発酵食品やその食文化における第一人者として日本でもっとも有名な小泉武夫先生。月光仮面ならぬ「発酵仮面」という異名も持つ小泉先生に、発酵食品について教えていただきました!
10.酵素ってなに?
発酵食品を作る微生物には、カビ、酵母、細菌の3つがいます。似た言葉で「酵素」がありますが、酵素は生き物ではありません。酵素はタンパク質、つまり物質です。物質なのに物質を合成したり、分解する力を持っています。ユニークな物質です。
例えば、硬い肉を柔らかくするときにパイナップルを使ったりしますが、これはパイナップルの中にあるタンパク質分解酵素が働いてタンパク質の塊りである肉を柔らかくするからです。塩麹もそうです。鶏肉や牛肉に塩麹をつけると、とても柔らかくなります。麹菌の中にもタンパク質分解酵素があるからです。
人間の唾液や胃液にも酵素があります。ご飯やパンはデンプンですが、デンプンでは人間は生きていけません。唾液や胃液の中の酵素がデンプンをブドウ糖に分解しています。タンパク質も同じようにアミノ酸に分解して吸収しています。
「生きた酵素を取るとカラダにいい」などと言う人もいますが、これは正しくありません。すでにお伝えしたように酵素は生き物ではありません。タンパク質です。「生野菜を食べて、生きた酵素を取り入れよう」と言っても、酵素はタンパク質なので唾液や胃液でアミノ酸に分解されてしまいます。もちろんアミノ酸ですから活力源にはなります。
酵素を利用した栄養食品がいろいろありますが、酵素をカラダに取り入れているのではなく、酵素が分解した栄養を取り入れているのです。例えば玄米は消化が悪く、あまり吸収できません。ですが酵素を使って玄米の成分を分解すれば、吸収しやすくなります。野菜や果物も同じです。そのままでは取り入れにくい成分も、酵素が分解してくれれば吸収しやすくなります。