8/5「発酵の日」、アツイ思い出は醸し人の証!『発酵サミット 2018 in 犬山』レポート(後編)

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2017年に引き続き、第2回目の開催となった愛知県犬山市での「発酵サミット 2018 in 犬山@ローレライ麦酒館」。発酵デザイナーの小倉ヒラクさん、三河みりんの三角祐亮さんのダブル司会によるトークライブに続き、イベントレポート後編では、会場屋外での物販コーナー「発酵マルシェ」出店者と、満員続出だったワークショップの様子をお伝えします。


生酵母犬山発酵サミット麦酒(撮影:外山祐二)
「生酵母犬山発酵サミット麦酒」(撮影:外山祐二)

酷暑でも元気いっぱい!「発酵サミット 2018 in 犬山」は屋外でも発酵中!

日本各地で最高気温を叩き出した2018年の夏、愛知県の中でも岐阜との県境である犬山市もイベント当日はとっても良いお天気。トークやワークショップは、「発酵サミット 2018 in 犬山」の会場である「犬山ローレライ麦酒館」の屋内でしたが、会場屋外での物販コーナー「発酵マルシェ」に参加なさったみなさんは、暑さに負けずと元気いっぱいに出店されていました。

常滑市から澤田酒造がやってきた!

澤田酒造さんが『日本酒Bar』を展開
澤田酒造さんが『日本酒Bar』を展開

以前haccolaでもお邪魔した、澤田酒造さん。愛知県の知多半島で伝統的な製法を守り続ける澤田酒造さんが、お酒とおいしい食べ物を楽しむ『日本酒Bar』を展開されていました。


澤田酒造 6代目社長の澤田 薫(さわだ かおる)さん(右)と、副社長兼蔵人の澤田英敏(さわだ ひでとし)さんが ご夫妻が揃ってバーテンダーとなってくれるという、ものすごく豪華なバーが実現!
澤田酒造 6代目社長の澤田 薫(さわだ かおる)さん(右)と、副社長兼蔵人の澤田英敏(さわだ ひでとし)さんが
ご夫妻が揃ってバーテンダーとなってくれるという、ものすごく豪華なバーが実現!(撮影:外山祐二)

「白老」の特別純米酒、純米吟醸仕込みの梅酒「白老梅」など、澤田酒造の人気銘柄がずらり!

澤田酒造の人気銘柄がずらりと並ぶカウンター。「白老」の特別純米酒、純米吟醸の原酒、自然栽培米の原酒、さらに純米吟醸仕込みの梅酒「白老梅」と、暑さにあうキリッとしたラインナップです。その他、犬山のお酒や、発酵一品料理も豪華でテント内のテーブルにはたくさんの人が立ち寄っていました。

日本酒バーの横では、犬山産の野菜を使った素揚げ野菜、カレー、うどんなど、お祭り気分をあげるメニューがたくさん。 どれも発酵食がたっぷり使われていました。食べながらみなさんが囲んでいるのは、足湯ならぬ足冷水。
日本酒バーの横では、犬山産の野菜を使った素揚げ野菜、カレー、うどんなど、お祭り気分をあげるメニューがたくさん。
どれも発酵食がたっぷり使われていました。食べながらみなさんが囲んでいるのは、足湯ならぬ足冷水。

外気温に負けず、木曽川で取れたあゆの塩焼きも。
外気温に負けず、木曽川で取れたあゆの塩焼きも。

発酵サミットの会場「犬山ローレライ麦酒館」の駐車場は、この日限定の「発酵マルシェ」に!

「発酵サミット 2018 in 犬山」の会場駐車場で開催された「発酵マルシェ」の出店数は、全部で10店!

「発酵マルシェ」に出店した10店

どちらのお店も、発酵にちなんだ出店内容で、大いに盛り上がっていました!

1. グラノーラなど手作りの焼き菓子を中心とした『しあわせおやつ工房ひろがる
2. 玄米の鮒寿司など発酵食品を滋賀から持ってこられていた『ハッピー太郎醸造所
3. 手作りできる納豆キットや生酛仕込みの日本酒を出店されていた『青ノ木農縁+QUESTIN』
4. 甘酒と地元産白桃をスムージーにしていた犬山の人気カフェ『swan’s cafe juice stand
5. その場で揚げたて『大衆食道とりごや御嵩店』の唐揚げ
6. 豆味噌や合わせ味噌を販売していた尾張旭市の『黒怒(こくど)
7. お水とドライフルーツを紹介していた『ミネラル醗酵教室 パドマサーラ
8. 個性的な炭火釜が目立っていた天然酵母パン『Çavasiba(サヴァシバ)
9. 天然醸造の醤油や味噌の『浅野や
10. 暑さを和らげてくれたかき氷『のいちごこども縁

「発酵サミット 2018 in 犬山」の会場駐車場で開催された「発酵マルシェ」の様子
「発酵サミット 2018 in 犬山」の会場駐車場で開催された「発酵マルシェ」の様子

「発酵マルシェ」の様子
「発酵マルシェ」に並ぶ店舗のテント

「発酵マルシェ」で販売されていた手作り納豆キット
「発酵マルシェ」で販売されていた手作り納豆キット

「発酵マルシェ」のイートインスペース
「発酵マルシェ」のイートインスペース

生酛仕込みの日本酒も販売されていた「発酵マルシェ」
生酛仕込みの日本酒も販売されていた「発酵マルシェ」

犬山はちょうど桃のおいしい季節。冷たく凍った桃と甘酒のスムージーには行列ができる場面も。
犬山はちょうど桃のおいしい季節。冷たく凍った桃と甘酒のスムージーには行列ができる場面も。

屋内会場では満席続出!「発酵サミット 2018 in 犬山」の「発酵ワークショップ」6連打!

