お正月と言えば、おせちやお年玉、初詣、年賀状など、人それぞれ思い浮かぶものがあると思います。連想はするけれども、あまり詳しくは知らないものの一つに“お屠蘇(とそ)”があるのではないでしょうか?
お屠蘇って聞いたことあるけどよくわからない! 毎年飲んでいるけど、あの中身って何だろう? と思っているみなさま、ぜひこれを機会にお屠蘇について一緒に学んでいきましょう。
お屠蘇(おとそ)って何?
「屠蘇」という字には「悪鬼を屠(ほふ)り死者を蘇らせる」という意味があるため、年始に飲むことで1年の邪気を除き、健康でいられると言い伝えられています。中国から伝わって平安時代の貴族が飲むようになり、その後庶民にも広がりました。
しかし、お屠蘇と聞いて、器が頭に浮かんでもどんな飲み物なのかわからなかったり、普通の日本酒が入っているのではないか?と思われる人もいるかもしれません。実はその中身は、“屠蘇散(とそさん)”という数種類の生薬が配合された漢方薬を、お酒やみりんに漬け込んだものなのです。酒やみりんといった発酵飲料や調味料で作るお屠蘇ですから、これもまた立派な発酵飲料ですね!
屠蘇散(とそさん)には何が入っているの?
お屠蘇を作るための屠蘇散は薬局などで購入することができます。1袋数百円とそんなに高いものではありません。それでは、お屠蘇によく使われる生薬についてみてみましょう。
[桂皮](けいひ)
シナモンとしても親しまれています。体内のめぐりをよくするとされ、発汗、解熱、整腸作用などがあります。
[山椒](さんしょう)
さんしょうの実の果皮は香辛料にもなりますが、生薬としても利用されています。健胃作用があります。
[陳皮](ちんぴ)
みかんの皮を乾燥させた生薬。咳を鎮めたり、風邪や冷え性にも作用するとされています。
[桔梗](ききょう)
秋の七草の一つでもあります。根の部分が痰を除いたり、化膿した時の排膿などに用いられます。鎮静・沈痛作用もあります。
[大茴香](だいういきょう)
八角(スターアニス)とも呼ばれ、スパイスとしても知られています。抗菌作用や健胃作用があります。
[丁子](ちょうじ)
体内を温めるとされ、健胃作用や消化促進、食欲増進などによいとされる生薬です。
[浜防風](はまぼうふう)
新芽は刺身のツマにも利用されます。その根は生薬として用いられ、発汗・解熱作用、抗炎症作用があります。
正月というハレの場ではごちそうを食べすぎてしまいがち。そんな正月に飲むお屠蘇に使われている生薬は健胃作用があるものが多いですね。また、寒い季節なので体を温める生薬も用いられているようです。
お屠蘇(おとそ)の作り方
屠蘇散を手に入れたら、お屠蘇を作ってみましょう。
甘いお屠蘇に仕上げたい場合にはみりんに、さっぱり仕上げたい場合には日本酒に屠蘇散を5~8時間ほど漬けたら完成です。みりんの場合は必ず本みりんを使ってくださいね。
お屠蘇(おとそ)の飲み方
お屠蘇をいただく場合には年少者から年長者へという順番で盃を進めるのがしきたりです。一番最初は年長者が年少者に注いで飲み干し、飲んだ人が次の人に注ぐという流れになります。アルコールなので年少者は飲む真似だけします。お雑煮やおせち料理をいただく前にお屠蘇を飲むのが正しい順番です。また、正月に来客があった時にもお屠蘇で挨拶を交わします。
いかがでしたか。昨今、薄れつつある伝統的なものの一つであるお屠蘇ですが、立派な酒器がなくてもその心やそのしきたりを一人でも多くの人がやってみることが、未来に伝統を残すために大切なことだと思います。あなたのおうちのお正月に取り入れていただけたらうれしいです。
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