東京・東中野にある、少量生産日本酒の専門店「美酒和膳 ひがし中野 しもみや」。本格的な和食とのペアリングで日本酒の提供してくれる同店のマダム・下宮みどりさんによる、ビギナーのためのやさしい日本酒講座、好評開講中です♪
「美酒和膳 ひがし中野 しもみや」とはどんなお店? くわしくはこちら≫
第12回目は、酒蔵や酒屋さんの軒先にぶら下がっている杉玉について、マダム下宮に聞きました。
ハッコラ編集部:「あのハチの巣みたいな球体は、何なんですか??」
マダム下宮:「もちろん、ハチの巣ではありません(笑)。それは、杉玉や酒林(さかばやし)と言う、日本酒のサインなんですよ」
「美酒和膳 ひがし中野 しもみや」のマダム下宮
あのかわいいハチの巣、いや、杉玉にはどんな意味があるのでしょうか? やさしい日本酒講座、第12回目の始まり始まり…!
杉玉の歴史・由来
杉玉の歴史・由来(撮影:マダム下宮)
諸説あるようですが、もっとも有力なのが奈良県の大神神社(おおみわじんじゃ)のお話。
その大昔、国が大混乱するほどの疫病が流行しました。そして天皇の夢の中でお告げがありました。
「お酒を造って奉納しなさい」
そして、お酒を造って納めたところ、疫病はすぐ治まり、混乱も納まったそうです。このお酒を造ったその時の杜氏が、この神社に祀られています。この杜氏にあやかって、美味しい日本酒を造ることができますようにと、11月になると全国の酒元さんや杜氏さんが参拝するようになったそうです。
境内のご神木でもある杉の木。その枝などを集めて作ったのが杉玉です。それが参拝した蔵に配られる。杉玉の由来はここからきているようです。
杉玉の役割
杉玉の役割(撮影:マダム下宮)
酒林(さかばやし)とも呼ばれる杉玉とは、新酒が出来たときに青々とした杉玉を軒先に下げて、道行く人に「新酒が出来ましたよ」とお知らせしてくれる存在です。
これを下げているのは日本酒を扱っているところ。
例えば、日本酒を造っている酒蔵さんや、酒販店、そして日本酒を飲ませてくれる居酒屋や料理店も入って良いと思います。
オーストリアの杉玉!?「ホイリゲ」の松の枝
遠く離れたオーストリアでも、ワイン酒場の軒先に松の枝など下げる似たような習慣があるのをご存知でしたか?
オーストリアでは、ワイン酒場のことを「ホイリゲ」と呼びます。
ホイリゲとは「今年の」という意味。1年未満のワインの新酒や、それを提供する居酒屋のことも同様にホイリゲと言われているのです。
ホイリゲには、一般的な飲食店と違い、営業期間に制限があります。
今から220年以上前、皇帝ヨーゼフ2世がウィーンのワイナリーに「年間300日以内に限り、自家製ワインの小売りと簡単な食事の提供」を許可したことが、現代でもなごりとして残ってるそうです。
ホイリゲがオープンしている期間中は、先端に松の枝が付いた棒が目印として店先に出ています。地方によっては、麦で作ったリースを掲げるところもあるのだとか。
日本酒と杉玉のように、異国の地でも、ワインと松の枝が同じような役割を果たしているのですね。
杉玉の色の意味
杉玉の色の意味(撮影:マダム下宮)
作りたての杉玉は、杉のキレイな緑色をしています。杉の香りもして良いものです。
それが一年を通して店先に下げておくことで、鮮やかな緑色が段々茶色に変わってきます。
これは日本酒の変化を表しています。
鮮やかな緑色は出来たての「新酒」を、緑色から徐々に茶色へ変化しますが、日本酒もこんな風に「熟成」していく事を伝えているんです。
杉玉の作り方
作り方は全て手作業。
杉玉を作るには、大量の葉が付いた杉の枝が必要です。それを数本まとめて束・ブーケを作ります。これを竹や針金で作ったコアに差し込んでいきます。良い物になるほど、杉のブーケが大量に必要となります。
そして仕上げに、人の手で球体に刈り込んでいく。どこから見ても丸い球体となるように刈り込んでいくのは、簡単ではないと思います。ここまでの工程は、全て人の手によるものです。
杉玉の現状
杉玉の現状(撮影:マダム下宮)
杉玉は、現在の生活の中ではあまり見かけなくなりました。そのくらい少なくなってきています。
