“減塩”をアピールする商品がたくさん販売され、塩分の取り過ぎが問題視されています。しかし、塩は人間に必要不可欠なものであり、栄養面でも、食事の美味しさを引き立たせるためにも、大切な調味料なのです。
そこで今回は、発酵の町・石川県白山市で3月26日(日)に開催された講演会「発酵食品に欠かすことのできない塩の知られざる力 ~塩分の高い発酵文化を持つ県が、なぜ「日本長寿県」になれたのか~」の講師である発酵料理研究家の高橋香葉先生に、塩分の高い発酵文化を持つ県が「日本長寿県」になれた理由をお伺いしました!
日本一長寿の県、長野県の取り組み
長野県では、脳卒中患者が多いことが悩みだったそう。しかし、県を挙げての取り組みで、患者数が減少したことはもちろん、日本長寿県にまでなったというから驚きです。
「この数年“日本一長寿の県”として、長野県の特集が多くメディアにも取り上げられてきました。ところが、長野県は海に面していない地形のため、発酵食品が多くある県としても有名です。例えば、野沢菜漬けや信州みそなどが各家庭に常備されていました。食品の保存性を高め、腐敗させないために必要なものが、塩だったのです。しかし、塩分が高い食生活が原因で脳卒中による死亡率に影響を及ぼしていることが分かり、1965年に長野県は全国でもワースト1位に。そこで、長野県は『食生活実態調査』を実施し、“血圧の高い家庭は塩分量が多い”という結論を出すに至りました」。(高橋先生)
「現在は冷蔵庫の普及により、保存食で冬を越さなくてはならなかった時代ではないこと、野菜も年中手に入るよう宅配などの流通も変化しました。そのため、塩分を控えた浅漬けの野沢菜漬けを作ることも、減塩みそを多く作ることも可能となりました。こうして、時代とともに発酵食品も変化を遂げてきたのです。そして20年以上かけて、長野県は長寿の県として日本一となりました。」。(高橋先生)
長寿になった長野県の取り組みは、時代とともに発酵食のあり方を変化させたんですね。
講演会講師の高橋香葉先生
発酵食品のメリットを理解すると、食事はもっとおいしくなる!
発酵食品に塩分が欠かせない存在であることがわかりましたが、発酵食品はどう体によいのでしょうか? また、どうしたら減塩した美味しい食事になるのでしょうか?
「ここで1つの大きな疑問が生まれます。発酵食品は、塩分が高いから体に悪いのでしょうか? あまり知られてはいませんが、発酵食品は健康によい利点がたくさんあります。例えば、お味噌。発酵する過程でストレスを軽減すると言われているGABA(アミノ酸の一種)が豊富に含まれており、結果的に血圧低下につながることも分っています。また、広島大学の研究により、ガンのリスクを下げることも証明されているなど、一日一杯のお味噌汁をいただくことは、免疫力を高め“人の健康に大きなメリット”をもたらしてくれるのです」。(高橋先生)
「野菜をいっぱい入れてお味噌汁を作ると、お味噌と野菜のだしの旨みによる相乗効果も生まれ、必然的に使用するお味噌の量も気が付くと自然と減塩に。さらに、食物繊維を豊富に摂取することができるのです。この他、醤油麹(しょうゆ麹)を醤油の代わりに使うことで、通常の醤油に比べて米の甘みとまろやかさが加わり、加熱料理にコクを出すこともできます。また、塩分量も約半分になることが研究結果として報告されています。塩麹や醤油麹(しょうゆ麹)に含まれる米麹の甘みを上手にお料理に活用することで、減塩で旨みの高い食事につながります。これら発酵食品を支えてくれているのが塩。これから夏にかけてミネラル補給にもつながり、塩味は甘みを引き立たせる調味料でもあります。つまり、塩の必要性と美味しさを理解して摂取することが大切なのです。」。(高橋先生)
塩味と甘味のバランスが旨味を引き出してくれるのですね…!
3月26日(日)に石川ルーツ交流館で行われた講演会の様子
わたしたちのくらしに欠かせない塩、これからも上手に、おいしく、健康にお付き合いしていきたいですね。
教えてくれた人
高橋香葉
しょうゆ麹のレシピを日本で初めて公開した発酵料理研究家。日本人の体を健康に、そしてきれいにするには、「日本伝統文化の発酵食が一番良い」と料理研究を行い、レシピ開発、料理教室の他、発酵に関する商品開発を行っている。また、経営コンサルタントとして自治体特産品審査委員、観光連盟アドバイザーを歴任している。
高橋香葉の発酵食生活~塩麹としょうゆ麹~