今回で6回目の開催となった、ライフスタイルブランド「かぐれ」さんによる『発酵男子のCOZY TALK』。発酵に携わっている男性3名と、毎回変わる発酵界からのゲストによる人気のトークイベントです。ちょっぴり緊張してしまいそうな仰々しい講演会とは違い、飲みながら食べながら、まさに五感で発酵を楽しめるイベントに編集部がお邪魔してきました。
COZY TALKの発酵男子ってどんなひと?
COZY TALKには欠かせない3名の”発酵男子” とは一体どんな人たちなのでしょうか。
まずおひとり目は、山梨県甲府にて創業150年を超える「五味醤油」当主、五味 仁さん。(haccolaでも、五味醤油さんの「かんたん 手前みそキット」をご紹介させていただいております)
そしておふたり目は、以前haccolaでもご紹介した「寺田本家」当主、寺田 優さん。
お二人とも歴史ある蔵を守るという大役にありながら、気負いのないとっても優しい雰囲気を身にまとった発酵男子。素朴で素直な質問をゲストに投げかけていらっしゃいました。
(左)「寺田本家」当主、寺田 優さん、(右)「五味醤油」当主、五味 仁さん
そして全体のファシリテートは、世界でただ一人の「発酵デザイナー」である小倉ヒラクさん。
アートデレクタ―でありながらも、長年研究されている発酵醸造文化の専門家でもあるヒラクさんは、イベント企画、アニメ制作、文筆など多岐にわたって発酵文化を広める活動をされています。
COZY TALKではトーク中に出てくる専門用語を解説しながら進行役をしてくださっていました。
発酵デザイナー、小倉ヒラクさん
会場はおしゃれな上に環境にも配慮されたスペース、表参道「かぐれ」
オーガニックコットンの衣服と天然素材の雑貨をきっかけに、オルタナティヴな暮らしを提案する「かぐれ 表参道店」さん。
明治神宮前駅から徒歩約5分のところにある「かぐれ 表参道店」さんは、大都会の中心部にありながらも、周囲の華やかさから少しだけ休憩できるような、爽やかで落ちついた雰囲気です。
“かぐれ(香具礼)”とは、万葉集に登場する古い言葉で、『寄り集まる』という意味に由来しているそう。それぞれのライフスタイルを自由に楽しむ人々が、自然と調和した心地よい暮らしの『原点』に出会いに、ここに集まってほしいという願いが込められています。
「天然素材の衣類だけでなく食品も扱い始めた当初から、かぐれ 表参道店では「五味醤油」さんのお味噌のお取扱いがありました。当主の五味さんを講師にお迎えして味噌作りワークショップなどもお店で開催していたところ、五味さんから“こんなイベントがやりたいんだけど”と企画をもらったのがこの『発酵男子のCOZY TALK』です。出演者の独特のキャラクターと、場が発酵していくような和やかで温かい雰囲気に魅了される人が年々増え、今年で5年目を迎えた長寿イベントとなっています」。(かぐれ 表参道店 矢田さん)。
まさにこのCOZY TALKは、かぐれさんのコンセプトにフィットしたイベントなのですね!
人気が高く、長く愛されるイベントであることもうなづけます。
今年で6回目の開催になる「発酵男子のCOZY TALK」、いよいよスタートです!
ゲストはこの人!農業家であり醸造家の唐澤 秀さん
茨城県鹿嶋市で「鹿嶋パラダイス」の代表を務める唐澤さん。「鹿島パラダイス」では、無肥料無農薬・自然栽培での農業を基軸に、素材から作り上げる食品の販売や飲食店の運営、衣食住を豊かにする様々なプロジェクトの立ち上げなどを行っています。
鹿島パラダイスの「発芽玄米味噌」
唐澤さんは、「この世界にパラダイスを作りたい」という思いのもと、海外で飲んだクラフトビールを再現すべく約1年前から醸造家として「Paradise beer factory」を立ち上げ、ビールづくりを開始されました。
そうです、今回「発酵男子」のテーマは近年世界中で人気が高いクラフトビール!
唐澤さんがやさしく解説くださるビールのお話に、トーク冒頭から引き込まれました。
ビールの「ラガー」と「エール」はどう違うの?
