微生物・菌

2018年03月21日

なぜ日本は発酵大国なの?【教えて!小泉武夫先生】

発酵食品やその食文化における第一人者として日本でもっとも有名な小泉武夫先生。月光仮面ならぬ「発酵仮面」という異名も持つ小泉先生に、発酵食品について教えていただきました!

なぜ日本は発酵大国なの?

日本の朝食

発酵菌の生育に適した気候風土の日本は、人間の役に立つ発酵菌の宝庫

微生物は地球上のあらゆる場所に存在していますが、人間の役に立つ発酵菌の宝庫は、実は日本を含めた東アジアと東南アジアです。それらの地域は、発酵菌の生育に適した気候風土だからです。

日本酒、焼酎、甘酒、醤油、味噌など、カビを使った発酵食品がたくさんある日本

京都 伏見 酒蔵のある町並み

実際に日本でカビを使った発酵食品を挙げると、日本酒、焼酎、みりん、甘酒、醤油、味噌、米酢などたくさんあります。

カビを使ったヨーロッパの発酵食品は、カマンベールチーズとブルーチーズのみ

一方、ヨーロッパにはカビを使った発酵食品は、カマンベールチーズとブルーチーズしかありません。
ヨーロッパは地中海気候で常に乾燥しています。だからカビがいません。菌も日本と比べると少ないのです。

暖かくて湿気の多い日本の気候は、カビや菌がものすごく多い気候

それに比べて南北に長い日本は、亜寒帯から亜熱帯までさまざまな気候区分に属していますが、大部分は温暖湿潤気候に属しています。暖かくて、湿気の多い気候、つまりカビや菌がものすごく多い気候です。

日本に昔からある発酵食品は、麹菌がないと作ることができない

米麹

平安時代末期~室町時代にかけて、麹のタネを作って売る「種麹(たねこうじ)屋」が成立していた

微生物の中でも、「麹」は“穀物に生えるカビ”と言えます。日本に昔からある発酵食品は、麹菌がないと作ることができません。だから日本では、すでに平安時代の末期から室町時代にかけて“麹を売る”商売が成立していました。麹のタネを作って売る「種麹屋」です。室町時代の京都には数軒の種麹屋があり、作った種麹を造り酒屋などに売っていました。

種麹の製造は、世界で初めての「微生物の純粋培養」と言える

麹

この種麹の製造は、世界で初めての「微生物の純粋培養」と言っていいと思います。室町時代にどうやって、種麹の製造を思いつき、実現させたのか。先人たちの知恵には本当に驚かされます。

日本は発酵食品の先進国

日本は発酵食品の先進国

世界中の多くの民族が発酵の技術を持っています。特に湿気の多い日本は腐敗菌が増殖しやすい環境ですが、その厳しい環境の中で先人たちはカビさえも有効活用する方法を見つけ出しました。私たち日本人は「カビ」を純粋培養して売り買いし、活用してきた民族。そして、日本は発酵食品の先進国なのです。

小泉武夫

小泉武夫

1943年福島県の酒造家に生まれる。 東京農業大学名誉教授。農学博士。専攻は食文化論、発酵学、醸造学。 現在、鹿児島大学、琉球大学、広島大学大学院医学研究科、石川県立大学ほかの客員教授を務める。 特定非営利活動法人発酵文化推進機構理事長。全国発酵のまちづくり協議会長。全国地産地消推移新協議会会長(農水省)、「和食」文化保護・継承国民会議委員(農水省大臣官房)、食料自給率向上協議会会長(農水省大臣官房)など、食に関わる様々な活動を展開し、和食の魅力を広く伝えている。 著書に、『食あれば楽あり』(日本経済新聞社)、『発酵食品礼賛』(文春新書)、『食と日本人の知恵』(岩波現代文庫)、『食の世界遺産』(講談社)、『江戸の健康食』(河出書房新社)、小説『夕焼け小焼けで陽が昇る』(講談社文庫)、『猟師の肉は腐らない』(新潮社)、『幻の料亭・日本橋「百川」黒船を饗した江戸料理』(新潮社)など単著は140冊を超える。日本経済新聞に連載の「食あれば楽あり」は現在24年間にわたり連載中。丸ごと小泉武夫 食マガジン  NPO法人発酵文化推進機構

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