昔から、酒造りの職人さんたちの肌はすべすべできれい、と言われていることをご存知の方も多いかと思います。金沢にある老舗酒蔵「福光屋」さんでは、その秘密を探るため、長年に渡ってお米の発酵について研究をされています。
今回は、「SAKE SHOP 福光屋 丸の内店」で開催された『醗酵美デー』で、福光屋醗酵研究所の上田琴美さんに“米と発酵と美しい肌”についてお話を伺ってきました。
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原料は米と水だけ。金沢の老舗酒蔵・福光屋がつくる発酵コスメ
福光屋さんは、江戸時代の始め、1625(寛永2)年に創業された金沢にある老舗の酒蔵です。2001年より醸造アルコールを加えてつくるアルコール添加酒の酒造りから離れ、日本酒本来のつくり方である純米造り、つまり発酵の力を最大限に引き出した酒造りに切り替えていらっしゃいます。
そんな福光屋さんが、職人さんの肌の美しさに着目して化粧品をつくろうと思い立ちました。そして、米選びから米の磨き方、発酵に必要な酵母に至るまで徹底的に研究を行った末、米と発酵が生み出す天然の美容液『コメ発酵液FRS』にたどり着いたそうです。
『コメ発酵液FRS』ができるまでのプロセス
コメ発酵液FRSの原料は、米と水だけ。米と水を、麹や酵母、乳酸菌などのチカラで発酵させることで生まれるコメ発酵液FRSには、肌に浸透しやすく、保湿効果を持つアミノ酸やミネラル、ビタミンなどがいっぱい。今ではコメ発酵液FRSをベースに、さまざまな化粧品をラインナップされています。
今回は、福光屋さんの化粧品のラグジュアリーライン『アミノリセ』シリーズの「ナチュラル モイスト ローション」と「ナチュラル アクティベーションオイル」を体験しました。
アミノリセ ナチュラル モイスト ローション(左)、アミノリセ ナチュラル アクティベーションオイル(右)
SAKE SHOP 福光屋 丸の内店で開催された『醗酵美デー』で、発酵コスメを体験
——福光屋さんの化粧品の特徴は何でしょうか?
上田さん:酒蔵がつくっている化粧品ということで、何よりも原料にこだわっています。例えば、この「アミノリセ クレンジング ミルク」は、お米と水だけでつくられた「コメ発酵液FRS-01」をはじめ、肌に刺激になるようなものは入れない処方にしています。万一、口に入っても大丈夫な成分のみです。化粧品はお肌につけるものですから、小さなお子さまを持つお母さんだと、お子さまの口に入る可能性もあります。お子さまの手につきますし、お母さんの顔を舐めたりすることもある。化粧品そのものを舐めてしまうこともあるかもしれません。ですので、すべて食品として認められているものを使っています。界面活性剤も石油系のものではなく、植物系のものを使っています。
——クレンジングにも、コメ発酵液が入っているのですね。
上田さん:クレンジングは毎日使うものです。だからこそ、肌に負担をかけないことが大切です。コメ発酵液FRS-01は、独自の発酵方法で、アミノ酸が通常のコメ発酵液の3倍入っていて、しかもノンアルコールです。そのほかコメヌカ油、オリーブ由来のスクワランを配合し、ミルクタイプですので、しっとりとメイクや皮脂の汚れを落とします。
「アミノリセ モイストソープ」で洗顔したあとは、「アミノリセ ナチュラル アクティベーションオイル」を使います。オイルのベースとなるスクワランには、サトウキビを原料に酵母が増殖し、発酵が進む過程で生み出す醗酵スクワランを使っています。スクワランが人気のブランドの多くは、鮫の肝臓から取れるスクワランを使っています。最近では植物から取れるスクワランも増えてきましたが、当社はあくまでも発酵にこだわりました。そのほか米由来の保湿成分やセラミド、油溶性のビタミンCなどを配合してあります。
——洗顔のすぐ後にオイルを付けるのはなぜですか。
上田さん:クレンジングの後、まずローションをつけて、その後でオイルという使い方がよく言われていますが、そもそも角質は、角質細胞とセラミド(細胞間脂質)でできています。そしてセラミドの中をさらに詳しく見ていくと、途中に水分の層があることがわかります。つまり角質の細胞と細胞の間は、セラミドと水が交互に積み重なっているのです。
