初心者でも失敗なくおいしいパンが作れると評判のパン教室「いちごきっちん」を東京都練馬区で主宰されている藤田裕子(ふじたひろこ)さんに、自家製酵母や発酵食、そして自主開発されたという『魔法のホーローパン』についてうかがいました。
「いちごきっちん」ではどんな内容のレッスンをされてますか?
大きく分けると2つの軸があります。
ひとつは自家製酵母を使ったレッスン。レーズンや季節の果物を使って酵母を起こす方法とパン作りのほか、酵母を使ったお菓子や調味料作りなど、活用法もお伝えしてます。
もう一つは自主開発したメソッドの『魔法のホーローパン』(商標登録申請中)で、最低限の材料と道具だけしか使わない気楽な、でも本格的なパン作りをご紹介しています。
微生物の生命活動に寄り添うような気持ちで伝えるパン作り
パン教室を始めて8年になりますが、最初はドライイーストを使って、家庭で手作りする楽しさや、その中でクオリティの高いパンを作るコツをお伝えすることから始めました。
レッスンでは、パン作りがまったく初めてという初心者からご経験者まで、幅広くご満足いただけるように、お伝えする仕方や内容も変えるように気をつけています。レシピ本を見ているだけとは違い、微細なところをわかりやすく伝えたい。まるで、微生物の生命活動に寄り添うような気持ちでいます。
自宅での再現性を大切にするレッスン
それと、レッスンで習ったことがご自宅で再現しやすいということも大切にしているポイントです。生徒さんのご家族やお友達に喜ばれているという反響や感想が聞けると、わたし自身もとっても嬉しくて、それを励みにわたし自身もさらに勉強を続けています。
“天然酵母パン=酸味が強いパン”ではない
自家製酵母も教室で伝えるようになってからは3年ほどです。だいぶ以前のことですが、かつてはわたし自身が、“天然酵母パン=酸味が強いパン”というイメージを強く持っていました。それはそれでおいしいけど、自分は白くてふわっともちっとしているパンが好きだし、天然酵母は手間がかかるという風に、ある意味誤解していたところもあるかもしれません。
柔らかいのに歯ごたえがあって、味わい深いけど口溶けがいい天然酵母パンとの出会い
しかしあるとき知り合った方が焼いてくださった天然酵母パンがとってもおいしくてビックリしたんです。柔らかいのに歯ごたえがあって、味わい深いけど口溶けがいい。それまで食べたことのある天然酵母パンとはぜんぜん違い、むしろ大好きなタイプのパンでした。
ちょうど発酵への興味が強くなっていたこともあったので、その方のクラスで習い始めて、そして自分でも3年前からは天然酵母のパン作りも講座でお伝えするようになりました。
酵母液の活用レシピ「旨味たっぷり!!やみつき食べるラー油」も人気
酵母を起こすことからお教えしていますので、酵母液の活用方法も紹介しています。お菓子作りへの活用レシピや、開講以来大人気が続いている「旨味たっぷり!!やみつき食べるラー油」の作り方なども、多くの方に喜んでいただいています。
パン教室「いちごきっちん」を始められたきっかけを教えてください
気軽に参加したパン作り教室で、“教室を主宰する”という考えに出会う
「いちごきっちん」主宰の藤田裕子(ふじたひろこ)さん
はじめは、家族に作れるようになったらいいな、というくらいの気持ちでした。それまで全然違う仕事をいくつかして、結婚後は主婦として家に入っていましたので。
でも気軽な気持ちでパン作りの体験教室に参加したときに、将来お教室を開くこともできると聞いてはじめて“自分で教室を主宰する”という考えに出会えました。
ディプロマ取得後、身近な人に向けたパン作り教室をスタート
それから積極的に学び、ディプロマを取って、まずは身近なお友達や知り合いに伝えるような教室から始めました。それでも初心者の人がうまく焼けて喜んでくれたり、ご家族に喜ばれたと報告してくれたりする一つひとつがとっても嬉しくて。
お教室ができることが何よりも幸せですし、天職に出会えたと思っています。
パンの奥深さを学び続ける
一方で、今でもわたし自身のパンの学びは続いています。パンは本当に奥深いんです。パンの種類は無数にあるし、様々な製法がたくさんあります。細やかに配慮すべき点もあるし、また、もちろん気候や湿度などの影響もあるし、作る人にもそれぞれの癖があるのでなるべく一人ひとりに合った伝え方をしたいとも思います。
知りたいことや改善したいことを解決するために、私も自分の時間やエネルギーを使って学び続けています。
パン作りを極めていく一方で、『魔法のホーローパン』も開発されたんですね。
「手軽で本格的な焼きたてパンを家族と食べたい」。生徒さんの想いを形にした『魔法のホーローパン』
『魔法のホーローパン』は、生徒さんたちの話を聞いているうちに、なんとかしたいと思って試作を重ねた結果でもあります。
多くの方が「忙しい朝でも、手作りで焼きたてのパンを家族に食べてもらいたい」という、健気でいじらしいお気持ちと共に「でも、自分だけ早起きして何時間もかかるパン作りをするのは大変すぎる。だけどもし作るならぜったいおいしいパンがいい」という、大変正直でわがまま(笑)な気持ちを聞かせてくれたんです。
