発酵通信inベトナム【おつまみの定番、酸っぱい豚肉「ネムチュア」編】

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今回は、ベトナム名物の「ネムチュア」について、ベトナム市場に特化したマーケットリサーチ企業『B&Company』社の現地スタッフ、アンさんに教えていただきました。

ベトナムの発酵食品。豚肉を発酵させたネムチュア


Q:ネムチュアはどんな食べ物ですか?

A:「ネムチュア」(北部での呼び方)あるいは「ネム」(中部、南部での呼び方)は、豚肉を使ったベトナムの発酵食品です。豚肉に香辛料、炒った米粉を加えたもので、酸味が特徴です。

ネムチュア

ネムチュア

「ネムチュア」の作り方は、比較的シンプルです。発酵食品ですが、手早く作ることができ、数日しかかかりません。材料は、豚肉、豚皮、炒った米粉(米を黄色くなるまで炒って、すり潰したもの)、ニンニク、チリ、砂糖、塩、コショウ、魚醤など。

まず、豚皮の表面をきれいに剃り、洗って鍋に入れ、火にかけます。茹であがったら、匂いを取るために少量のウィスキーを加え、再度、熱いお湯の中に入れます。その後、水切りして2〜3cm幅に切ります。

次に豚肉は挽き肉にして、炒った米粉、塩、コショウ、砂糖、コショウなどの調味料と、細切りにした豚皮を加えて混ぜます。

それをまず薄い葉(グアバ、いちじくなど)で巻き、さらにバナナの葉で巻きます。3〜5日間、涼しい場所で発酵させると、食べられるようになります。

ネムチュアは地域ごとにさまざまな特徴があり、その違いは名前で区別できます。名前は通常、地名に由来しています。

Q:ネムチュアの選び方を教えてください

ネムチュアの選び方

ポイントは3つあります。

1.色
1つ目は、色です。ネムチュアの色は自然な赤です。色がうすい場合は、時間が経ち過ぎているかもしれません。濃い場合は、人工色素が加えられている可能性があります。色がかなり濃いものは、炒った米粉が多過ぎで、肉はほとんど入っていません。

2.質感
2つ目は、質感です。表面を見た時に、巻いた葉の型が残っていてはいけません。手で掴んだ時には硬く、歯で噛んだ時には歯ごたえがあります。細切りにしたネムチュアが、キラキラし過ぎるのは良くありません。薬品が使われている可能性があります。つまり、良いネムチュアは、少し不透明で、適度な質感があり、歯ごたえがあり、でもソフトです。

3.日にち
3つめに重要なのは、日にちです。2つの日にちをチェックしてください。1つは、いつネムチュアを食べ始めるか。もう1つは、賞味期限です。通常、質の良いネムチュアは、発酵後2〜3日で食べられるようになります。天候によって、暑い時期は寒い時期より日数は短くなります。

いつナムチュアを食べ始めるかをよく考えてください。新しく作られたナムチュアを買って4〜5日経ってしまった場合、食べられなくなっている可能性があります。注意してください。防腐剤が使われたナムチュアもありますが、健康のためには良くありません。ネムチュアは、正しい方法で保存すれば、発酵後、7〜10日は食べられます。冷蔵庫で保存することをおすすめします。

Q:B&Companyのアンさんに聞いた、オススメのネムチュア

オススメのネムチュア

ベトナムでよく知られたナムチュアを紹介します。

1.タインホア省の「ネムチュア」

タインホア省の「ネムチュア」は、ベトナム全土で良く知られています。他の地域のヌムチュアとの違いは、タイワンモミジの葉で巻くことです。タイワンモミジは観葉植物の一種で、ナムチュアを美しくするだけでなく、味をより魅力的なものにします。緑色の葉とピンク色のナムチュアが、見事なコントラストとハーモニーを作り出します。

タインホア省の「ネムチュア」

タインホア省の「ネムチュア」

グルメな人は、食べる前にネムチュアの香りを楽しみます。美味しいネムチュアは、酸味がかった香りがし、コショウのスパイシーさとタイワンモミジの葉のツンと来る香りも楽しめます。タイワンモミジの葉の特別な香りは、豚肉の脂肪分を減らすだけでなく、食べる人の気分も盛り上げてくれます。

国道1A沿い、タインホア省の入り口付近では数百の店がネムチュアを売っています。美味しいネムチュアを買うためには、町まで行って、評判のお店に行くことをおすすめします。