ピースでおだやかな盛り上がりを見せはじめた会場の「犬山ローレライ麦酒館」
ピースでおだやかな盛り上がりを見せはじめた会場の「犬山ローレライ麦酒館」

屋内会場は、午前中のトークライブから一変し、醸造品の紹介販売ブースは各所ともに人が集まり、また会場となった「犬山ローレライ麦酒館」のビールを楽しむ姿も多数。とてもピースでおだやかな盛り上がりを見せはじめていました。

トークライブを終え、著書購入者にサインなどをしつつもやっと一息できたヒラクさん。
トークライブを終え、著書購入者にサインなどをしつつもやっと一息できたヒラクさん。

東海醸造のたまり醤油も、買いやすい小瓶があり列ができるほどの大好評。
東海醸造のたまり醤油も、買いやすい小瓶があり列ができるほどの大好評。

タイコウの大塚 麻衣子さんは、かつお節ビギナーにも上級者にも、その人にぴったりのものをご紹介されていました。
タイコウの大塚麻衣子さんは、かつお節ビギナーにも上級者にも、その人にぴったりのものをご紹介されていました。

どれもよくて選べない!6つのクラスが同時進行する「発酵ワークショップ」

菱六の助野彰彦さんを講師に迎えたワークショップ「三分で魅せる米こうじ作り」
菱六の助野彰彦さんを講師に迎えたワークショップ「三分で魅せる米こうじ作り」

そして午後のイベント内容は、なんと6つもの発酵ワークショップが同時開催。6人の“醸し人”がそれぞれのワークショップを担当し、参加者はどれか1つを選んで参加するというもの。6つとも参加したい!という声が聞こえそうなほど、どれも魅力的な内容が揃っていました。事前申し込みの時点で満員が出たコーナーもあり、参加者の意欲の高さが伺えます。

「発酵サミット 2018 in 犬山」の「発酵ワークショップ」全6つをご紹介!

1.「味噌を知って味噌漬けを作ろう」 講師:東海醸造 本地 猛さん

「味噌を知って味噌漬けを作ろう」 講師:東海醸造 本地 猛さん
「味噌を知って味噌漬けを作ろう」 講師:東海醸造 本地 猛さん

東海地方の魅力でもある豆味噌のほか、米味噌、麦味噌という3種類の味噌について学び、そのあと”味噌漬け”の床をつくって持ち帰る、という内容。なんとこの日の味噌漬けの材料は、東海醸造さんの豆味噌、犬山・海老澤麹店の米味噌、三河みりん、タイコウの出汁というかなりスペシャルな素材で作られていました。このワークショップにご参加者された方はきっと、翌日からおいしい味噌漬けを召し上がったことでしょう。

2.「スイカで仕込む酵素ジュース作り」 講師:田中ゆかりさん

「スイカで仕込む酵素ジュース作り」 講師:田中ゆかりさん
「スイカで仕込む酵素ジュース作り」 講師:田中ゆかりさん

愛知を中心に全国で酵素教室を開催されているという田中さんに、スイカの他20種類以上の野菜を発酵させて作る酵素ジュースのクラス。作り方はもちろん、完成した後の使い方も伝授され、皆さん瓶ごと大切にお持ち帰りされました。今頃それぞれのご家庭でぷくぷくしているでしょうか。

3.「初めてのぬか床一年生」 講師:第一酵母 多田一政さん

「初めてのぬか床一年生」 講師:第一酵母 多田一政さん
「初めてのぬか床一年生」 講師:第一酵母 多田一政さん

誰でも簡単に、とってもおいしいぬか漬けがあっという間に作れると話題の第一酵母『ぬか床一年生』は、ヒラクさんも「僕も使ってるよ!」と言うだけあって、便利で本質的な逸品。試食で並んだお野菜のおいしさにびっくりしました。管理も袋でできるという手軽さが人気です。ご参加者それぞれの食卓がより豊かになってそうですね。

4.「削って削ってかつお節」 講師:タイコウ 稲葉泰三さん

「削って削ってかつお節」 講師:タイコウ 稲葉泰三さん
「削って削ってかつお節」 講師:タイコウ 稲葉泰三さん

硬いままのかつお節を初めて見るお子さんも大歓迎!というこちらは親子参加が目立っていました。夏休みの経験としてもぴったりの食文化体験。日本で唯一の”かつお節目利き職人”である稲葉さんにダシの引き方を教えてらもい、その場で引き立ての出汁を試食します。そのあとはかつお節の削る体験をし、残ったかつお節のお持ち帰りという充実の内容。