ふだん店頭で見かけることの多い一般的なビールは「ラガー」と呼ばれ、すきっとした口あたりのものが多く、それらは下面発酵と呼ばれる比較的低温で発酵をさせたもの。
対して唐澤さんが作られているようなクラフトビールの多くは「エール」と呼ばれる上面発酵で作られ、実は歴史の長いスタイルのビールです。ホップの香りと程よい苦味が麦芽の甘味とバランスよく絡まり、さらにオレンジピールなどで爽やかさも演出。
常温でじっくりと味わいを堪能できるという意味では、のど越しよりも旨みを楽しむことができる飲み物なんですね。
この日の会場のドリンクメニューにも、もちろん唐澤さんが作られたおいしいビールが登場です。
「Paradise beer factory」のビール
しかもなんと、この日が本邦初お披露目、寺田本家さんとのコラボレーションというスペシャルなビールも!
その名も「5 daughters」。
商品名は寺田本家さんの自然酒「五人娘」からインスパイアされたそうです(もちろん当主の認可済みです)。
かわいらしいピンクのラベルの「5 daughters」
唐澤さんは稲の栽培もされているため、その自然栽培天日干しのお米を寺田さんに依頼して日本酒を作ってもらっているそう。このビールはその日本酒を作った時にできた酒粕を酵母として作られたんだとか。
聞いただけで飲んでみたくなりませんか?
足掛け4年掛かったという”醸造家への道”
現在、「Paradise beer factory」として地元鹿嶋にてご自身のお野菜を中心としたお料理と、自家製ビールを提供するお店も経営されている唐澤さん。
足掛け4年掛かったという”醸造家への道”も惜しげもなくシェアしてくださいました。
醸造免許の取得方法、申請のために準備したこと、酒税法の現状といったビジネス面のお話は初めて聞くことも多く、驚きのため息がこぼれます。
例えば酒税。ビールの酒税は1リットル220円と法律で決まっていて、500ml缶であれば購入金額のうち110円は税金ということになります。つまり残りの金額がメーカーや販売店へ渡るお金。(そう思うと、お店で見るビールは随分と低価格に感じられますね。)
少量を丁寧に作るクラフトビールが比較的割高なのはこういった背景もあるようです。お気に入りのブリュワリーはどんどん応援すると良さそうですね。
IPAビールの人気により、世界的に品薄状態と言われる柑橘系ホップ(CITRA,MOASAIC)。
「ビールはホップの味で決まります!」と唐澤さん
また、唐澤さんはビールづくりについてこう語ります。
「発酵の世界はとても奥深く、仲良くなるのに時間がかかりそうですが、自然栽培と同じで、自然にゆだねられるところがとても心地いいんです。頭だけで自然を理解しようとするとパンクします(笑)。自然栽培から自然と寄り添うことを学び、寺田本家さんからは中庸のあり方、ゆだねること、信頼することを学びました」。(唐澤さん)
唐澤さんの豊かな経験と発酵が結びついてできた「Paradise beer factory」のビール。
まずはビールそのもののおいしさを堪能して、次はストーリーとともに味わってみたくなるような、いろんな楽しみ方ができるビールですね。
この日だけのスペシャル! 発酵おつまみ
料理家の蓮池陽子さんによる「発酵おつまみ」は、テンペ、納豆、お味噌、お漬物…といった発酵食品のフィンガーフードが並ぶワンプレート。登壇者の発酵男子のみなさまから提供された食材もふんだんに使われていて、どれも大変おいしいおつまみでした。
また、この日の特別販売には、寺田本家さんのお酒、五味醤油さんのお味噌なども勢ぞろいしました。
寺田本家さんのお酒
五味醤油さんのお味噌など
この先も注目度大!発酵は女子も男子も、みんな楽しく!
6回目となる「発酵男子のCOZY TALK」も満員御礼。笑顔が溢れる楽しいトークイベントでした。次回開催のゲストは一体どんな発酵男子のお話が聞けるのか。待ち遠しいですね。
発酵男子のCOZY TALK vol.6
[主催]
かぐれ:http://www.kagure.jp/
[ゲスト]
唐澤 秀
Paradise beer factory :http://www.paradise-beer.com/
鹿島パラダイス:http://www.kashima-paradise.com/
[メンバー]
発酵デザイナー 小倉ヒラク:http://hirakuogura.com/
「五味醤油」当主、五味 仁:http://yamagomiso.com/
「寺田本家」当主、寺田 優:http://www.teradahonke.co.jp/