価格は、10個で3万〜5万ベトナムドン。有名なお店は以下です。

Nem chua Thang Tuyen
住所:409 Le Hoan Str, Ba Dinh Ward, Thanh Hoa City
URL:http://nemchuathangtuyen.com/

Nem chua Cay Da
住所:326 Truong Thi Str, Dien Bien Ward, Thanh Hoa City

Nem chua Cuong Dung
住所:15 Tan An, Ngoc Trao Ward, Thanh Hoa City

2.ドンタップ省の「ネムチュア」 – ネム・ライブン

ドンタップ省の「ネムチュア」

ドンタップ省の「ネムチュア」

ネム・ライブンは、メコンデルタに位置するドンタップ省ライブン県で作られています。当地の人たちは、ネムチュアの作り方にプライドを持ち、何世代にもわたって受け継がれています。

ネム・ライブンは、明るい赤みがかったピンク色で、酸味、スパイシーさ、塩味、甘みなどが豊かでとても魅力的です。パーティーはもちろん、日常の食事にもよく使われます。また、スパイシーで甘いため、軽食にも適しています。

一般的なネムチュアとの違いは、ネム・ライブンは作り方がとても複雑で、かなり手間がかかること。各家庭にはそれぞれ独自の作り方があります。

まず豚の赤身肉は血管などを取り除き、薄くスライスして、砂糖、塩、野菜をすり潰して煮詰めたものを加えます。次に豚皮、炒った米粉、コショウ、スライスしたニンニクを混ぜ、コミカンソウあるいはタイガーズクロウの葉で巻き、さらにバナナの葉で巻きます。

価格は、10個で2万5000〜3万5000ベトナムドン。有名なお店は以下です。

Nem chua Ut Thang
住所: Highway 80, Long Hau commune, Lai Vung District
URL:https://nemlaivungutthang.com

Nem chua Giao Tho
住所:121 Tan Khanh, Tan Thanh commune, Lai Vung District
URL:https://www.facebook.com/pages/Nem-Giao-Tho-Dac-San-Lai-Vung/163947110301602?ref=hl

Nem chua Co Hiep
住所: Highway 80, Long Hau commune, Lai Vung District
URL:https://www.facebook.com/pages/Nem-Lai-Vung-C%C3%94-HI%E1%BB%86P/583683361689710

3.イェンマック村のネムチュア – ニンピン省

イェンマック村のネムチュア

イェンマック村のネムチュア

イェンマック村のネムチュアの歴史は古く、家ごとにさまざまなネムチュアを作って販売し、発展してきました。材料の選び方にもこだわりがあります。豚肉は豚が屠殺された直後のものを使います。より新鮮で、美味しいネムチュアを作るためです。豚の腰肉あるいは肩肉を使うと、ネムチュアは美味しくなくなります。

挽き肉で作られる他の地域のネムチュアとは違い、イェンマック村のネムチュアはスライスした豚肉を使います。またイェンマック村のネムチュアは、他の地域のネムチュアのような固いブロック状ではなく、細長い糸状になります。

イェンマック村のネムチュアは、風味、ピンク色の豚肉と細かく刻まれた白い豚皮、発酵した豚肉のかすかに酸味を感じさせる香りなどが素晴らしく、ガーリックや唐辛子を加えた海老や魚のディップソースをつけて食べることが多いです。

価格は、10個で3万〜5万ベトナムドン。有名なお店は以下です。

Nem chua Trung Kien
住所:No.70, street 11, Van Giang ward, Ninh Binh City

Nem chua Tuan Binh
住所:Neighbor 4, Dong Son, Yen Mac commune, Yen Mo District
URL:https://www.facebook.com/Nem-Tu%E1%BA%A5n-B%C3%ACnh-414426865356731/

Q:最近出てきた新しいネムチュアなどはございますか?

