.wildfermentation.com/
ナンシー シングルトン 八須氏
https://www.facebook.com/nancy.hachisu
デイライトキッチン
http://www.daylightkitchen.jp/
ガーデンハウス クラフツ
http://gardenhouse-crafts.jp/

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