今やごく自然にスーパーに並び、一般家庭でもよく目にするようになった塩麹。2011年頃のブームをきっかけに存在を知った方も多いのではないでしょうか。健康志向が高まる現代で、温故知新の調味料・塩麹の登場は画期的なものでした。
一大旋風を巻き起こした塩麹ブームですが、そのはじまりは1人の女性からだったということをご存じでしょうか? 今回は塩麹ブームの火付け役であり、『糀屋本店の手作り麹調味料で元気ごはん』の著者である、糀屋本店9代目女将・浅利妙峰さんについて、そして、手作り発酵調味料を使ったとびっきりの肉じゃがレシピをご紹介します。
“こうじ屋ウーマン”こと、9代目女将・浅利妙峰さんってどんな人?
大分県の南東に位置する佐伯市。糀屋本店は海と山に囲まれた豊かなこの土地で、元禄2年(1689)から327年以上にわたって糀を作り続けています。
その9代目の女将が浅利妙峰さんです。老舗の看板を守り続けているだけでも大変なことですが、浅利さんはそれだけに留まらず自ら塩麹を研究してブームに繋げるなど、「麹」の素晴らしさを世間に発信し続けています。
塩麹ブームが生まれた背景とは?
2012年、その年の世相を表わすとされる「新語・流行語大賞」に「塩麹」がノミネートされました。多くの人に認知された塩麹ですが、ここに至るまでは浅利さんの地道な活動があったといいます。
「現代人がどんどん麹離れをしているのを見て、なんとかしなければと思っていたのです」と浅利さんは著書の中で語っています。そして、浅利さんは自らを“こうじ屋ウーマン”と名乗るようになり、講演会などを通じて麹の魅力や麹文化の素晴らしさを精力的に発信していきました。
さらに浅利さんは、日本古来の調味料「塩麹」を現代に甦らせます。そして、今の食生活に生かせる塩麹の使い方を、メディアを通じて広げていきました。そこから塩麹のブームが巻き起こり、さらには麹全般の良さが見直されるようになっていったのです。
そして今、“こうじ屋ウーマン”の活躍の場は海の向こうへ。浅利さんはアジア、ヨーロッパ、アメリカなどでも普及活動を続けているそうです。
今、“こうじ屋ウーマン”の活動に注目が集まっています!
そんな浅利さんの活躍は、テレビや雑誌、新聞など様々なメディアで紹介されています。最近ではテレビ東京系列で放送されている番組『カンブリア宮殿』で糀屋本店が取り上げられました。「地方から奇跡のビジネス革命を起こした女性社長スペシャル」のタイトルで浅利さんが登場し、塩麹をはじめ「麹」の文化を日本の台所に取り戻すための挑戦について語りました。
定番の家庭料理に麹パワーを摂り入れる!
麹には、肉や魚を柔らかくしたり、料理にコクを加えたりする力があります。使いこなすのは大変だと思われがちですが、使い方は意外とシンプルです。浅利さんは「塩」「醤油」「砂糖」の代わりに、「塩麹」「醤油麹」「甘麹」を使ったりするそう。
例えば、肉じゃがを作る時には、肉の下ごしらえに塩麹をもみ込んで、調味する時に砂糖やみりんの代わりとして甘麹を使います。優しい甘さが感じられ、ほっこりする味わいに。不思議なことに安い肉を使っても美味しく仕上がるそうです。
では、ここで浅利さんが考案した「甘麹肉じゃが」レシピをご紹介しましょう。
甘麹肉じゃが
材料(2~3人分)
・牛薄切り肉……100g
・塩麹……10g
・こんにゃく……1/2枚(140g)
・甘麹(下味用)……大さじ1
・じゃがいも……2~3個(400g)
・玉ねぎ……1/2個
・にんじん(小)……1本
・さやいんげん……4本
[煮汁]
・甘麹……大さじ4
・酒……大さじ3
・水……1カップ
・しょうゆ サラダ油
※塩麹がなければ、肉用の塩麹は省いてよい。
作り方
1.牛肉は食べやすい大きさに切り、塩麹をもみ込んで20~30分おく。こんにゃくはスプーンで食べやすい大きさに切り、甘麹をもみ込んで15分ほどおく。
2.じゃがいもは皮をむき、4~6等分にして水にさらす。玉ねぎは幅1.5cmのくし形切りに、にんじんは皮をむいて一口大の乱切りにする。さやいんげんは長さを半分に切る。
3.鍋にサラダ油大さじ1/2をひいて弱火にかけ、牛肉を入れて色が変わるまで炒める。中火にし、玉ねぎ、水けをきったじゃがいも、にんじん、こんにゃくを入れ、油が全体に回るまで炒める。
4.煮汁の材料を加え、中火で4~5分煮る。
5.しょうゆ大さじ2を加えてアクを取り、さらに8~10分煮る。いんげんを加え、さっと火を通して汁ごと器に盛る。
こちらに使用されている甘麹や塩麹の作り方は、浅利さんの著書『糀屋本店の手作り麹調味料で元気ごはん』(オレンジページ)に掲載されていますので、気になった方はぜひチェックしてみてください!
ブームを超えて、もはや定番となりつつある「塩麹」の裏側には、糀屋本店を支える浅利さんの強くて優しい思いが込められていたんですね。 せひ、“こうじ屋ウーマン”の知恵をもっと学んで、麹とともにある暮らしを楽しんでみませんか?