もうお孫さんがいるような年齢の方でも、杉玉の存在を知らない人が増えてきています。
酒蔵が少なくなっている上に、酒販店も少なくなってきました。それぞれ全部が全部、杉玉を下げているとは限りません。
杉玉を見かけなくなった原因はふたつ考えられます。
ひとつは、情報を伝える手段が沢山あることです。
その昔はテレビやラジオもありません。どうしたら街の人に日本酒ができたことを伝えられるのか、色々と考えたんでしょうね。
もうひとつは、酒蔵ではギリギリの人数で日本酒を作っているので、暇がないことです。
杉玉を作って下げる季節は、酒蔵にとって日本酒の仕込みが始まる忙しい季節と重なります。蔵人もギリギリの人数で一生懸命です。杉玉まで手がまわらないのが現実です。
ある酒蔵を訪問したときの事。
大きな倉庫に沢山の杉の枝と杉のブーケがありました。
現在、蔵で働く全ての人が杉玉を作った事がないことがわかり、一度自分達で作ってみようとなったそうです。
しかし、杉の枝と杉のブーケが大量に必要な事がわかり、全てを手作業で行わなければなりません。とても簡単にできる物ではないことがわかり、かつ、日本酒の仕込みがあるためにどうしても作業が中断してしまう…。酒蔵の社長もちょっぴり困り顔でした。
マダムおすすめ!今飲みたい日本酒はこれ!
長崎県「福田酒造」による『福田 純米吟嬢無濾過生原酒 山田錦』
長崎県「福田酒造」による『福田 純米吟嬢無濾過生原酒 山田錦』
九州の中でも注目している酒蔵です。そして東京農大の卒業生の蔵。爽やかで切れもあって抜群です。裏切らない味です。一度お試し下さい。
佐賀県「天吹酒造」による『天吹 純米 ひやおろし 雄町』
佐賀県「天吹酒造」による『天吹 純米 ひやおろし 雄町』
こちらも東京農大の卒業生の蔵です。秋桜の花酵母を使って造られた1本。秋ですね。
日本酒にはこんな「花酵母」を使ったお酒もあるんです。雄町米の特徴も出ていて楽しみです。
山形県「麓井酒造」による『麓井 生もと純米 ひやおろし』
山形県「麓井酒造」による『麓井 生もと純米 ひやおろし』
地元のブランド米「はえぬき」は食べるお米。このお米を使って造られた秋の日本酒。
とても飲みやすく仕上がっています。秋の食材に合わせても邪魔しない1本だと思います。
美酒和膳 ひがし中野 しもみや
しもみやさんの投稿 2016年10月6日木曜日
小泉武夫先生の教え子だったご主人とマダム下宮が営む、少量生産日本酒の専門店「しもみや」
東京農大醸造学科の卒業生で、小泉武夫先生の教え子だったご主人の下宮龍児さんと、マダムの下宮みどりさんが営む、少量生産日本酒の専門店「美酒和膳 ひがし中野 しもみや」。意識して珍しい日本酒だけを置いている訳ではなく、「小さな蔵が伝統を引き継ぎ、自分たちの手で丁寧に作り上げる少量生産の日本酒を楽しんでほしい」、「大量生産では決して出せない本物の日本酒の味を味わってほしい」という想いからセレクトされた日本酒と、季節の発酵料理が味わえるお店です。
しもみやさんの投稿 2016年11月25日金曜日
日本酒と季節の発酵料理のペアリングは、マダム下宮におまかせで安心
旬の食材を活かした、体に優しくて日本酒に合う発酵料理の数々は、まさに“日本酒を楽しむための料理”。ご主人による発酵料理が次々と出されますが、日本酒とのペアリングはマダムにおまかせで安心。料理が出されるタイミングで、その料理と合う日本酒をマダムが出してくれます。
日本酒に詳しくない方も、いろんな日本酒の飲んできた方も、ともに大満足すること間違いなし! 東中野の醸し場「美酒和膳 ひがし中野 しもみや」にぜひ足を運んでみてくださいね。
店舗情報
店名:美酒和膳 ひがし中野 しもみや
URL:オフィシャルサイト/食べログ/Facebookページ
住所:東京都中野区東中野1-52-18 クワハウス1階(Google Map)
営業時間:PM6:00~AM1:00/LO.12:00
定休日:毎週月曜日
電話/FAX・メールアドレス:TEL&FAX:03-3363-7878 ※ご予約は4名様まで/e-mail:sake-shimomiya@sirius.ocn.ne.jp