発酵食品やその食文化における第一人者として日本でもっとも有名な小泉武夫先生。月光仮面ならぬ「発酵仮面」という異名も持つ小泉先生に、発酵食品について教えていただきました!
「人類は、ヤギや牛の乳を利用するうちに“発酵”と偶然出会った」と先生の書籍にありましたが、日本での発酵との最古の出会いは、どのようなことと考えられているのですか?
日本最古の発酵食品は「魚醤」ではないかと言われています
海に囲まれた地理的条件などから、日本で一番最初の発酵食品は「魚醤」か?
人間は塩がないと生きていけません。人間が古来から、なぜ海の近くに住んでいたかというと、塩が取れるからです。
日本は海に囲まれています。そうした地理的な条件と、人類の歩みを考えると、日本で一番最初の発酵食品は「魚醤」ではないかと言われています。
最も原始的な調味料「塩」は、動植物の細胞から“水”を抽出する
日本三大魚醤のひとつ、石川県の「いしる」には、イワシやサバが使われている
原始的な生活を考えてみましょう。
魚を取ったあと、我々の祖先は、魚に塩味をつけて食べようとしました。
一番原始的な調味料は塩です。そして魚に塩をつけると、必ず水が出てきます。漬け物もそうですよね。塩は、動植物の細胞から水を抽出します。
日本三大魚醤のひとつ、香川県の「いかなごしょうゆ」には、“ふるせ”と呼ばれる成長したいかなごが使われる
魚に塩をつけて抽出された“水”を濾すと「魚醤」になる
日本三大魚醤のひとつ、秋田県の「しょっつる」に使われる、秋田県の県魚ハタハタ
魚に塩味をつけて食べようと思ったら、保存もできるようになったし、水が出てきて、その水を舐めてみたら美味しかった。貴重な塩が溶けているのですから、その水は捨てられません。なので、その水をまた使った。これが日本で最初の魚の発酵食品というわけです。
この水を濾すと魚醤になります。魚醤が日本で一番古い発酵食品だと思います。