わたしたちの生活に欠かせない発酵食品。お醤油やお味噌はもちろん、日本人が誇る和食文化は、醸造用の木桶があったからこそ発展したと言っても過言ではありません。しかし、わたしたちが愛する発酵食品を仕込む、大きな木桶がなくなってしまったら…? 現在、木桶を使った天然醸造によるお醤油やお味噌の生産量は、全体の1%以下と言います。そうなると当然、木桶を造る桶屋さんや桶職人さんも、存続するのが難しくなってしまいます。
そこで奮起したのが、醤油の郷としても知られる小豆島で、木桶仕込みの醤油を造り続ける「ヤマロク醤油」五代目 代表取締役の山本康夫(やまもと やすお)さんです。
子や孫の世代にまで本物の味を伝えるべく「木桶職人復活プロジェクト」を立ち上げ、2018年の今年で4年目を迎えました。山本さんの活動に想いを同じくする参加者の方々は年々増え続け、木桶職人復活プロジェクトはさらなる大きなムーブメントになっています。
そこで今回は、木桶職人復活プロジェクトの立ち上げメンバーの方々、そして、2018年1月に行われた木桶職人復活プロジェクト参加者の方々に、それぞれの想いをお聞きしました。木桶文化を次世代に伝えるために集まった、業種を超えた“醸し人・繋ぎ人”12名の方へのインタビューをお届けします。
木桶職人復活プロジェクトを立ち上げた、“レジェンド3名”にインタビュー!
「ヤマロク醤油株式会社」五代目 代表取締役 山本康夫さんに聞きました
「木桶がなくなってしまう、どうしよう、もううちの醤油を造り続けることができない」という危機感を超えた切実な状況の中、新桶を発注するも「もう桶屋を続けられないかもしれないから、自分の桶は自分で直してくれ」と言われ… 続きを読む≫
「坂口工務店」代表 小豆島町議会議員 坂口直人さんに聞きました
山本さんと、後輩の三宅さんと私との3人で、“最後の桶屋さん”に弟子入りしました。期間も短く、“全工程をどうやるか”しか教われなかったので、あとは小豆島に戻って自分たちで考え抜いて造り続けるのみ。そして2年後、ついに新桶が… 続きを読む≫
「三宅工務店」代表 三宅真一さんに聞きました
木桶を自分たちで何個も造って試行錯誤しました。しかし、木桶造りには正解がありません。木桶の寿命は100~150年、その間に必ず修繕が必要になります。こう造れば絶対に大丈夫、という造り方はないので、そこが難しくもあり… 続きを読む≫
木桶職人復活プロジェクトから誕生した、若き“繋ぎ人”3名にインタビュー!
「きしな屋」「結い物で繋ぐ会」代表 岸菜賢一さんに聞きました
木桶職人復活プロジェクトで出会った桶職人の原田君と宮崎君と3人で、木桶の製造・修理を行う木桶職人集団「結い物で繋ぐ会」を立ち上げました。すると、ほどなくして大桶の注文が舞い込んできました。その時、「あ、動いた」と… 続きを読む≫
「司製樽」「結い物で繋ぐ会」棟梁 原田啓司一さんに聞きました
47都道府県から一人ずつ弟子を取りたいと思っていて、最初の弟子は埼玉県出身の女性です。木桶は修繕しながら長く使い続けるものなので、身近にいる職人に直してほしい。木桶は、工芸品でも民芸品でもなく、生活雑貨です。木桶職人は… 続きを読む≫
「桶光」「結い物で繋ぐ会」職人 宮崎光一さんに聞きました
今年で26歳、“日本で一番若い木桶職人”として活動しています。この木桶職人復活プロジェクトに初めて参加した2年前に、桶屋になろうと決心しました。現在は、木桶を造りながら、ワークショップなどで木桶を伝えることも行っており… 続きを読む≫
木桶職人復活プロジェクトに集った、“醸し人・繋ぎ人”6名にインタビュー!
「片上醤油」代表 片上裕之さんに聞きました
普通なら、木桶を造ることができる唯一の蔵として、その技術を囲い込み、他社に対するアドバンテージとすべきところを、ヤマロク醤油さんは、同業をも巻き込んでこのプロジェクトを推進されています。私もその心意気に共感し… 続きを読む≫
「足立醸造株式会社」工場長 足立裕さんに聞きました
このプロジェクトでは、同じ目的を持った仲間にたくさん出会えます。1年に1度、小豆島という地に集合し、みんなで木桶造りに熱くなる。そして、みんなが各地へ帰り、それぞれのフィールドで木桶文化の復活に向けて活動を行う… 続きを読む≫
「麺や七彩」店主 「株式会社アール・エー・アール」取締役 阪田博昭さんに聞きました
「麺や七彩」店主 「株式会社アール・エー・アール」取締役 阪田博昭さん
木桶存続のため奮起している場に立ち会いたい、という想いでここに来ています。自分たちが目指すのは、100年続く美味しい醤油らーめんを作り続けること。そして、自分が一番重んじるのは食文化です。志を同じくする者同士… 続きを読む≫
「手作り糀(こうじ)・糀料理教室 おかんの糀」主宰 夢先発酵案内人 小林よしみさんに聞きました
「手作り糀(こうじ)・糀料理教室 おかんの糀」主宰 夢先発酵案内人 小林よしみさん
自身の料理教室でもこのプロジェクトで学んだことをお話ししたり、木桶仕込みの調味料を使ったワークショップを開催するなどして、ひとりでも多くの方に木桶文化の素晴らしさを伝えていくべく、夢先発酵案内人としての活動… 続きを読む≫
「シャンパン&醤油BAR フルートフルート」醤油の旅人 大土橋努さんに聞きました
「シャンパン&醤油BAR フルートフルート」醤油の旅人 大土橋努さん
造り手と消費者の間を繋げる“使い手・繋ぎ手”の立場として、木桶職人復活プロジェクトの想いを形にしてお客様にお伝えしたいと思っております。また、“醤油の旅人”として、さらに多くの事を学び続けていきたいと考えて… 続きを読む≫
発酵食料理教室「綾糀(あやのこうじ)」主宰 発酵仕事人 礒畑綾さんに聞きました
発酵食料理教室「綾糀(あやのこうじ)」主宰 発酵仕事人 礒畑綾さん
醤油や味噌などの発酵食品やそれらを使った料理だけではなく、発酵食品ができる過程も知りたくて参加しています。もし木桶がなかったら、発酵食品や発酵調味料を造ることはできなかったはずです。そんな歴史や文化を大切に… 続きを読む≫
わたしたち一人ひとりが「本当においしいもの」にもっと敏感になるだけでも、木桶文化を次世代に伝える小さな力になれる
こんなにおいしくて、体にやさしい、木桶仕込みのお醤油やお味噌などの発酵食品も、木桶がなくなれば造れなくなってしまう。それで困ってしまうのは、実は私たち消費者なのではないでしょうか。木桶仕込みの天然醸造品を絶やさないためにも、わたしたち一人ひとりが「本当に大切なもの」を守り、伝えていく意識を持つことができると、とても良いように思います。
でも、力いっぱい「頑張らなければ!」という姿勢ももちろんなのですが、わたしたち一人ひとりが「本当においしいもの」にもっと敏感になるだけでも、木桶文化を次世代に伝える小さな力になれるのではないでしょうか。それであれば、おいしい発酵食品が大好きなわたしたちにでも、今日からすぐに始められそう! そう思いませんか?
Special Thanks
取材協力:「手作り糀(こうじ)・糀料理教室 おかんの糀」主宰 夢先発酵案内人 小林よしみさん
写真撮影:黒猫ドリア