グリルド・ネムチュアは、首都ハノイで人気

グリルド・ネムチュア

「グリルド・ネムチュア(焼きネムチュア)」は、首都ハノイで人気です。特に、冬の寒い日にはぴったりです。ネムチュアと呼ばれていますが、これまで説明してきたネムチュアとは、作り方がまったく違います。

この料理には、従来のネムチュアは使いません。豚挽き肉に、魚醤、砂糖、ニンニクなどの香辛料を混ぜ、通常のネムチュアであれば3〜5日かけて発酵させるところですが、この料理では冷蔵庫で1日置くだけです。グリルド・ネムチュアの豚肉は、新鮮なピンク色のままです。炭火の上で、グァバの葉が少し焦げ、軽く匂いが立ち上る程度に焼きます。

グリルド・ネムチュアは、チリソースやマンゴ、キュウリ、パパイヤなどのさっぱりしたものと一緒に食べます。グリルド・ネムチュアを食べながら、家族や友だちとテーブルを囲むのは、とても楽しいひとときです。

ネムチュアに関するエピソードや言い伝え

ネムチュア

イェンマック村のネムチュア伝説

昔、ネムチュアは王様や貴族階級だけが食べることのできた珍しい料理でした。19世紀のグエン朝時代、トゥオンチェンモ村(今のイェンマック村)に、国の宰相を務める、ファム タン ドゥアトという人物がいました。

ある日、彼の娘ファム チ トゥーは、父親をグエン朝の首都フエに連れていきました。父親はお酒を飲みながら、フエのネムチュアを食べることが大好きだったので、娘は宮廷のシェフを訪ね、父親のためにネムチュアの作り方を教わりました。

その後、首相の家を訪れた客はネムチュアでもてなされるようになりました。もちろん娘が作ったネムチュアです。客は皆、宮廷のパーティーで食べるネムチュアよりも美味しいと言いました。客は帰る際には、ネムチュアをお土産に持ち帰りました。

のちに、娘のトゥーは村に戻り、首相の孫たちにネムチュアの作り方を教えました。孫の1人が村の通りにネムチュアを売る店を開き、この美味しいネムチュアは、近隣の州にまで知られるようになりました。こうして今でもイェンマック村のネムチュアはこのあたりでよく知られ、村の名産品となっています。

新スタイルのネムチュア

新スタイルのネムチュア

The Spices of Life」というブログを運営しているアメリカ人ブロガーが、ネムチュアにイノベーションをもたらしました。バナナの葉ではなく、時間と手間を節約するためにラップで巻いたのです。新しいネムチュアの誕生です。明るくて現代的、しかも可愛らしいネムチュアです。


B&Company

B&Company

「B&Company」は、ベトナム市場に特化したマーケットリサーチ企業です
「ベトナムで自社の商品やサービスを広めたい!」といった企業・個人の方々を “市場調査・現地パートナー探索・規制調査” 等を通じてサポートしています。

「B&Company」ならではの市場調査とは?
例えば、「ベトナムで味噌を販売したい」といった場合、“ベトナム人は味噌を食べる習慣があるのか?”、“ベトナムの味噌は日本の物と違うのか?”、“どの程度・頻度で、どこで購入するのか?価格帯はいくらくらいなのか?”、“輸出販売(現地で製造販売)する場合は、どのような手続きが必要なのか?”等、様々な情報を集め、事業として成立するかどうかの検討が必要となります。B&Companyは、強力なベトナム内外のネットワークを駆使し、リアルな現地情報を元に市場調査を行う会社です。

「B&Company」の強み
ベトナムに現地法人を構え9年超、様々な業種分野で100件以上の実績を持つマーケットリサーチ企業です。市場調査やコンサルティング、ビジネスサポート等のサービスはもちろん、f/s調査から法人設立までワンストップで支援しています。特に市場調査に関しては、B2B、B2C共に豊富な経験を持ち、予算・目的に応じた最適な調査設計が可能です。オンラインでのアンケートシステムを自社保有し、オフライン調査と組み合わせて、安価かつ効果的な調査を実施しています。

WEBSITEFacebooktwitter(B&Company代表による投稿)
問い合わせ: (mail) info@b-company.jp / (Tel) 03-5829-4006

参考リンク

https://vi.wikipedia.org/wiki/Nem_chua
https://nemongtrehacthanh.wordpress.com/2015/10/15/bi-quyet-chon-nem-chua-ngon-dam-bao-chat-luong/
http://vietnamnet.vn/vn/doi-song/6-mon-nem-ngon-nuc-tieng-3-mien-viet-nam-272526.html
http://nemchuaotdo.com/cac-mon-nem-chua-ngon-ba-mien-phai-thu/
http://vietspices.blogspot.com/2011/01/nem-chua-curedfermented-beef.html
https://originvietnam.com/destination/vietnam/ninh-binh/nem-chua-yen-mac.html
https://www.facebook.com/Nem-Tu%E1%BA%A5n-B%C3%ACnh-414426865356731/

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