こね台やボウル、卵やミルクを使わずとも、毎日食べたくなるほどおいしい『魔法のホーローパン』が誕生
主婦目線で、どうすれば手軽で本格的な焼きたてパンを、朝の時間に味わってもらえるか。
その気持ちに応えていくうちに、こね台やボウル、卵やミルクも使わずに、さらにバターも最小限の量にとどめて、でも毎日食べたくなるほどおいしい『魔法のホーローパン』が誕生することになりました。
おかげさまで今まで多くの方に喜んでいただき、『魔法のホーローパン』のクラスも満席が続いています。最近は自宅教室以外にクッキングスクールのHAPPY COOKING さんでもホーローパンの講座を開催してくださり、そちらもいつもたくさんの方が参加してくださいます。
『魔法のホーローパン』に使っているホーローについて教えてください。
熱伝導が良く、洗浄が簡単な、富士ホーローの「cukka(クッカ)」シリーズ
富士ホーローさんの「cukka(クッカ)」というシリーズです。はじめはこの赤い花柄がかわいいと思って自分用に使っていました。昔からホーロー製品はすごく好きでしたが、パンの型として使い始めてから改めて、ホーローの素晴らしさを実感しています。
ホーローは熱伝導がいいのでパンの型として適していて、それでいて洗浄が簡単。素材がこびりついても水につけておけばツルンとはがれます。
ホーロー容器の性能を最大限生かした『ホーローde塩バターパン』の作り方を開発
『魔法のホーローパン』の応用編としてご紹介している『ホーローde塩バターパン』は、まさにホーロー容器の性能を最大限活かしたともいえる作り方を開発できました。
塩バターパンは通常の作り方をするとオーブンの天板の上に大量のバターが流れ出し、材料が無駄になる上、洗い物も大変な作業です。しかしホーローを使えば、流れ出たバターも容器の中でおさまり、パン生地にも染み込んでいきます。その状態でさらに焼くため、カリッと揚げ焼きのような香ばしさがうまれ上、そもそも使うバターもすごく少量で済む。
このレシピを開発したときは、思わず心の中でガッツポーズしたくなりましたね(笑)
今ではこの『ホーローde塩バターパン』も看板メニューといえるほど人気なんです。このパンを作るクラスはリピーター受講も多いですし、逆に初めてクラスにお越しくださる方にも好評なため、新しい告知をしても早く定員になってしまうこともあるほど。
蓋の透明度が高いので生地の発酵具合が確認しやすい「cukka(クッカ)」
cukkaシリーズは蓋も秀逸なんですよ。透明度が高いので生地の発酵具合が確認しやすいというメリットがあります。蓋の縁は柔軟性も耐久性も高いエラストマーという素材になっていて、本体のホーロー同様にかなり長い年月のあいだ使うことができます。
ホーロー容器は、パンを焼かない時にも保存容器として活用できる
クラス受講にはホーロー自体もレッスン料に含まれていますので、ご自宅に持ち帰えられたあと、たとえパンを焼かない時にもお料理の保存容器として活用できるので無駄がありません。
パンの型はどうしても使わない時間の方が長くなり、多くのご家庭では収納に悩むことになってしまいますから。
パン作りに使用するホーロー容器の開発も手掛ける
以前クラスで使うためにネットで購入していたところ、なぜかどこのページもcukkaが品切れになった時期があり、このまま廃盤にでもなったら困る!と思って富士ホーローさんに電話でお問い合わせしたことがあります。
結果として廃盤にならないことがわかりホッとしましたが、そのまま電話口でcukkaシリーズがいかに素晴らしいか、どんな点が気に入ってるかということを熱弁したところ、ご担当者さんがとても喜んでくださいました。
お教室にも活用させてもらってるし、cukkaのファンとしてお礼のご挨拶も兼ねて、後日、同社を訪問しました。
そこで優しい社風に触れ、すごく喜んでくださったご担当者さんがなんと社長さんにまでご挨拶させてくださったんです。
以来、社員さんがパン教室に参加してくださったり、わたしもアンバサダーとして商品を紹介させてもらったり、今年はさらにホーロー容器をコラボレーションさせてもらうことになりました。屋号にするほど大好きないちごをモチーフにしたデザイン・監修をさせていただき、新たなホーロー容器を開発させていただくという大変光栄な機会に恵まれて、すごく感謝しています。
富士ホーローさんとコラボレーションした、いちごきっちんオリジナルのホーローは間もなく発売予定
今後の目標を教えてください。
『魔法のホーローパン』のレシピ本を出版したい
『魔法のホーローパン』のレシピ本が出せたらいいなぁと考えてます。実際いろんな方から出版のリクエストをいただくのですが、本ってどうやったら出版できるのかもわからないんですよね(笑)
でも遠方にお住いの方や、何らかの理由で教室にまでお越しになれない方にも、この楽しさを伝えられたら嬉しいです。