教えて!小泉先生

2016年11月05日

発酵と腐敗の違いは?【教えて!小泉武夫先生】

発酵食品やその食文化における第一人者として日本でもっとも有名な小泉武夫先生。月光仮面ならぬ「発酵仮面」という異名も持つ小泉先生に、発酵食品について教えていただきました!

4.発酵と腐敗の違いは?

Assortment of dairy products

善玉菌の働きである発酵と、悪玉菌の働きである腐敗は、どこが違うのでしょうか。簡単な事例で説明します。
牛乳をコップに入れて置いておきます。温かい季節なら24時間程度で悪臭が出始めます。空気中の腐敗菌が侵入して牛乳を腐らせたからです。腐敗菌の働きは、悪臭だけではありません。牛乳の中は腐敗菌が作り出した毒素でいっぱいになっています。こんな牛乳を飲んでしまうと、嘔吐や下痢に苦しむことになります。
ときどき「腐ったものでも火を通せば大丈夫」などと考える人がいますが、それは大きな間違い。毒素は火を通しても壊れません。大変危険なのです。
しかし、同じ牛乳でも善玉菌である乳酸菌が入り込むと、牛乳はおいしいヨーグルトに変身します。乳酸菌を使って牛乳からチーズを作ることもできます。
しかも、牛乳が発酵してヨーグルトやチーズになると、腐りにくくなります。乳酸菌が牛乳を腐りにくい保存食にしたわけです。さらに風味の面でも、栄養の面でも、元の牛乳よりも優れた食品に変化させたのです。
大豆でも同じことが起こります。大豆を煮て、そのまま放置しておくと、腐敗菌が侵入し腐ってしまいます。しかし善玉菌である乳酸菌で発酵させると味噌や醤油になり、納豆菌で発酵させると納豆になります。
発酵も腐敗も、どちらも菌が引き起こす現象ですが、もうおわかりのように私たちにとって、その効能はまったく違うのです。

小泉武夫

小泉武夫

1943年福島県の酒造家に生まれる。 東京農業大学名誉教授。農学博士。専攻は食文化論、発酵学、醸造学。 現在、鹿児島大学、琉球大学、広島大学大学院医学研究科、石川県立大学ほかの客員教授を務める。 特定非営利活動法人発酵文化推進機構理事長。全国発酵のまちづくり協議会長。全国地産地消推移新協議会会長(農水省)、「和食」文化保護・継承国民会議委員(農水省大臣官房)、食料自給率向上協議会会長(農水省大臣官房)など、食に関わる様々な活動を展開し、和食の魅力を広く伝えている。 著書に、『食あれば楽あり』(日本経済新聞社)、『発酵食品礼賛』(文春新書)、『食と日本人の知恵』(岩波現代文庫)、『食の世界遺産』(講談社)、『江戸の健康食』(河出書房新社)、小説『夕焼け小焼けで陽が昇る』(講談社文庫)、『猟師の肉は腐らない』(新潮社)、『幻の料亭・日本橋「百川」黒船を饗した江戸料理』(新潮社)など単著は140冊を超える。日本経済新聞に連載の「食あれば楽あり」は現在24年間にわたり連載中。丸ごと小泉武夫 食マガジン  NPO法人発酵文化推進機構

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