5.「簡単混ぜるだけだしポン酢作り」 講師:スズキカオリさん

「簡単混ぜるだけだしポン酢作り」 講師:スズキカオリさん
「簡単混ぜるだけだしポン酢作り」 講師:スズキカオリさん

だし・うま味料理研究家であるスズキさんに教わる、ポン酢作り体験。買うものだと思ってる方も多いかもしれませんが、材料の組み合わせや使い方を学ぶと、手近なもので、もちろん無添加で自家製できます。豚しゃぶ、冷奴、カツオのたたきなど、冷蔵庫にあると便利ですよね。

6.「三分で魅せる米こうじ作り」 講師:菱六 助野彰彦さん

「三分で魅せる米こうじ作り」 講師:菱六 助野彰彦さん
「三分で魅せる米こうじ作り」 講師:菱六 助野彰彦さん

京都で350年以上という歴史を誇る“もやしや”=種麹の「菱六」から当主の助野さんがいらっしゃり、麹作りを教えてくれました。菱六の歴史や、麹菌の紹介など、丁寧に写真つきでお話しくださった後、通常は4日間かかる麹作りをなんとそれぞれの段階ごとにご用意くださるという、知見の凝縮さがすごいコーナー。初めて見る麹菌を手に“麹菌ふりふり”に初挑戦するなど、参加者の皆さんは体験と試食を繰り返し、こちらも大盛況でした。

時間の経過別に各段階の麹を五感で味わう参加者の皆さん。貴重な体験!
時間の経過別に各段階の麹を五感で味わう参加者の皆さん。貴重な体験!

「発酵サミット 2018 in 犬山」、最後は歌って踊って抽選会も

味噌の微生物の働きをわかりやすく解説する「麹ちゃん小劇場」

イベントのフィナーレに向けてとても賑やかな時間となった「麹ちゃん小劇場」
イベントのフィナーレに向けてとても賑やかな時間となった「麹ちゃん小劇場」

イベントの締めは、発酵サミット実行委員の皆さんによるステージ、その名も「麹ちゃん小劇場」。
お味噌の仕込みから出来上がりまでの微生物の働きを、麹菌や乳酸菌に扮した皆さんが体現して解説してくれるオリジナルのお芝居。小さいお子さんにもわかりやすい内容でした。さらに続いて、ヒラクさんが2014年に制作された「手前みその歌」を発酵サミットバージョンで踊るという、イベントのフィナーレに向けてとても賑やかな時間に。

最後は出店者や醸造家の皆さんから提供された、総額10万円相当というとっても豪華な抽選会をヒラクさんと一緒に行い、盛りだくさんだった1日もいよいよ閉会です。

「発酵サミット 2018 in 犬山」、アツかった1日もクロージングへ


大きな盛り上がりを見せた「発酵サミット 2018 in 犬山」

8月5日、ハッコーの日を祝日にしたい!

愛知の醸造の底力!といわんばかりの充実の発酵を見せた、第2回の「発酵サミット 2018 in 犬山」。次回開催に関することはまだ未定ですが、主催者で実行委員長でもある海老澤麹店の海老澤哲也さんは「8月5日、ハッコーの日を祝日にしたい!」と力説されていたので、今後の展開も目が離せなそうです。

閉会にあたり、かつお節タイコウの稲葉社長が午前中にお話されていたことが頭をよぎりました。

かつお節は、かつおを海で1本釣りすることから始まり、さばいて煮て骨を取り、燻しを繰り返して、青カビをつけさせ、乾燥と熟成を重ねるというとても時間と手間がかかった食材。その製法は、江戸時代、徳川幕府が治めはじめてから100年ほどだった“平和”な時代に生まれたとされています。

「食うに困ってない、そういう時代だったんだと思います。飢えていたら、釣ってすぐに食べるはずですから。豊かで平和だったからこそ、時間と手間をかけることができて、食を文化にすることができた。平和であることの大切さは食に現れます」(稲葉さん)。

かつお節だけではなく、発酵食品は、微生物たちによる現象の結果です。仮に手間も時間もかかるように思えたとしても、それをする理由や地域性などの文化が存在しています。便利なものを否定する必要はありませんが、人間の都合だけを優先するのでは、先人たちから繋いできた大切な何かが途切れてしまうかもしれません。

「発酵サミット 2018 in 犬山」を通して作りたい、目に見えない微生物に感謝できる社会

発酵は、そこにまつわる歴史的・文化的背景を楽しみ、今の暮らしを考察できるツールでもあります。「発酵サミット 2018 in 犬山」を通して発酵がより身近になった方も、まだこれから発酵の魅力に出会う方も、どんな人もみんなで、目に見えない微生物にまで感謝できる社会を作っていきたいですね。

関連リンク

発酵サミット実行委員会
小倉ヒラク氏
三州三河みりん
東海醸造
かつお節のタイコウ
スズキカオリ氏
第一酵母株式会社
株式会社菱六 助野彰彦氏


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