乾燥などで荒れた肌を詳しく見ると、このセラミドと水の層が乱れてしまっています。お肌が固くなったり、カサカサしている状態は、層が壊れてしまっている状態です。具体的には、ところどころセラミドが抜けてしまっています。すると、そこから水分が出ていってしまい、角質は水分を保持しておくことができません。化粧水で水分を補ってあげることは大事ですが、それだけだとセラミドが抜けてしまった「穴」はまだそのままです。水分を補ってもまた出ていってしまう。だから、少しオイルを足して、この穴を埋めてあげることが大事なのです。
また、このオイルにはお米由来のセラミドが入っています。セラミドが抜けたところを補い、さらに保湿成分であるスクワランがセラミド層を丈夫にします。スクワランは、もともと角質にある成分なので、べたつかずに良く馴染みます。その後で「アミノリセ ナチュラル モイスト ローション」などで水分を補ってあげます。
——先にオイルを塗ると、水分を弾いてしまいそうなイメージがありますが、違うのですね。
上田さん:弾いていないですよね。しっかり馴染んでくれます。水分がお肌にしっかり入っていく。これでお肌がふっくらしてきます。
今のケアを振り返ると、クレンジングミルクでメイクや汚れを落とし、モイストソープで洗顔した後に、まずセラミド層にできてしまった「穴」をオイルで埋めてあげます。するとセラミドの層がしっかりします。次に、ローションで水分や保湿成分であるアミノ酸をお肌に届けてあげる。
アミノ酸は水溶性なので、水のあるところに浸透してくれます。ただアミノ酸だけでは留まりにくいので、アミノ酸にくっつきやすいセラミドが必要なのです。セラミドの頭の部分とアミノ酸は仲がいいので、角質の中に一緒に留まってくれます。
——とてもわかりやすいお手入れ方法ですね
上田さん:油であるセラミド層と水分の層、この2つを意識していただければOKです。基本的には、クリームなどで補う必要はありません。一番シンプルなステップです。
——時間のない、忙しい時も、これで大丈夫ですね。
上田さん:ローション、美容液、乳液、クリームと、しっかりお手入れできればより良いですが、毎日、そんなに時間が取れないことも多いですよね。普段のお手入れとしては、使うアイテムが少なくて済む、このシンプルなステップをご提案させていただいています。もちろんすべて使っていただいた方がお肌にしっかり栄養が行き届きますが、シンプルステップでも大丈夫です。
——オイルは、全然ベタベタしません。
上田さん:オイル特有の「ベタつきや重さが苦手」とおっしゃる方も多いのですが、スクワランを使うことによって、ベタつきもなく、サラリとした使用感で使っていただけます。当社のコスメのお客様には、もともと植物由来のものにこだわっていらっしゃるお客様や、アミノリセについてはアルコールフリーのコメ発酵液FRS-01を使用しているので、アルコールの刺激に弱いお客様に使っていただくことが多いですね。
——やはりフルで使う方が効果がありますか。
上田さん:ライン使いをおすすめするのは、ローションだけで補えないものは美容液や乳液でと、それぞれ役割が違っていて、全部使った時にしっかり整うように作っているから。ただ、皆さんお肌の状況も違いますし、使用感の好みもありますので、軽い使用感が好きな方は乳液を使ったり、しっとりしたタイプが好きな方はクリームを使っていただいたりしています。
——アミノリセシリーズの中で、上田さんが特にお気に入りのものはどれですか。
上田さん:一番よく使うのは「アミノリセ ナチュラル モイスト ローション」です。最初に使った時、驚きました。香りが少し変わっていて、化粧品らしくないというか、食べ物の香りに近い。それが不思議だなと感じました。初めて使った次の日、お化粧のノリが違うことを実感して、発酵ってすごいなと思いました。もともと発酵に興味があって、大学時代に勉強し、細胞の研究などをしていたのですが、改めて発酵の力を実感しました。
✓発酵コスメ以外にもおいしいアイテムがたくさん!
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教えてくれた方
福光屋 醗酵研究所 係長 上田琴美さん
関連リンク
福光屋:http://www.fukumitsuya.co.jp/
福光屋オンラインショップ:http://www.fukumitsuya.com/
福光屋の化粧品:http://www.fukumitsuya.com/ext/top_cosme.html